新社会人のカード申込で年収から引かれる「生活維持費」は90万〜240万円|割賦販売法30条の2が調べるのは年収・預貯金・債務・借入れ

生活維持費の額を人数と住まいで並べた表。家賃なしは1人90万円から4人以上200万円、家賃ありは1人116万円から4人以上240万円、申告なしは240万円

入社したばかりでクレジットカードを申し込むとき、年収欄に何を書くかで迷う人は多いはずです。ただ、カード会社が何を調べるかは法律で決まっていて、裁量で変えられるものではありません。割賦販売法と施行規則が定めている調査項目と、年収から差し引かれる「生活維持費」の額を条文で確認しました。金額は世帯人数と住まいの形で6通りに分かれ、申告しないと最も高い区分が当たります。

条文で確認できること

  1. 割賦販売法第30条の2は、カードを交付する前・極度額を増やす前に年収、預貯金、信用購入あつせんに係る債務の支払の状況、借入れの状況などを調査しなければならないと定めている。
  2. 同条2項の「包括支払可能見込額」は、住宅などの資産を譲渡・担保に供することなく、かつ生活維持費に充てるべき金銭を使わずに支払いに充てられると見込まれる1年あたりの額。
  3. 生活維持費の額は施行規則の別表第二で決まる。1人で住宅ローンも家賃もない場合は90万円、4人以上で住宅ローンまたは家賃がある場合は240万円。
  4. 世帯人数と住まいの区分の双方について申告を受けられない場合は240万円が当たる(施行規則第45条2項1号)。
  5. 調査では指定信用情報機関が保有する特定信用情報を使用しなければならない(法第30条の2第3項)。

カードを出す前に調べる項目は、法律が名指ししている

割賦販売法第30条の2第1項は、カード等を交付・付与する場合や極度額を増額する場合に、その前に調査することを義務づけています。調査の対象として条文に書かれているのは次の4つと「その他」です。

e-Gov法令検索で割賦販売法を開いた画面。第三十条の二(包括支払可能見込額の調査)の本文と、第三十条の二の二(包括支払可能見込額を超える場合のカード等の交付等の禁止)が表示されている公式キャプチャ
e-Gov法令検索の割賦販売法。第30条の2と第30条の2の2が続けて置かれている(2026年10月23日に表示)。
割賦販売法第30条の2が定めていること(e-Gov法令検索の条文より)
調査の対象(1項) 年収、預貯金、信用購入あつせんに係る債務の支払の状況、借入れの状況、その他の包括支払可能見込額を算定するために必要な事項
いつ調べるか(1項) カード等を交付・付与しようとする場合、または極度額を増額しようとする場合の、その前
信用情報の使用(3項) 指定信用情報機関が保有する特定信用情報を使用しなければならない
記録(4項) 調査に関する記録を作成し、保存しなければならない
交付の禁止(第30条の2の2) 極度額が、調査で得られた事項をもとに算定した包括支払可能見込額に一定の割合を乗じて得た額を超えるときは、カード等を交付・付与してはならない

出典:e-Gov法令検索「割賦販売法(昭和三十六年法律第百五十九号)」第30条の2・第30条の2の2(2026年10月23日に表示)

調査項目に「勤続年数」や「学歴」は出てきません。見られるのは収入と、いま抱えている支払いです。学歴と審査の関係が噂になる理由は公務員はカード審査で有利?でも触れています。

「包括支払可能見込額」は、年収から生活維持費を引いた残り

第30条の2第2項が、その額の定義を置いています。読み解くと、自宅などの資産を売ったり担保に入れたりせず、生活に必要な費用も使わずに、支払いに回せると見込まれる1年あたりの金額のことです。

条文が引いている3本の線

線1
主として自己の居住の用に供する住宅その他の省令で定める資産を、譲渡したり担保に供したりすることなく。
線2
生活維持費(最低限度の生活を維持するために必要な一年分の費用として省令で定める額)に充てるべき金銭を使用することなく。
線3
代金や対価に相当する額の支払に充てることができると見込まれる、一年間当たりの額。

年収がそのまま枠になるのではなく、生活維持費を先に差し引いた残りが土台になります。だから、年収が同じでも住まいの形や家族の人数で結果が変わります。

生活維持費は、人数と住まいで6通りに分かれる

その生活維持費の額は、割賦販売法施行規則の別表第二に表として置かれています。上欄が「本人と生計を一にする者の合計数」、中欄が住まいの区分、下欄が金額です。

e-Gov法令検索で割賦販売法施行規則の別表第二を開いた画面。二人の区分に百三十六万円と百七十七万円、三人の区分に百六十九万円と二百九万円、四人の区分に二百万円という金額が並んでいる公式キャプチャ
割賦販売法施行規則 別表第二。住宅の所有と住宅ローン・家賃の有無で、同じ人数でも額が変わる(2026年10月23日に表示)。
生活維持費の額(割賦販売法施行規則 別表第二より)
本人と生計を一にする者の合計数 住宅を所有し住宅ローンなし/住宅を所有せず家賃を払わない 住宅を所有し住宅ローンあり/住宅を所有せず家賃を払う
1人 90万円 116万円
2人 136万円 177万円
3人 169万円 209万円
4人以上 200万円 240万円

出典:e-Gov法令検索「割賦販売法施行規則(昭和三十六年通商産業省令第九十五号)」第45条・別表第二(2026年10月23日に表示)

実家で暮らしていて家賃を払っていない新社会人なら、1人・家賃なしの区分で90万円です。一人暮らしで家賃を払っているなら116万円になります。差は26万円で、その分だけ支払いに充てられると見込まれる額が減る計算です。

申告しないと240万円が当たる

施行規則第45条2項は、申告を受けられない場合の扱いを決めています。ここが実務上いちばん効く部分です。

申告の有無で変わる生活維持費

人数も住まいも申告あり90万円〜別表第二の該当する区分の額が当たる
住まいの区分だけ不明高いほうその人数の区分の2つの額のうち、高いほうが当たる
人数だけ不明4人以上扱い合計数を4人以上とみなしたうえで住まいの区分を当てる
どちらも不明240万円最も高い額が当たる
申告を受けられない場合の生活維持費(割賦販売法施行規則第45条第2項より)
申告の状況 適用される生活維持費 根拠
人数も住まいの区分も申告がある 別表第二の該当する区分の額(90万円〜240万円) 第45条第1項
住まいの区分だけ申告がない その人数の区分の2つの額のうち、高いほう 第45条第2項2号
人数だけ申告がない 合計数を4人以上とみなしたうえで、住まいの区分に応じた額 第45条第2項3号
双方とも申告がない 240万円 第45条第2項1号
実際の額を客観的かつ合理的な方法で把握した その方法により把握した額によることができる 第45条第2項4号

申込書の家族構成や住まいの欄を空けたまま出すと、法令上は最も不利な240万円で計算されることになります。年収が240万円に届かない段階では、そこから差し引いた残りがほとんど残りません。

実家暮らしの1人という申告ができれば90万円で済みます。書ける欄を埋めることが、そのまま計算結果に効きます。積立などで枠を使う予定がある人はクレカ積立の付与条件とあわせて設計してください。

なお施行規則第45条2項4号は、本人から最低限度の生活を維持するために必要な費用の一年分に相当する実際の額を、客観的かつ合理的な方法で把握した場合は、その額を使えるとも定めています。表の金額は原則であって、唯一の計算方法ではありません。

新社会人のケースに当てはめる

条文の順番どおりに当てはめると、申込時に何が起きているかが見えます。

申込から交付までに法律が要求していること

申込
年収、預貯金、信用購入あつせんに係る債務の支払の状況、借入れの状況などを申告する。人数と住まいの区分も、ここで申告する欄に当たる。
照会
カード会社は指定信用情報機関の特定信用情報を使用しなければならない。奨学金やスマートフォンの分割の支払状況が、ここに現れる。
算定
申告と照会で得た事項から包括支払可能見込額を算定する。生活維持費は別表第二の額を差し引く。
判定
第30条の2の2により、極度額が算定した額に一定の割合を乗じて得た額を超えるときは交付できない。
記録
交付したあとも、調査に関する記録を作成して保存しなければならない。

スマートフォンの端末代金の分割払いは、信用購入あつせんに係る債務にあたります。入社前からの分割が残っていれば、その支払状況も照会で見えます。年収の欄だけを気にしても、この部分は動かせません。

よくある質問

入社1年目で年収をどう書けばよいですか

条文は「年収」を調査項目として挙げているだけで、書き方の様式までは定めていません。実際の記入方法はカード会社の申込画面の案内に従うことになります。法律の側で決まっているのは、調査しなければならない項目と、差し引かれる生活維持費の額です。

実家暮らしと一人暮らしで差がありますか

あります。施行規則の別表第二では、1人で住宅を所有せず家賃を払わない場合が90万円、1人で家賃を払う場合が116万円です。26万円の差がそのまま、支払いに充てられると見込まれる額の差になります。

家族構成を書かないとどうなりますか

施行規則第45条2項1号により、人数の区分と住まいの区分の双方について申告を受けられない場合の生活維持費は240万円です。人数だけ不明なら4人以上とみなされ、住まいの区分だけ不明ならその人数の2つの額のうち高いほうが当たります。

奨学金は審査に関係しますか

法第30条の2第1項は「借入れの状況」を調査項目に挙げています。また同条3項により、指定信用情報機関が保有する特定信用情報を使用しなければならないと定められています。

年収を多めに書いてもよいですか

カード会社は調査に関する記録を作成し保存する義務を負っています(法第30条の2第4項)。申告した内容は記録として残るため、事実と違う申告をする前提で考えるべきものではありません。

生活維持費の表の額は必ず使われますか

原則は別表第二の額ですが、施行規則第45条2項4号は、本人から最低限度の生活を維持するために必要な費用の一年分に相当する実際の額を客観的かつ合理的な方法で把握した場合に、その額によることができるとしています。

出典


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