クレジットカードは、原則として満18歳を迎え、高校を卒業してからであれば申し込めるようになります。
そのため、基本的に中学生、高校生はクレジットカードが使えません。学校への通学途中や休日の外出などの場合の支払いは、クレジットカード以外で賄う必要がありますが、あまりに高額の現金を持ち歩くのは、防犯上の面からおすすめできないのも事実です。
そこで今回の記事では、中学生・高校生でも使える「キャッシュレス」について考えてみましょう。
中学生・高校生でも使える「キャッシュレス」4選
クレジットカードのように、申込にあたって審査がなく、比較的簡単な手続きで使い始められる手段として
- デビットカード
- プリペイドカード
- QRコード決済
- 電子マネー
の4つについて解説します。
1.デビットカード
利用できるお店=加盟店で買い物をし、支払に使うと、その場で支払元として指定された銀行口座から利用額が引き落とされます。
2.プリペイドカード
コンビニの店頭や銀行口座への振込、クレジットカードでの支払いにより利用したい額を入金して使います。加盟店で利用すると、あらかじめ入金されていた残高を減額する形で支払いが行われるのです。
3.QRコード決済
加盟店で利用する際は
- スマートフォンのアプリで店頭のバーコードを読み取る
- 自分のスマートフォン上に表示されるバーコードを読み取ってもらう
のいずれかで支払いを進めます。
4.電子マネー
日本では
- JR東日本(Suica)、JR西日本(ICOCA)など交通機関が発行するもの
- 楽天(楽天Edy)、イオン(WAON)などの流通企業が発行するもの
- JCB(QUICPay)NTTドコモ(iD)などその他の分野の企業が発行するもの
が広く用いられています。
デビットカードのメリット・デメリット
中高生が使うことを想定し、デビットカードのメリット・デメリットについて考えてみましょう。
メリット
メリットは
- ATM手数料を節約できる
- 国際ブランドデビットなら海外でも使える
の2つです。
1.ATM手数料を節約できる
銀行のATMを利用する際、節約という意味で考えなくてはいけないのが、手数料です。平日の昼間(9時から18時ころまで)に、キャッシュカードを発行している銀行が運営するATMを利用すれば、手数料は無料です。しかし、この条件にあてはまらない場合は、ATMからお金を引き出すごとに手数料がかかります。
1回110円~220円程度なので、一見大したことないように思えるかもしれません。しかし、何度も引き出すようであれば、年単位で見ると相当な出費になってしまうのです。
一方、デビットカードであれば、銀行口座からお金を引き出すことなく、現金払いができてしまいます。
2.国際ブランドデビットなら海外でも使える
厳密に言うと、デビットカードは次の2つに分かれます。
- J-Debit:加盟店で、日本全国の銀行が発行するキャッシュカードを使って支払いを行う
- 国際ブランドデビット:クレジットカードの加盟店で支払いができるカードを発行し、そのカードで支払いを行うと、利用額が即時に銀行口座から引き落とされる。銀行が外部のクレジットカード会社と提携し発行する
J-Debitは1990年代からサービスを運用してきましたが
- コンビニ、スーパーなど、大手企業が運営するチェーン店が加盟していない
- 銀行のシステムメンテナンス中は使えない
など、利便性に問題があったため、あまり普及しませんでした。しかも、日本独自の規格であるため、日本以外では使えません。
代わって、近年発行数が増えてきたのが、国際ブランドデビットです。これは、銀行がクレジットカード会社と提携して発行しているもので、国際ブランド(決済システムを提供する会社のこと)の加盟店でクレジットカードと同様に使えます。
もちろん、クレジットカードが使えるお店であれば、オンラインショッピングであっても、海外のお店であっても、利用可能です。
デメリット
一方、デメリットとしては
- 銀行口座を開設しないといけない
- 中学生の場合ゆうちょ銀行でしか作れない
の2点が挙げられます。
1.銀行口座を開設しないといけない
デビットカードを作りたい場合は、支払元として「デビットカードを発行している銀行の口座」を用意しないといけません。また、銀行口座の開設自体はすぐにできても、実際にデビットカードが手元に送られてくるまで時間がかかるのも珍しくないのです。
2.中学生の場合ゆうちょ銀行でしか作れない
高校生であれば、デビットカードを発行している銀行の口座を開設しさえすれば、デビットカードは作れます。
ただし、中学生の場合、2020年3月現在ではゆうちょ銀行以外ではデビットカードを作れません。「自分が普段使っている銀行で、うちの子にデビットカードを作らせたい」という場合は、制限が加わることに注意しましょう。
ゆうちょVisaデビットカード(プリペイド機能付き)/mijica(ミヂカ)
発行会社 ゆうちょ銀行
国際ブランド VISA
初年度年会費(税込) 0円
2年目~年会費(税込) 0円
年会費特典 -
発行期間 約1週間
キャッシュバック還元率下限 -
キャッシュバック還元率上限 -
ポイント還元率下限 0.25%
ポイント還元率上限 0.75%
1日最大利用限度額 100万円
不正利用時の補償 ○年間100万円まで
入会資格年齢 満12歳以上(小学生を除く)
プリペイドカードのメリット・デメリット
次に、プリペイドカードのメリット、デメリットについて考えてみましょう。
メリット
メリットは
- 使いすぎる心配がない
- 海外で使えるものもある
- 小学生からでも持てる
の3つです。
1.使いすぎる心配がない
プリペイドカードは、残高の範囲内でしか利用できないため、使いすぎる心配もありません。あらかじめ予算を決めてチャージし、その範囲内でやりくりするという使い方もできます。
また、残高の範囲内でしか利用できないことは、別のメリットもあります。万が一、落としたり盗まれたりした場合も、残高の範囲内でしか使えないため、損害を少なく抑えることができるのです。
2.海外で使えるものもある
近年では、プリペイドカードでも、クレジットカードやデビットカードと同じように、国際ブランドが付帯しているものが多く出回るようになってきました。このようなプリペイドカードであれば、同じマークのクレジットカード・デビットカードが使えるお店で支払いに使えます。
もちろん、海外のお店であっても、クレジットカードが使える店舗であれば、大丈夫です。
3.小学生からでも持てる
今回の記事では、中学生・高校生(本人およびその学年のお子さんをお持ちのご家族)でも使える「キャッシュレス」と銘打って話を進めています。
しかし、プリペイドカードであれば、小学生であっても持つことができるのです。三井住友カードが発行している「Visaプリぺ」も、申込条件を「満6歳以上(小学生以上)」としています。
デメリット
一方、デメリットとしては
- その都度チャージしないといけない
- 加盟店によっては使えないこともある
の2点が挙げられます。
1.その都度チャージしないといけない
プリペイドカードは、残高の範囲でしか使えないため、使い切ってしまったらその都度新たにチャージしないといけません。持っていったはいいものの、いきなり支払いができなくなるリスクを避けるためには
- こまめに残高をチェックする
- 足りないと気づいた時点でチャージする
など、一定の配慮は必要になります。
2.加盟店によっては使えないこともある
中高生が使う分には、さほどデメリットにはならないのですが、「プリペイドカードならではの特殊なデメリット」でもあるので紹介しましょう。
プリペイドカードは
- 毎月発生する料金(電気代、ガス代、水道代、携帯電話料金)
- 商品、サービスの提供のあとに実際の金額が確定する取引(ガソリンスタンドなど)
での支払いには使えません。実際の支払いを行うタイミングで残高が不足していた場合、支払いを実行できない恐れがあるためです。
QRコード決済のメリット・デメリット
次に、QRコード決済のメリット・デメリットについて考えてみましょう。
メリット
メリットは
- キャンペーンへの参加でお得になる
- 現金でもチャージできる
の2点です。
1.キャンペーンへの参加でお得になる
QRコード決済は、今回の記事に出てきた他の「キャッシュレス」に比べると、比較的新しい方法です。そのため、サービスを提供する各社は、自分の会社のサービスを使ってもらうため、積極的にキャンペーンを展開しています。
このようなキャンペーンを上手に利用すれば、かなりお得になるのも事実です。例えば、QRコード決済の1つ「PayPay」の場合、対象となる飲食店での支払いをPayPayで行うと、20%戻ってくるキャンペーンを行っています。
PayPay
年会費(税別) 0円
ベースの還元率 1.50%
ベースの還元率上限 1.50%
ポイント倍増 -
還元内容 PayPayボーナス
付与上限 7,500円/回
15,000円/回
クレジットカード支払い ○VISA、Mastetrcard、JCB(ヤフーカードのみ)
銀行口座チャージ ○
クレジットカードチャージ ○本人認証サービス(3Dセキュア)を登録済みのヤフーカード
ATMチャージ ○セブン銀行ATM
レジチャージ -
支払方法 コード払い(提示)
コード払い(読取)
オートチャージ ○
送金サービス ○
限度額 PayPay残高:50万円/過去24時間
クレジットカード(本人認証済):2万円/過去24時間
クレジットカード(本人認証未):2万円/過去24時間
同社の発行クレジットカード
Yahoo! JAPANカード
2.現金でもチャージできる
QRコード決済の多くは
- コンビニのレジ
- 銀行のATM
を利用した現金でのチャージに対応しています。クレジットカードが持てない中高生であっても使えるのは大きなメリットです。
デメリット
一方、デメリットとしては
- スマートフォンがないと使えない
- サービスの終了、変更がいきなり行われることもある
- 海外では使えない
の3点が挙げられます。
1.スマートフォンがないと使えない
QRコード決済は、スマートフォン上で動くアプリを使って提供されるサービスです。そのため、スマートフォンを持っていない場合は、QRコード決済も使えないことに注意しましょう。
また、スマートフォンを持っている場合でも
- OSのバージョンが古い
- スマートフォン本体のスペックが低い
- 電波状況が悪い
- スマートフォンの電池が切れた
などのトラブルがあると、使えなくなってしまう点にも注意してください。
2.サービスの終了、変更がいきなり行われることもある
QRコード決済は、クレジットカードなどの他の「キャッシュレス」に比べると、かなり新しい支払方法です。そのため
- 加盟店を拡大できない
- キャンペーンに使う予算が当初より大幅にオーバーした
などの理由で資金がつき、サービスを終了させることもあり得ます。
代表的な例がOrigami Payです。Origami Payは2016年からサービスを開始してきた、比較的歴史のあるQRコード決済サービスです。会社としては小規模ながらも、高い技術力で一定の評価を得てきました。2019年11月には、日本経済新聞が選ぶ「NEXTユニコーン調査」で、同社の企業価値を417億円と算定していたほどです。
しかし、Origami Payを運営する株式会社Origamiは、全国の信用金庫と連携し、サービスの拡販に努めるなどの経営努力を行ってきましたが、加盟店の大幅な獲得にはつながらなかったのです。結果として、会社の運転資金が尽きてしまい、2020年1月にはメルカリグループへの参画が報道されました。事実上の経営破綻と言われています。
Origami Payほど極端な例はそう多く発生しないはずですが、サービスの終了・変更がしばしば行われることは、注意しておきましょう。
3.海外では使えない
QRコード決済自体は、海外でも同様のサービスが提供されています。代表例としては
- AliPay(中国)
- WeChatPay(中国)
- NAVER PAY(韓国)
などが挙げられます。
これらの外国のQRコード決済が、日本でも観光客の多い地域であれば使えるのは珍しくありません。しかし、逆に日本のQRコード決済を、海外で使うことは(現状では)ほぼできません。
電子マネーのメリット・デメリット
最後に、電子マネーのメリット・デメリットについて考えてみましょう。
メリット
メリットは
- 何歳であっても持てる
- 支払までにかかる時間が短い
の2つです。
1.何歳であっても持てる
電子マネーは、クレジットカードやデビットカードのように、申込にあたっての年齢制限はありません。何歳であっても、所定の申込手続きを済ませさえすれば持てます。幼稚園・保育園に通っている場合でも、もちろんこれは同じです。
2.支払までにかかる時間が短い
電子マネーには「NFC」という技術が用いられています。
この技術があるおかげで、所定のICチップが搭載されたカードやスマートフォンを、専用の端末にかざすだけで支払いが終わります。QRコード決済のようにスマートフォンを立ち上げたりなど、手間がかからないのは大きなメリットでしょう。
デメリット
一方、デメリットとしては
- 紛失した場合補償が受けられないサービスもある
- 海外では使えない
が挙げられます。
1.紛失した場合補償が受けられないサービスもある
電子マネーの残高が残っているにも関わらず、紛失・盗難にあった場合の残高の扱いは、サービスごとに異なります。中には、楽天Edyのように「一切補償はしない」と明言しているサービスもあるので、扱いには気を付けましょう。
2.海外では使えない
電子マネーも、QRコード決済と同様、現状では海外の店舗での支払いには使えません。あくまで「日本国内でのみ」利用できるサービスと考えておきましょう。