クレジットカードを利用するにあたって、最も気を付けるべきなのは、銀行口座の残高が不足しないようにすることでしょう。何となく理由がわかる人も多いはずですが、より詳しく解説していきます。
口座の残高不足に気を付けるべきただ1つの理由
クレジットカードを使う際に、銀行口座の残高不足に気を付けるべき理由を一言でまとめると、
です。
支払遅延がもたらすもの
クレジットカード払いは、以下の流れで行われます。
- クレジットカード会員が、加盟店で買い物をする。
- 加盟店は、クレジットカード会社に連絡し、代金を立て替えてもらう。
- クレジットカード会社は、一定期間の利用額を集計し、クレジットカード会員に請求する。
- 所定の引き落とし日に、クレジットカード会員の銀行口座より、請求額が引き落とされる。
仮に、銀行口座の残高が、請求額を下回っていた場合、引き落としができません。
マジで困ってる。
来月13日のクレカの引き落とし日に口座の残金が不足してる。カード止められたら困る。
どうしよう…。親はもう貸してくれないだろうし…。— ゆきっぺ@自宅療養中 (@chqcTIp98pK2ccd) 2019年7月31日
たった1日でNGの場合も
クレジットカード会社は、クレジットカード会員に対しても、定期的に審査を行っています(途上与信)。支払いの遅延は、途上与信に重大な影響を及ぼすのです。仮に、1日しか遅延しなかったとしても、これまでの利用状況に何等かの問題があった場合は、強制解約に至ることもあります。
さらに、61日以上の遅延・滞納をした場合、個人信用情報に異動情報(金融事故)として登録されるのです。
遅延損害金の支払いも必要
クレジットカードは、「1度クレジットカード会社からお金を借りて、それを期日までに返す」という、借金の性質も有しています。残高不足で引き落としができず、その後支払う場合は、支払いが遅れたことに対するペナルティが生じるのです。
このペナルティ=遅延損害金は、以下の式で計算します。
なお、多くのクレジットカード会社では、遅延損害金の年利率を14.6%にしています。
以下の条件で、遅延損害金を計算してみましょう。
- 請求額は10万円
- 遅延損害金の年利率は14.6%
- 7月20日引き落としの請求額を、7月30日付で支払った。
遅延損害金の額は、「10万円×14.6%÷365日×10日=400円」となります。引き落とせなかった分を支払う際は、当初の請求額に遅延損害金を上乗せした金額を支払う仕組みです。
気づいた時点でまずは連絡しよう
最も重要なのは、残高不足で引き落とせなかったと気づいた時点で、すぐにクレジットカード会社に連絡することです。クレジットカード会社の連絡先は、クレジットカード本体の裏面に書いてあるので、まずは電話をかけましょう。支払いが遅れた旨を謝った上で、具体的な指示を仰いでください。
一般的に、引き落としができなかった分の対応は、
- 口座振込で支払う
- 再引き落としが行われる
- 振込用紙を使う
のいずれかによります。
口座振込で支払う場合
クレジットカード会社が指定する口座に、指定された金額を振り込むことです。
- 銀行名
- 口座の種類、番号
- 遅延損害金を含めた振込額
について説明があるので、メモをとった上で、早急に手配しましょう。
再引き落としがされる場合
クレジットカード会社によっては、銀行口座にすぐに不足分を補充できる場合に、再引き落としを実行してくれることもあります。残高を確認した上で不足額を補充し、再引き落としの実行を待ちましょう。
振込用紙を使う場合
引き落とし日からしばらく(3~4日程度が目安)たつと、クレジットカード会社から振込用紙が送られてきます。コンビニエンスストアでの支払いもできるので、手元に届いたらすぐに払いましょう。
忘れないようにするには?
引き落とし日の残高不足を回避するためには、
- スケジュール帳に予定として書きこんでおく
- クレジットカード会社からリマインドメールが届くよう設定する
- スマートフォンのアラームを設定する
- 引き落とし日の前に、口座の残高を確認する
など、こまめに意識が向く仕組みを作りましょう。
残高不足を放置したら督促が始まる!
仮に、銀行口座の残高不足が原因で、引き落としができなかったとしましょう。気づいた時点で支払えば、強制解約の可能性は0でないにせよ、そのクレジットカードを使い続けられることも多々あるのです。ただし、引き落としができなかった分について、何ら対応しなかった場合、督促が始まります。
督促とは?
督促を内容・方法によって細かく分類すると、次の3つになるので、違いを押さえておきましょう。
一次督促 | 封書や電話により、督促を行う。 |
---|---|
二次督促 | 一次督促での支払いが確認できない場合、電話を中心に督促が行われる。 クレジットカード会社の担当者が自宅を訪問するケースもある。 |
三次督促 | 法的措置が取られる段階。強制執行や民事訴訟のいずれかで収束を図る。 |
これだけだと大まかすぎるので、もう少し詳しく解説しますね!
一次督促の流れ
一次督促は、電話や郵便で行われます。
具体的に言うと、
- クレジットカード会社の担当者が、自宅の固定電話や携帯電話に電話をかけてくる
- 振込用紙(納付書)が同封された封書が送られてくる
などです。
この段階で、
- 具体的な支払日を指定し、その日に実際に支払う
- 支払いのスケジュール調整を申し出て、予定通り実行する
など、「支払いに応じる」姿勢を見せれば、次の二次督促に進むことはありません。
しかし、
- 電話に出ない
- 封書も開けない、開けても無視
など、何らの返答・対応もしない場合は、二次督促に進みます。
先月のクレカの支払いをたまたま忘れてて督促状が来ちゃったんだけど、
これでブラックリストに入っちゃっててローン組めなかったらどうしようw— ぷらむ (@CBR1105RR) 2019年2月7日
二次督促の流れ
二次督促は、電話・担当者の訪問により行われます。クレジットカード会社の担当者が電話してくること自体は、一次督促でも行われていました。
しかし、二次督促になると、
- 自宅の固定電話
- 携帯電話
- 勤務先
など、連絡する先や頻度が一挙に増えるのです。
もちろん、勤務先に電話をする際は、プライバシー保護のために、
- 本当の用件(クレジットカードの督促)を言わない
- クレジットカード会社の名前を出さず、個人名を出す
など、配慮はしています。
また、クレジットカード会社の一部では、担当者が自宅に訪問するケースもあります。
なお、詳しくは後述しますが、
- 夜遅くや朝早くなど、どうみても非常識な時間に、電話したり、自宅を訪問したりする。
- 特別な理由もないのに、勤務先などの自宅以外の場所を訪問する。
のは、法律で禁止されています。
メインで使ってるクレカ会社から督促の電話が来て母にその事でこの時間に説教されて全てがとんでもないことになってる
— ふらん (@furann1122) 2019年5月12日
三次督促の流れ
二次督促を行っても、クレジットカード会員=債務者が、支払いに応じない場合は、三次督促に移ります。まず、クレジットカード会社が、裁判所に支払督促の申立てを行います。
この手続きを行うと、裁判所からクレジットカード会員のところに、「支払督促申立書」が届きます。もし、「一括は無理でも、分割でなら払える」場合は、一緒に入っている異議申立書を使い、異議の申し立てをしましょう。
その後、民事訴訟に移り、クレジットカード会社との和解交渉に移る流れです。交渉の場で、支払い計画を作成し、和解が成立すれば終了します。
一方、「支払督促申立書」が届いても、2週間以内に異議申立書を返送しない場合、今度は「仮執行宣言付支払督促」が届きます。この段階でも異議申立書の返送がなければ、強制執行に移る流れです。つまり、クレジットカード会社が、クレジットカード会員の車・自宅・給与などを差し押さえにかかります。
個人信用情報にも異動情報として登録されるので、
- 新しくクレジットカードを作れない
- 他のクレジットカードも強制解約される
- 住宅、車のローンが組めない
- 携帯電話本体の分割購入ができない
など、様々な弊害が生じます。
違法行為が疑われる場合は?
督促が行われる際は、クレジットカード会社の担当者が電話・訪問により接触を図ろうとします。ただし、あくまで法律に則って行われるのが基本です。
(取立て行為の規制)
第二十一条 貸金業を営む者又は貸金業を営む者の貸付けの契約に基づく債権の取立てについて貸金業を営む者その他の者から委託を受けた者は、貸付けの契約に基づく債権の取立てをするに当たつて、人を威迫し、又は次に掲げる言動その他の人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動をしてはならない。
一 正当な理由がないのに、社会通念に照らし不適当と認められる時間帯として内閣府令で定める時間帯に、債務者等に電話をかけ、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は債務者等の居宅を訪問すること。
二 債務者等が弁済し、又は連絡し、若しくは連絡を受ける時期を申し出た場合において、その申出が社会通念に照らし相当であると認められないことその他の正当な理由がないのに、前号に規定する内閣府令で定める時間帯以外の時間帯に、債務者等に電話をかけ、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は債務者等の居宅を訪問すること。
三 正当な理由がないのに、債務者等の勤務先その他の居宅以外の場所に電話をかけ、電報を送達し、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は債務者等の勤務先その他の居宅以外の場所を訪問すること。
四 債務者等の居宅又は勤務先その他の債務者等を訪問した場所において、債務者等から当該場所から退去すべき旨の意思を示されたにもかかわらず、当該場所から退去しないこと。
五 はり紙、立看板その他何らの方法をもつてするを問わず、債務者の借入れに関する事実その他債務者等の私生活に関する事実を債務者等以外の者に明らかにすること。
六 債務者等に対し、債務者等以外の者からの金銭の借入れその他これに類する方法により貸付けの契約に基づく債務の弁済資金を調達することを要求すること。
七 債務者等以外の者に対し、債務者等に代わつて債務を弁済することを要求すること。
八 債務者等以外の者が債務者等の居所又は連絡先を知らせることその他の債権の取立てに協力することを拒否している場合において、更に債権の取立てに協力することを要求すること。
九 債務者等が、貸付けの契約に基づく債権に係る債務の処理を弁護士若しくは弁護士法人若しくは司法書士若しくは司法書士法人(以下この号において「弁護士等」という。)に委託し、又はその処理のため必要な裁判所における民事事件に関する手続をとり、弁護士等又は裁判所から書面によりその旨の通知があつた場合において、正当な理由がないのに、債務者等に対し、電話をかけ、電報を送達し、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は訪問する方法により、当該債務を弁済することを要求し、これに対し債務者等から直接要求しないよう求められたにもかかわらず、更にこれらの方法で当該債務を弁済することを要求すること。
十 債務者等に対し、前各号(第六号を除く。)のいずれかに掲げる言動をすることを告げること。
出典:貸金業法
すぐに払えない場合にやるべきことは?
仮に、引き落とし日に残高不足で払えなかった場合、すぐに払えるなら払ってしまいましょう。しかし、すぐに払えない場合は、次の対策を講じてください。
1.できるだけ支払えるよう調整する
最初にやるべきことは、できるだけ支払えるように調整することです。
他から借入するのは考え物
「A社の支払いが終わらないから、B社からキャッシングして払おう」など、他からの借入にたよるのは、正直おすすめできません。
借入をした以上、そのお金も返さなければいけないためです。最初は「1社くらいなら大丈夫」と思っていても、そのうち同じようなことを繰り返す可能性があります。
家族に相談しよう
家族の関係がいいなら、相談してみるのも1つの手段です。
- なぜ、このような状態に陥ったのか
- 何を、どうしてほしいのか
を丁寧に伝えましょう。
2.支払いスケジュールを調整する
分割払い、リボ払いなど、一括払い以外の支払い残高がある場合は、支払いスケジュールを調整する方法もあります。毎月の支払額を減らしてもらうなど、状況にあったやり方を選びましょう。
3.専門家・団体に相談する
「ちょっと自分ではどうにもできない」と思ったら、弁護士や司法書士など、債務整理の問題に詳しい専門家や消費生活センターなどの団体に相談しましょう。
債務整理の方法
一般的に、広く用いられている債務整理の方法は、以下の3つです。
任意整理 | 債権者と話し合いをし、借金の返済方法を見直すこと。 合意の上で、支払い利息をカットしてもらえるため、総支払額が大幅に減額される。 |
---|---|
個人再生 | 裁判所に申し立てを行い、借金を最高10分の1まで減額してもらうこと。 住宅資金特別条項(住宅ローン特則)が利用でき、家に住み続けながら、返済も続けられる。 |
自己破産 | 裁判所に申し立てをし、借金を0にしてもらうこと。 どんなに高額な借り入れがあっても、返済しなくてよくなるのが大きなメリット。しかし、財産の大半を手放さなくてはいけない以上、周囲にも大きな影響が及ぶ。 |
分かりやすくするために、3つの方法について、様々な項目に基づき比較表を作りました。
任意整理 | 個人再生 | 自己破産 | |
---|---|---|---|
借金を減額できるか | 一部可能 | できる | できる |
利息の支払いが0になるか | なる | なる | なる |
裁判所の手続きが必要か | 必要ない | 必要 | 必要 |
家族に秘密にできるか | できる | 状況次第 | 状況次第 |
会社に秘密にできるか | できる | できる | できる |
仕事の資格制限があるか | ない | ない | ある |
マイホームを残せるか | できる | できる | できない |
保証人を巻き込まずに手続き | できる | できない | できない |
家族への手続きの影響 | 出ない | 出ない | 出ない |
ブラックリスト | 載る | 載る | 載る |
マイカーを残せる | できる | 状況次第 | 状況次第 |
官報に掲載されない | されない | される | される |
地域ごとの相談先
実際に相談する際は、地域の
- 弁護士会
- 司法書士会
- 消費者生活センター
などに一度連絡してみましょう。
都道府県ごとの、金融庁が作成した一般消費者及び事業者向けの多重債務相談窓口や、ギャンブル等依存症に関する相談窓口等の連絡先周知のためのリーフレットへのリンクを、表にまとめました。
北海道 | 滋賀県 |
青森県 | 京都府 |
岩手県 | 大阪府 |
宮城県 | 兵庫県 |
秋田県 | 奈良県 |
山形県 | 和歌山県 |
福島県 | 鳥取県 |
茨城県 | 島根県 |
栃木県 | 岡山県 |
群馬県 | 広島県 |
埼玉県 | 山口県 |
千葉県 | 徳島県 |
東京都 | 香川県 |
神奈川県 | 愛媛県 |
新潟県 | 高知県 |
富山県 | 福岡県 |
石川県 | 佐賀県 |
福井県 | 長崎県 |
山梨県 | 熊本県 |
長野県 | 大分県 |
岐阜県 | 宮崎県 |
静岡県 | 鹿児島県 |
愛知県 | 沖縄県 |
三重県 |
まとめ
クレジットカードは、所定の日の銀行口座からの引き落としによりお金を支払う取引である以上、期日を守るのは当然です。普段から、無理のない利用を心がけるとともに、万が一間に合わなかった場合は、すぐに連絡し、対応を仰ぎましょう。
また、万が一、どうしても支払えそうにないと思った時点で、周囲やクレジットカード会社に相談するのをおすすめします。