プラチナカードの保有率が低い5つの理由

プラチナカードの「プラチナ」とは、貴金属の白金のことです。金=ゴールドよりもさらに希少価値が高いという意味で、この名前になりました。貴金属に限らず、クレジットカードのプラチナ=プラチナカードも、希少価値が高いため、沢山の人が持っているわけではありません。しかし、実際の数字を見ると、想像以上に低いことに驚くはずです。

そこで今回の記事では

プラチナカードの保有率が低い理由

と題して、様々な角度から理由を検証してみましょう。

プラチナカードの保有率は極めて低い

プラチナカードの保有率は極めて低い

実際のところ、クレジットカード会社はプラチナカードを発行していたとしても、発行枚数を公表しているわけではないので、正確な保有率は分かりません。そこで、公表されているデータやアンケート結果をもとに、どれだけ保有率が低いのかを推察してみましょう。

持っているのは1,000人に4人

楽天グループのマーケットリサーチ会社・楽天インサイトは過去にクレジットカードに関する調査を行いました。その中で「メインで利用しているクレジットカードのタイプ」という設問がありましたが、これに対する回答の比率は以下の通りです。

一般カード 86.70%
ゴールドカード 12.30%
プラチナ、ブラックなどの最上級カード 0.40%
その他 0.60%

参照:リサーチデータ(2010年)クレジットカードに関する調査|楽天インサイト

便宜上、プラチナカードとブラックカードも一緒にして考えた場合、1,000人に4人しか持って居ないことになります。

woman
出会うほうが難しいですよね。

アメックスのプラチナになるとさらに低い

さらに対象をしぼって考えてみましょう。日本で初めてプラチナカードを発行したのは、アメリカン・エキスプレス・インターナショナルです。同社のカード「アメリカン・エキスプレス・プラチナ・カード」を持っている人は、日本全国で何人いるのか調べてみました。

アメリカン・エキスプレス・インターナショナルは、アメリカン・エキスプレス・プラチナ・カードの会員に対し、会報「DEPARTURES」を発行しています。この会報の発行部数は、2019年の時点で11万5,000部です。便宜上、発行部数=アメリカン・エキスプレス・プラチナ・カードの会員数として計算しましょう。

参照:媒体概要2019

日本の人口が2020年現在、1億2,581万人であるため、ここからアメリカン・エキスプレス・プラチナ・カードを持っている人の比率を計算してみると

11万5,000人 ÷ 1億2,581万人 = 約0.091%

になります。つまり、1万人のうち9人しか持っていないということです。

プラチナカードの保有率が低い理由は?

woman
1,000人に4人だとか1万人に9人とか、かなりレアですよね。どうしてこんなに低いんですか?

プラチナカードの保有率が低い理由は、様々な側面から説明できます。ここでは

  1. 希少性を高めてイメージを保持したい
  2. 審査難易度が高く簡単に通らない
  3. 年会費が高い
  4. 一般、ゴールドに比べると扱うカード会社が少ない
  5. 切り替えるのが面倒臭い

の5つの側面から解説しましょう。

理由1.希少性を高めてイメージを保持したい

理由1.希少性を高めてイメージを保持したい

最初の理由は「希少性を高めてイメージを保持したい」です。

招待制のプラチナカードも存在する

アメリカの経済学者、ライベンシュタインは自身の論文「消費者需要理論におけるバンドワゴン効果、スノッブ効果、およびヴェブレン効果」(1950)の中で、以下の3つの概念を提示しました。

  • バンドワゴン効果:「人が持っているから自分も欲しい」という心理が働き、他人の所有・利用が増えるほど需要が増加すること
  • スノッブ効果:「他人とは違うものが欲しい」という心理が強く働くため、簡単に入手できないものほど需要が増し、逆に入手できるようになると需要が減少すること
  • ヴェブレン効果:「人に見せびらかしたい」という心理が強く働き、高価なものの需要が増加すること

参照:第03回 バンドワゴン効果 ~「実績」や「導入事例」がなぜ効果的なのか~ : 富士通マーケティング

参照:マーケティング用語集 バンドワゴン効果、スノッブ効果、ヴェブレン効果 – J-marketing.net produced by JMR生活総合研究所

このうち、プラチナカードの希少性と関係があるのはスノッブ効果でしょう。プラチナカードの発行枚数が少ない状態であれは、人と被ることは確率論的には少ないはずです。だからこそ「滅多に手に入れられないものを自分も手に入れたい」という心理を働かせるため

  • 審査を厳しくし、簡単に手に入れられないようにする
  • 招待制を基本にし、限られた人しか情報を知られないようにする

ことで、プラチナカードの希少性を高めてきたのも事実です。しかし、今ではアメリカン・エキスプレス・プラチナ・カードもこれまでの招待制を取りやめ、自分からでも応募できるようにするなど、流れも徐々に変わってきています。

teacher
そうはいっても、簡単に作れそうにない、というイメージはやっぱりありますよ。

理由2.審査難易度が高く簡単に通らない

理由2.審査難易度が高く簡単に通らない

2つ目の理由は「審査難易度が高く簡単に通らない」ことです。

一般、ゴールドに比べると格段に難しい

日本では、クレジットカード会社が若年層の会員の獲得を経営課題の1つとして掲げていることが多いため、一般カードやゴールドカードであっても、過去にクレジットカードやローンの利用において重大な問題を起こしていなければ、審査に通ることも多くなっています。しかし、プラチナともなると、まったく事情は違ってくるのです。

利用限度額の高さが背景にある

なぜ、プラチナになると審査が難しいのかについて考えてみましょう。先ほどの「ブランドイメージの維持」以外にも考えられる理由として、利用限度額の高さが考えられます。

例えば、三井住友カードの場合、一般カードに相当する「三井住友カード」、ゴールドカードに相当する「三井住友カード ゴールド」、プラチナカードに相当する「三井住友カード プラチナ」でこれだけ違うのです。

三井住友カード 【総利用枠】~100万円
【カード利用枠(カードショッピング)】~100万円
【リボ払い・分割払い利用枠】0~100万円
三井住友カード ゴールド 【総利用枠】~200万円
【カード利用枠(カードショッピング)】~200万円
【リボ払い・分割払い利用枠】0~200万円
三井住友カード プラチナ 【総利用枠】原則300万円~
【カード利用枠(カードショッピング)】原則300万円~
【リボ払い・分割払い利用枠】0~200万円
teacher
総利用枠からしてまったく違うのがわかるはずです!

利用限度額を高く設定するのが基本である以上、クレジットカード会社は「会員になろうとしている人に相応の支払能力があるか」を慎重に見極めなくてはいけません。万が一、延滞・滞納が続き、最終的に自己破産された場合、その損失はすべてクレジットカード会社がかぶることになるためです。

上で紹介した三井住友カード プラチナのように、プラチナカードであれば、利用限度額が数百万円に上ることも珍しくありません。そのため、万が一貸し倒れた場合、クレジットカード会社の損害は大きいことから、審査の時点で「相応の支払能力があるか」を厳しく見極める必要があるため、審査も厳しくなると考えましょう。

「年収〇円ならOK」という話でもない

woman
やっぱりそうなんですね。だったら、年収が高ければいいんですか?
teacher
そういう単純な話でもないですよ。

プラチナカードも含め、クレジットカードの審査は年収が高い方が有利なのは確かです。しかし「年収が高い人なら常に審査に通る」とは言い切れません。例えば、年収が2,000万円あったとしても

  • クレジットカードやローンの利用でトラブルを起こしている
  • 起業したての経営者や芸能人、スポーツ選手など、不安定な職業についている
  • いわゆる水商売なので、いつ収入が途絶えるかがわからない

など、安定継続した収入でなかったり、クレジットカード会社にとって要注意人物とみなされる事情があったりする場合は、審査に通るのはかなり厳しいでしょう。

平均年収が下がっている以上応募へのハードルが高い

最後はやや深刻な問題を取り上げましょう。どのプラチナカードを選ぶかにもよりますが、審査に通るためにはある程度の年収がないと難しいのが事実です。しかし、日本の平均年収はここ20年で下がり続けています。

国税庁が毎年まとめている「民間給与実態調査」によれば、平成12年=2000年の平均給与は461万円だったのに対し、平成30年=2018年の平均給与は441万円になりました。2020年の平均給与のデータはまだ出ていませんが、新型コロナウイルス感染症が世界的に流行したことにともない、下がることが予想されます。

そして、平均給与が下がり続けている以上、プラチナカードの審査に通るだけの年収をもらっている人はごく少数派になりつつあるでしょう。同じく「民間給与実態統計調査」によれば、2018年の年間給与(=年収)の金額の分布は以下のようになっていました。

年収 比率
100万円以下 8.1%
100万円超200万円以下 13.7%
200万円超300万円以下 15.2%
300万円超400万円以下 17.2%
400万円超500万円以下 14.9%
500万円超600万円以下 10.2%
600万円超700万円以下 6.5%
700万円超800万円以下 4.4%
800万円超900万円以下 2.9%
900万円超1,000万円以下 1.9%
1,000万円超1,500万円以下 3.6%
1,500万円超2,000万円以下 0.8%
2,000万円超2,500万円以下 0.3%
2,500万円超 0.3%

出典:民間給与実態統計調査 年度別リンク|国税庁

つまり、800万円超であれば上位10%に入っている計算になるため、プラチナカードの審査に通る可能性も出てきますが、ほとんどの人はそこまではいかないのが事実でしょう。

teacher
多くの人が「応募してもたぶん通らない」ほどの年収に落ち着いているのも、プラチナカードの保有率が少ない理由の1つかもしれません。

理由3.年会費が高い

理由3.年会費が高い

3つ目の理由として考えられるのは「年会費が高い」です。

支払いを行うだけなら一般、ゴールドで十分

実のところ、クレジットカードのステータスが一般、ゴールド、プラチナであっても「支払いをする」という機能には何ら違いはありません。加盟店に行き、クレジットカードで支払いをしたい旨を伝えれば支払いが済むのは同じです。つまり、支払いを行うためだけにクレジットカードを使うなら、一般でもゴールドでもプラチナでも大差はありません。

実際はポイント還元率が違ったり、特約店があったりなどの違いはありますが、大差ではないと考えましょう。

特典は使わなければ意味がない

違いがあるとしたら、付帯している特典の数でしょう。大半のプラチナカードには

  • 補償額の大きい海外旅行傷害保険
  • コンシェルジュサービス
  • ホテル、レストランでの優待

など、運営していくとしたらそれなりに費用がかかる付帯サービスが設けられています。これらのサービスは、使う機会がある人にとっては、十分に活用する価値のあるものばかりです。しかし、海外旅行や出張にいく機会が少なかったりする場合は、特典を使う機会すらないので「宝の持ち腐れ」になってしまうかもしれません。

使わない特典に対して高い年会費を払うのは無駄、と考える人がいる以上、申し込み数も少なくなるので、保有率も低くなるのです。

理由4.一般、ゴールドに比べると扱うカード会社が少ない

理由4.一般、ゴールドに比べると扱うカード会社が少ない

4つ目の理由は「一般、ゴールドに比べると扱うカード会社が少ない」です。

ゴールドが最上位のカードも多く存在する

日本で初めて発行されたプラチナカードは、アメリカン・エキスプレス・プラチナ・カードです。ゴールドの上位に位置するカードという意味で、金(=ゴールド)より希少性の高い白金(=プラチナ)が名前に使われました。

アメリカン・エキスプレス・プラチナ・カードの発行元であるアメリカン・エキスプレス・インターナショナルが、日本国内においてこのカードを発行し始めたのは1993年のことですが、その後、国内の別のクレジットカード会社も上位会員向けのカードとしてプラチナカードを発行する動きを見せました。

しかし、実際にプラチナカードの発行に動くクレジットカード会社は、全体から見るとごく少数です。日本の場合、提携カードといって、国際ブランド(決済システムを運営する会社)が外部の企業と提携し、その会社の商品・サービスの拡販を目的として発行されるクレジットカードが多く出回っています。

このようなカードの場合、あくまで目的は商品・サービスの拡販であるため、上位会員向けへの優待を付帯させたカードを発行する意義に乏しいのも事実です。そのため、プラチナカードの発行までを手掛けるクレジットカード会社も少なくなっています。上位カードがあったとしても、ゴールドどまりと考えましょう。

理由5.切り替えるのが面倒臭い

理由5.切り替えるのが面倒臭い

最後の理由は「切り替えるのが面倒くさい」です。

月額利用料、公共料金の支払いに使っていた場合は厄介

プラチナカードも含め、クレジットカードの切替を面倒臭いと思う人はどれくらいいるのでしょうか。メインで利用しているクレジットカードの利用期間から読みといてみましょう。

参照:リサーチデータ(2010年)クレジットカードに関する調査|楽天インサイト

こちらのグラフを見てもわかるように、メインで利用しているクレジットカードの利用期間は、10年以上にわたるのは珍しくありません。理由は人それぞれですが、中には「単に切り替えるのが面倒臭い」という人もいるはずです。

携帯電話の月額利用料や公共料金など、毎月、必ず支払わなくてはいけないものの支払いにクレジットカードを使っていた場合は、余計に切り替えるのもおっくうになるでしょう。

海外出張、旅行が多くなってきたら切り替えるチャンス

「クレジットカードを切り替えるのは面倒臭い」という前提のもと、それでもあえて切り替えるタイミングがあるかについても考えてみましょう。1つあるとしたら、海外出張や旅行に行く機会が多くなってきたときです。

プラチナカードの場合

  • 海外旅行傷害保険の補償額がかなり高い(1億円以上)
  • 空港~自宅間の荷物の宅配を無料、もしくは割引価格で受け付けてくれる
  • 海外の空港ラウンジが利用できる

など、海外出張や旅行の時に便利な特典が充実しています。また、日本国内ではあまり感じないかもしれませんが、海外ではプラチナカードを持っているだけでレストランやホテルでいい扱いが受けられることも実際にあるのです。

前のカードをサブカードとして残すのもあり

woman
(男性)何もかもプラチナカードに切り替えるのは面倒だな。

と思うのなら、以前から使っている一般カードやゴールドカードを、サブカードとして残しておきましょう。海外に行く場合はもちろん、国内で過ごす場合も、手元のカードがいきなり使えなくなることはあり得ます。

teacher
(先生)延滞とか滞納したとかではなくて、ICチップや磁気ストライプがいきなり壊れる、ということもあるんですよ。
そのような実情を考えると、サブカードとして一般カードやゴールドカードを持っておくのは、やはり必要です。

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