その人の人となりを判断する尺度の1つとして用いられるのが「持ち物」です。たとえば、洋服を見て「ああ、この人はいいものを着ているな、きっと経済的に余裕があるのだな」と判断するのは珍しくありません。その判断から、相手に対して好感を持つのもめずらしくはないでしょう。それならば、持ち物の1つであるプラチナカードを店員に見せた場合、どんな反応をされるのかを、今回の記事で考えてみましょう。
パターン1.全く何も起こらない
最初のパターンは「全く何も起こらない」です。
コンビニ、スーパーでは自分で端末に入れるのが一般的
そもそも、日本国内に限って言えば、スーパー、コンビニなどの普段の買い物に使う小売店では、自分で端末にプラチナカードを含めたクレジットカードを差し込んで決済するのが一般的です。2018年6月1日から改正割賦販売法が施行され、クレジットカードを取り扱う加盟店において、カード番号等の適切な管理や不正利用対策を講じることが義務付けられたことと関連しています。
参照:加盟店の皆様へ|消費者・加盟店のご理解のために|安全・安心なクレジットカード取引への取組|一般社団法人日本クレジット協会
そのため、コンビニやスーパーなどでは、そもそも店員が自分のプラチナカードに触りもしないことが考えられるのです。
その他の場所でも単に支払い手段として使うだけのことがほとんど
もちろん、コンビニやスーパー以外の場所でも、プラチナカードを含めたクレジットカードを支払い手段として使うことは考えられるでしょう。しかし、ほとんどのお店では「単なる支払い手段」として認知されているため、やっぱり何も起こらないと考えた方がよさそうです。
さらに、プラチナカードには「色のせいで一般カードに間違えられやすい」という弱点があります。プラチナカードの場合、カードの券面が銀色を基調としたデザインになっていることが多いですが、銀色は一般カードのデザインにもよく使われる色です。
尊大な態度をとると裏で笑われる可能性もあることに注意
むしろ、何も起こらないことが想定される店に行き、プラチナカードを出した時は、尊大な態度をとらないように気を付けましょう。
後述しますが、プラチナカードの審査に通るのは難しい以上、それを持てるということはやはり社会的な信頼や支払能力が十分にあるということです。しかし、それは「その人自身の人間性」とは全く関係ありません。それにも関わらず偉そうな態度をとってしまうと、かえって反感を買う恐れがあるので注意しましょう。
パターン2.なんらかのサービスが受けられる
2つ目のパターンは「なんらかのサービスが受けられる」です。
気が利く店員なら特典の案内をしてくれる
プラチナカードの種類によっては、提携店での優待が受けられるなどの特典を盛り込んでいることがあります。自分ではその特典の全く知らないでプラチナカードを出したとしても、気が利く店員が対応してくれたなら
などなんらかの案内をしてくれるはずです。特典の内容を聞き、使ってみたいと思えるものであれば、ぜひ恩恵にあずかりましょう。
事前に確認したなら伝えてみよう
逆に、自分では特典が存在することを確認していたのに、店員の側が知らないこともあり得ます。そのような場合は、強く言うのではなく「このカードだと、特典が受けられると聞いたのですが、調べてもらえますか?」と聞いてみましょう。
なんらかのサービスの例
ここで、サービスとして考えられるものを3つほど挙げましょう。
1.飲食代金が割引になる
プラチナカードによっては、対象となるレストランで提示すると、飲食代金が割引になることもあります。また、割引自体は受けられないとしても、ワンドリンクやデザートのサービス、お土産の贈呈など、別の特典が用意されているケースもあります。
2.ホテルの部屋のグレードが上がる
宿泊する時期や利用した予約プラン、その時の部屋の空き状況にもよりますが、プラチナカードを出すと部屋のアップグレードが受けられることがあります。また、部屋に空きがなかったとしても、ホテル内での飲食に利用できるクーポンなど、なんらかの特典が付くケースもあるのでチェックしてみましょう。
ご自身が、プラチナカードやSPGアメックス、ヒルトン・オナーズVISAなどを使って高級ホテルに泊まり、部屋をアップグレードしてもらった時に「これで実質年会費無料!むしろ元を取るどころか得した!」と感じるタイプと思えば、高級高年会費クレカの沼にはまる楽しみを味わえるでしょう。
— 山椒 (@sansyoub) June 29, 2019
3.ビジネスクラスカウンターでチェックインができる
航空会社とカード会社が提携して発行しているプラチナカードによくあるのが「国際線を利用する際に、ビジネスクラスカウンターでチェックインができる」という特典です。あくまでその会社(JALやANAなど)が自社で運行する便に限られ、
パターン3.周囲の客より明らかにいい待遇を受けられる
3つめのパターンは「周囲の客より明らかにいい待遇を受けられる」というものです。
海外では割とよくある話
これに関しては、日本よりも海外でのほうが効果を実感できるでしょう。なぜ、そういうことが起きるのか、前提として
- クレジットカードを持てること自体が社会的信用の証にもなっている
- プラチナカード=ある程度の収入と信用がある、という指標になる
の2つを解説します。
クレジットカードを持てること自体が社会的信用の証にもなっている
日本だと実感しにくいかもしれませんが、海外だと「クレジットカードを持てる=ある程度の社会的信用はある」というように、好意的にとられます。なぜ、そのようなことが起こるのか考えてみましょう。
日本では至極一般的なものになった
日本でクレジットカードの発行が本格的に開始されたのは1961年です。当時の日本交通公社(現在のJTB)と富士銀行(現在のみずほ銀行)が共同で設立した「日本ダイナースクラブ」が手がけました。
その際、同社は「経営者、医師・弁護士などの高度専門職、一部上場企業もしくはそれに準ずる規模の企業の社員など、社会的な信用のある人を会員として迎える」という会員勧誘方針を掲げていたのです。
それからだいぶ時間が経ち、少なくとも日本においてはクレジットカードは学生、主婦、年金生活者など「自身に継続安定した収入がなくても持てる」非常に一般的なものになりました。
アメリカでは若年層がクレジットカードを持つのはかなり難しい
しかし、海外ではどうもそうはいかないようです。わかりやすい例として「学生や新社会人など、若年層のクレジットカード所有率」を考えてみましょう。
大手クレジットカード会社のJCBが行ったアンケート調査によれば、20代のクレジットカード保有率は男性が72.8%、女性が77.3%でした。つまり、クレジットカードを持っていない人が少数派ということです。
参照:JCB、「クレジットカードに関する総合調査」2019年度の調査結果を発表|JCBのプレスリリース
一方、アメリカのフィンテック企業であるDESERVE(旧・SelfScore)が行った調査によれば、アメリカにおける18歳から29歳までのクレジットカード保有率は33%に過ぎないとのことでした。
参照:「全ての若者にクレジットカード!」を叶えるstartup!|News|株式会社KVP
日本の場合、クレジットカード会社が若年層の加入を重要な経営課題の1つとして掲げていることも多いため、過去にお金のことで重大なトラブルを起こしていなければ、審査にも比較的通りやすいのが実情です。
しかし、アメリカの場合はたとえ年齢がいくつであっても、クレジットスコアが低いとクレジットカードやローンの審査にはほぼ通らないという実情があります。
アメリカでは、クレジットカードやローンの支払い履歴(クレジットヒストリー)は、社会保険番号(ソーシャルセキュリティナンバー)と紐づけられ、管理されています。そして、このクレジットヒストリーをもとにクレジットスコアを算出し、その数値をもとにクレジットカードやローンなどの金融サービスや、電気・ガスなどの公共サービス、果てはアパートや学生寮などの入居の可否を審査しているのです。
クレジットカードやローンを利用できない年齢の人であれば、当然クレジットヒストリーもないので、クレジットスコアも低くなります。そのため、クレジットヒストリーを積み上げてクレジットスコアを上げたいから、クレジットカードやローンを組みたいのに、審査に通らないという悪循環が生まれました。
つまり、アメリカではクレジットカードを持つこと自体が難しいからこそ、社会的な信用を図る1つの尺度として用いられてきたのです。当然「クレジットカードを持っている外国人」に対しても、その尺度は用いられます。
出典:Deserve – Company | Deserve
プラチナカード=ある程度の収入と信用がある、という指標になる
世界規模で見れば、プラチナカードどころか、一般のクレジットカードを持つこと自体が難しい状況にある国が存在するのも事実です。また、ドイツのように、国民自体が現金払いを好むため、キャッシュレス決済も現金払いに近い感覚で利用できるデビットカードが好まれるという特殊な国もあります。
それでも、プラチナカードはある程度の収入と信用がある指標になるのも事実です。特に、アメリカン・エキスプレスやJCBなど、国際ブランドが自社で発行しているプラチナカード(プロパーカード)の場合、審査に通るのも簡単ではないことから、たとえ日本語がわからない相手であっても「この人にはある程度の収入と信用が備わっている」ということが一目でわかります。
いい待遇の例
店の立場からすれば、社会的な信用と相応の支払能力がある人と長期にわたっていい関係を築いていきたいはずです。その一環として、通常では受けられない待遇が受けられることがあります。
1.ブティックのVIPルームに通される
シャネル、ディオールなどの高級ブランドのブティックの場合、上顧客用の応接室=VIPルームを設けている場合があります。買い物をした金額にもよりますが、会計や商品の説明をする際に、そのようなVIPルームに通されるのも珍しくありません。
2.レストランでいい席に通される
海外のホテルでは、チェックインをする際にデポジットとしてプラチナカードを含めたクレジットカード情報を預けるのが一般的です。その際、プラチナカードを使っていたことがわかれば、館内のレストランを利用する際に、いい席(庭が見える、夜景が見やすいなど)を割り当ててもらえることもあります。もちろん、これはホテル以外のところにあるレストランであっても同じです。
いい席に通されなかったとしても
- ドリンクやデザートのサービスがある
- お土産を持たせてもらえる
などの特典が受けられるかもしれません。
結局、プラチナカードを見せると店員の態度は変わるのか?
結局のところ、プラチナカードを見せると店員の態度は変わるのか、そろそろ結論に入りましょう。
100%変わるとは断言できない
実際のところ、100%変わるとは断言できないのが結論です。既に触れた通り、コンビニやスーパーなどでは、客から店員がクレジットカードを預かることなく、自身で端末に通して決済する方法が主流になりました。そのため、店員がプラチナカードを含め、クレジットカードを触ることがない以上、カードの色が何かを見る機会もないでしょう。
また、レストランなど、店員がクレジットカードを客からあずかり、決済するタイプの店であっても、クレジットカードの色まで細かくチェックしない場合も多いです。以前、店員が客から預かったクレジットカードの情報を盗み取り、オンラインショッピングなど対面でのやり取りをしない場面で不正利用した結果、逮捕されたという事件も起きました。
そのため、たとえそのような悪意がなかったとしても、客のクレジットカードを必要以上にチェックすることを慎むよう教育している店舗も少なくありません。
日本よりは海外の方が恩恵は受けやすい
日本国内では、なかなか恩恵が受けにくいのが事実のようですが、海外では若干事情が異なります。日本にいる限りはあまり感じないかもしれませんが、海外に行くと、自分たちが「海外から来た人」という立場になります。相手からすれば、その人の人となりを知る方法は、かなり限られるわけです。
しかし、そんな中でも便りにできるのは、クレジットカードの情報でしょう。
- クレジットカード自体が、相応の社会的信用と支払能力がないと発行してもらえないものである
- プラチナカードは、一般カードに比べるとより高い社会的信用と支払能力が求められる
のは、世界中、どこに行ってもほぼ変わりません。つまり「プラチナカードを持っている=それなりに信用も、支払能力もある」とポジティブにとらえてもらいやすいのです。このような背景を考えると、日本よりも海外の方が、プラチナカードが威力を発揮するかもしれません。
カードの色以上に大事なのは「その人自身」
しかし、プラチナカードを持っているからといって、店員がいつも好意的な反応をしてくれるとは限らない点にも注意が必要です。プラチナカードを持っているからといって、横柄な態度をしたのでは何もなりません。特に、高級ブランドのブティックやホテルなどは、従業員を守ることが店の品位につながるという考え方があるため、あまりに尊大な態度を取ると、責任者が出てきて退去するよう命じられるのも珍しくないのです。
ブッサイクな男連れてて女がお財布から出してカルトンに投げてきたのはアメックスカード(プラチナ)。ドヤ顔だった。だから何?どうせ家族カードだろ。態度もクソ悪。
コイツ私の地雷踏んだな。
なので相応の対応で返しました。
プラチナカードの審査は通ってもお前は人として審査落ち。— レジの呟き(ゆん) (@mitarashi_chop) February 1, 2020