これから起業する人に知っておいて欲しいルールとして、「ビジネスで使うお金とプライベートで使うお金はきっちり分ける」ことがあります。きっちりわけることで
- 自分の事業によりどれだけの収益が上がり、費用が出ていくのかがわかる
- 所得税、法人税の申告をする際の処理も楽になる
などいいことづくめです。そこで、今回の記事では、主にこれから起業する人、起業したばかりの人に向けて、失敗しない法人ゴールドカードの選び方をレクチャーしましょう。
法人ゴールドカードの基本
最初に、法人ゴールドカードの基本的な部分について解説します。
法人ゴールドカードとは
個人事業主や中小企業の経営者(代表取締役など)が使う事業性費用を支払うためのクレジットカードとして、法人クレジットカードがあります。「ビジネスカード」という呼称もよく使われているので、併せて覚えておきましょう。これに対して、大企業向けの事業性費用を支払うための法人クレジットカードを「コーポレートカード」ということがあります。
ステータスは3段階
個人向けのクレジットカードと同様、年会費および付帯サービスの質・量に合わせて
- 一般
- ゴールド
- プラチナ
という3つのステータスが用意されています。
法人ゴールドカードのメリット・デメリット
法人ゴールドカードのメリットとデメリットについて考えてみましょう。
メリット
最初に、メリットとして
- プラチナよりは審査に通りやすい
- 付帯サービス・特典が充実している
の2つを解説しましょう。
1.プラチナよりは審査に通りやすい
法人クレジットカードであったとしても、ステータスが高くなればなるほど、審査に通りにくくなります。当然、法人ゴールドカードよりは、法人プラチナカードの方が審査に通りにくいです。
という場合は、まずは法人ゴールドカードでクレジットヒストリーを積み上げ、2~3年たったころに法人プラチナカードにトライしてみるといいでしょう。
2.一般よりも付帯サービス・特典が充実している
法人クレジットカードの本来の役割は「事業性費用の支払いに充てること」です。その役割を果たすためだけだったら、法人一般カードであっても、何の問題はありません。しかし、法人ゴールドカードには、法人一般カードでは受けられないサービスや特典が付帯しています。これらのサービスや特典を上手に使うことで、大幅な経費削減が実現できるのも事実です。
デメリット
一方、法人ゴールドカードのデメリットとして
- 創業したてでは審査に通りにくいこともある
について解説しましょう。
1.創業したてでは審査に通りにくいこともある
個人事業主としてビジネスを始める場合でも、法人を設立して代表者としてビジネスを始める場合でも、最初のうちは何かとお金周りのことで苦労するはずです。法人ゴールドカードも含めたクレジットカードの中には
- 法人名義・屋号の銀行口座が必須になっている
- 過去2期分の確定申告書を提出しなくてはいけない
など、創業したての法人代表者や個人事業主は事実上申し込めないものもあります。また、仮に申込ができたとしても、また事業での収益が見えていない以上、クレジットカード会社が警戒するのも当然です。対策としては
- 創業したての法人代表者、個人事業主でも申し込める法人ゴールドカードを選ぶ
- クレジットカード会社から問い合わせがあったら、すぐに返答できるよう、書類を整理し、不明点を調べておく
などが挙げられます。
失敗しない法人ゴールドカードの選び方
次に、失敗しない法人ゴールドカードの選び方について解説します。以下の5点は意識するようにしてください。
- ステータス性・信頼性はあるか
- 実務に役立つサービスはあるか
- 出張にいく際に便利なサービスはあるか
- 海外旅行傷害保険の保障は十分か
- 接待の手配に役立つサービスがあるか
1.ステータス性・信頼性はあるか
一口にクレジットカードと言っても「どの国際ブランドが付帯しているか」「どの会社が発行しているか」によって、審査難易度は全く違います。そして、審査難易度が高いクレジットカードの審査に通るということは「お金周りのことをちゃんとしている」という高評価にもつながるのです。これは、法人であっても個人であっても変わりません。法人ゴールドカードを選ぶ際は、ステータス性に注目して選びましょう。
また、ステータス性と同じくらい必要なのが「クレジットカード会社の信頼性」です。そもそもクレジットカード会社自体がある程度の資金力がないと運営できない業種であるため、一定以上の信頼性はどこであっても備わっているものです。
2.実務に役立つサービスはあるか
個人事業主であるか法人代表者であるかを問わず、実際に起業してみると案外時間とお金が足りないことに気づくはずです。お金はともかく、時間は自分の心掛け次第で節約できる部分もあるので、外部のサービスを利用し、上手に乗り切りましょう。法人ゴールドカードにも、実務に役立つサービスが付帯しているものがたくさんあります。
EX Gold for Biz S/ EX Gold for Biz Mの場合
このカードはオリエント・コーポレーションの法人ゴールドカードですが、会計ソフト「freee」の月額利用料が2カ月分無料になります。本来、会計ソフトは手で入力しないといけないので、事務作業に時間がかかりますが、freeeでは入力が自動化されているので、手間が大幅に省けます。
3.出張にいく際に便利なサービスはあるか
どんな内容のビジネスをしているかにもよりますが、出張の多い仕事になった場合「いかにしてホテルや交通手段を安く、手早く手配するか」が仕事を効率的に進め、経費を削減する上で重要になります。法人向けのオンライン予約サイトを利用できる法人ゴールドカードがあれば、時間と旅費の大幅な節約になるのも確かです。
JCBゴールド法人カードの場合
JCB法人ゴールドカードの場合、以下の4つの法人向けサービスが利用可能です。
JCB.ANA@desk | ANA(全日本空輸)が運営する出張手配システム |
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JCB de JAL ONLINE | JAL(日本航空)が運営する法人生産方式のチケットレスサービス |
JR東海「エクスプレス予約」サービス | 東海道・山陽新幹線(東京~博多間)のネット予約&チケットレス乗車サービス。法人カードでの利用が可能。 |
じゃらんコーポレートサービス | リクルートが運営する旅行予約サービス「じゃらん.net」の法人向けサービス。出張コスト削減を前提とした限定プランも提供。 |
4.海外旅行傷害保険の保障は十分か
法人代表者や個人事業主が、一般的なサラリーマン(給与所得者)とまったく違うことの1つとして「万が一のことがあったときは、自分で何とかしなくてはいけない」ことが挙げられます。例えば、海外に出張に行き、突然のケガや病気が原因で万が一のことになってしまったとしましょう。
この時、一般的なサラリーマンや公務員など、労災保険に加入している人であれば、海外出張中の死亡も労働災害として認定されます。
しかし、法人代表者や個人事業主であった場合、このような給付は受けられません。頼れるのが海外旅行傷害保険しかないので、法人ゴールドカードに付帯している海外旅行傷害保険の保障内容について渡航前に確認するとともに
- 個人で使用しているクレジットカードの海外旅行傷害保険の保障内容を調べる
- 状況に合わせて、保険会社が販売する海外旅行傷害保険に加入する
- 社員や家族に、自分に万が一があった場合の対応について共有しておく
などの下準備は怠らないようにしましょう。
5.接待の手配に役立つサービスがあるか
大手企業では、経費削減や癒着を防ぐという意味で「接待禁止」を打ち出しているケースも増えてきました。しかし、個人事業主や中小企業の法人代表者にとっては、接待は取引先との関係を築く上での大事な機会の1つでしょう。たしかに、大事な機会ではあるものの、接待に使う飲食店の手配は「やらなくてはいけないけど、慣れないと時間がかかることの1つ」です。
おすすめ法人ゴールドカード5選
ここまでの内容を踏まえて、おすすめの法人ゴールドカードとして、以下の5種類を紹介します。
- アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カード
- 三井住友ビジネスカード for Ownersゴールド
- JCBゴールド法人カード
- オリコEX Gold for Biz
- 楽天ビジネスカード
1.アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カード
ビジネス向けサービス | 高額利用の事前承認可能 「クラウド会計ソフト freee」へのデータ連携 ビジネス情報サービス「ジー・サーチ」年会費無料 |
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海外出張・旅行関連サービス | アメリカン・エキスプレス JALオンライン オーバーシーズ・アシスト 空港ラウンジ エアポート送迎サービス 手荷物無料宅配サービス 手荷物ホテル当日宅配サービス |
海外旅行傷害保険の死亡・高度障害時保障額 | 最高1億円(うち5,000万円は利用付帯) |
接待の手配に役立つサービス | ビジネス・カード会員限定イベント ゴルフ関連サービス 京都特別観光ラウンジ ゴールド・ワインクラブ ビジネス・ダイニング by ぐるなび |
国際ブランドの1つ、American Expressのプロパーカードでもある法人ゴールドカードです。個人事業主、法人代表者ともに申込が可能です。発行元であるアメリカン・エキスプレス自体が富裕層の取り込みに力を入れているためか、審査が難しいというイメージを持たれがちです。しかし、実際は設立・創業からあまり年数が経過していなくても、個人事業主、法人代表者本人の支払能力に著しい問題がなければ、審査に通るケースも少なくありません。
また、このカードのメリットとしては
- 海外旅行傷害保険の最高保障額が1億円である
- 接待や海外出張に役立つサービスが充実している
ことが挙げられます。まず「海外旅行傷害保険の最高保障額が1億円である」についてですが、このカードの海外旅行傷害保険の保障内容は、以下の通りです。
保険金の種類 | 基本カード会員 | 基本カード会員の家族 | 追加カード会員 | 追加カード会員の家族 |
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傷害死亡・後遺障害保険金 | 最高1億円(うち利用付帯分5,000万円) | 最高5,000万円 | 最高5,000万円 | 最高1,000万円 |
傷害治療費用保険金 | 最高300万円 | 最高200万円 | 最高300万円 | 最高200万円 |
疾病治療費用保険金 | 最高300万円 | 最高200万円 | 最高300万円 | 最高200万円 |
賠償責任保険金 | 最高4,000万円 | |||
携行品損害保険金 | 1旅行中最高50万円 | |||
救援者費用保険金 | 保険期間中最高400万円(うち利用付帯分100万円) | 保険期間中最高300万円 | 保険期間中最高400万円 | 保険期間中最高300万円 |
また「接待や海外出張に役立つサービスが充実している」についてですが、主要なものだけでもこれだけ付帯しています。
海外出張に役立つサービス
アメリカン・エキスプレス JALオンライン | アメリカン・エキスプレスが発行するカードの会員だけが限定で利用できる日本航空(JAL)の予約システム。 |
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オーバーシーズ・アシスト | 海外滞在時の会員サポート。盗難、紛失などのトラブル対応から、現地のレストラン・ゴルフ場などの予約など様々なサービスを提供する。 |
空港ラウンジ | 日本全国の主要空港のラウンジが利用できる。 |
エアポート送迎サービス | 日本出国時、帰国時に提携タクシー会社のタクシーを割安の定額料金で利用できる。※一定の条件あり |
手荷物無料宅配サービス | 日本出国時、帰国時に空港~自宅間で荷物を1個まで無料配送する。※一定の条件あり |
手荷物ホテル当日宅配サービス | 国内の出張の場合、空港からホテルまで荷物を当日配送する。 |
接待に役立つサービス
ビジネス・カード会員限定イベント | アメリカン・エキスプレスが主催する交流イベントに参加できる。 |
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ゴルフ関連サービス | ゴルフ場の検索、予約などを行う。 |
京都特別観光ラウンジ | 京都市内の高台寺塔頭 圓徳院の専用ラウンジを、同伴者3名まで利用可能。 |
ゴールド・ワインクラブ | 会員制ワイン通販サイトを利用可能。 |
ビジネス・ダイニング by ぐるなび | 大手レストラン情報サイト「ぐるなび」と提携した、接待に利用可能な店の検索・予約が行えるサービス。 |
2.三井住友ビジネスカード for Ownersゴールド
ビジネス向けサービス | アスクルサービス 日産レンタカー タイムズ カー レンタル アート引越センター 福利厚生代行サービス |
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海外出張・旅行関連サービス | 空港ラウンジ利用 |
海外旅行傷害保険の死亡・高度障害時保障額 | 最高5,000万円 |
接待の手配に役立つサービス | - |
三井住友銀行傘下のカード会社である三井住友カードが発行する法人ゴールドカードです。このカードのメリットとして
- 初年度年会費が無料
- Visaが付帯しているので世界中どこでも使える
ことが挙げられます。
まず、このカードの年会費は本会員1人につき11,000円(税込)ですが、初年度であれば無料です。次年度以降についてもWeb明細を利用すれば、年会費が本会員1人につき1,100円(税込)割引されます。
また「Visaが付帯しているので世界中どこでも使える」についてですが、このカードには国際ブランドとしてVisaが付帯しています。Visaは2018年も取引額ベースで世界シェア1位を誇る国際ブランドであるため、日本を含めた世界中で利用できないところを探す方が難しいほど普及しているのです。つまり、このカードも「世界中で利用できないところを探す方が難しい」と言えるでしょう。
3.JCBゴールド法人カード
ビジネス向けサービス | MyJCB 外部接続サービス |
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海外出張・旅行関連サービス | 空港ラウンジサービス |
海外旅行傷害保険の死亡・高度障害時保障額 | 最高1億円(うち、5,000万円分は利用付帯) |
接待の手配に役立つサービス | JCBゴールドグルメ優待サービス ゴルフエントリーサービス |
日本発の国際ブランドとしても知られるJCBのプロパーカードのうち、法人ゴールドカードに相当するのがJCBゴールド法人カードです。このカードをおすすめする理由として
- API連携に力を入れていて、経理の省力化が図れる
- 年会費はリーズナブルだが、接待の手配に役立つサービスが利用できる
の2つが挙げられます。
まず「API連携に力を入れていて、経理の省力化が図れる」についてですが、JCBゴールド法人カードでは「MyJCB 外部接続サービス」が利用できます。
2020年8月現在、以下の4社が「MyJCB 外部接続サービス」に対応しています。
- 弥生株式会社(会計ソフト)
- freee株式会社(会計ソフト)
- りそなグループ(りそな銀行・埼玉りそな銀行・関西みらい銀行)
- 株式会社セブン銀行
また「年会費はリーズナブルだが、接待の手配に役立つサービスが利用できる」についてですが、接待でも利用することが多い飲食店、ゴルフ場に関連し、以下のサービスが受けられます。
JCBゴールドグルメ優待サービス | 日本各地の対象店舗で、JCBゴールド法人カードを使って支払いをすると割引が受けられる。 |
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ゴルフエントリーサービス | 有名コースでのゴルフコンペの開催や、全国約1,200ヵ所のゴルフ場の手配を専用デスクへの電話で行ってくれる。 |
4. EX Gold for Biz S/EX Gold for Biz M
ビジネス向けサービス | Mastercard T&E Savings(Mastercardブランドのみ) Mastercardビジネスアシスト(Mastercardブランドのみ) Visaビジネスオファー(Visaブランドのみ) Visaゴールドカード優待特典(Visaブランドのみ) クラウド会計ソフト freee(フリー) 融資金利優遇制度 福利厚生サービス「ベネフィットステーション」 |
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海外出張・旅行関連サービス | 空港ラウンジ |
海外旅行傷害保険の死亡・高度障害時保障額 | 最高5,000万円 |
接待の手配に役立つサービス | - |
日本の大手信販会社・オリエントコーポレーション(オリコ)が発行している法人ゴールドカードです。EX Gold for Biz Sが個人事業主用、EX Gold for Biz Mが法人代表者用と分かれていますが、基本的な機能は変わらないので、ひとまとめにして解説します。
このカードをおすすめする理由として
- 融資において優遇が受けられる
- 福利厚生サービスを割安で利用できる
の2つが挙げられます。
まず「融資において優遇が受けられる」についてですが、このカードへの入会と同時に、証書貸付「ビジネスサポートプラン」もしくはローンカード「CREST for Biz」のいずれかを利用する場合、通常金利より最大2.0%(実質年率)優遇が受けられます。
また「福利厚生サービスを割安で利用できる」ですが、このカードの会員であれば、福利厚生代行サービス「ベネフィットステーション」を優待価格で利用することが可能です。
- 提携ホテル・旅館の宿泊料の割引
- スポーツクラブでの優待
- テーマパーク、水族館、博物館などの入場料の割引
などが受けられます。
5.楽天ビジネスカード
ビジネス向けサービス | Visaビジネスオファー |
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海外出張・旅行関連サービス | プライオリティ・パス 空港ラウンジ利用 トラベルデスクの利用 |
海外旅行傷害保険の死亡・高度障害時保障額 | 最高5,000万円 |
接待の手配に役立つサービス | - |
楽天ビジネスカードは、ここまで紹介した他の法人ゴールドカードとは違い、単独では発行できません。個人向けのゴールドカードである楽天プレミアムカードの追加カードとして発行されるものです。
楽天ビジネスカードをおすすめする理由として
- プライオリティ・パスが無料でついてくる
- ポイント還元率が高い
の2点が挙げられます。
まず「プライオリティ・パスが無料でついてくる」についてですが、本カードとなる楽天プレミアムカードでは、空港ラウンジ共通利用サービスの「プライオリティ・パス」の会員権(プレステージ会員)がついてきます。提携しているラウンジであれば、追加料金なしで利用可能です。
また「ポイント還元率が高い」ですが、楽天市場以外の買い物であっても、ポイント還元率は1.0%(利用額100円につき1ポイント)の高水準を誇ります。楽天市場での買い物であれば、利用額100円につき5ポイント付与されるので、ポイント還元率は5.0%にものぼるのです。