デビットカードの性質を表す言葉として「審査なし」が使われることがあります。確かに、クレジットカードに比べれば、発行を断られる人が格段に少ないのは事実です。しかし、何等かの理由で発行を断られる人も確かにいます。
そこでこの記事では
- デビットカードは大半が「審査なし」の理由
- デビットカードの審査に落ちる理由
- デビットカードの審査に落ちないために気を付けるべきポイント
について解説します。
デビットカードは大半が「審査なし」の理由
実際のところ、デビットカードは大半が「審査なし」です。最初に、審査(与信審査)がないのが基本である理由について、解説しましょう。
基本は審査なし
デビットカードを使う場合、次の流れで支払いが進みます。
- デビットカードを使えるお店=加盟店で、会員がデビットカードで支払いをする
- デビットカードの発行会社に支払い情報が到達すると、その場で会員の銀行口座から引き落としが行われる
つまり「クレジットカード会社が一度立て替え、あとで請求する」というプロセスはありません。基本的に審査も行わないため、高校生(一部中学生)からデビットカードは作れるのです。
銀行口座開設自体を断られることはある
しかし、デビットカードを使う場合、別の問題が生じます。
それは
銀行口座を開設できなかった場合、デビットカードも作れない
ということです。
近年は
- 振り込め詐欺などの犯罪抑止
- 反社会勢力・テロ組織等への資金流出の防止
の観点から、個人であっても、銀行の銀行口座を開設できないことは多々あります。
仮に、銀行口座の開設を断られたとしても、その理由を銀行側が開示することは基本的にないため、何が本当の原因なのかを特定するのが難しいのも事実です。
審査があるデビットカードとは?
一方、数としては少ないですが、審査=与信審査が行われるデビットカードも存在します。
不足額を立て替えるタイプには注意
代表例が
タイプのデビットカードです。
例えば、イオン銀行が発行している「イオンデビットカード」の場合、バックアップサービスという名前で、この仕組みが取り入れられています。銀行システムの停止、普通預金残高不足の場合には、一時的に10万円まで利用金額を立て替え、利用日から締日(毎月10日)の間に、毎日1回預金口座から振替する制度です。
出典:イオンデビットカード|イオンカード 暮らしのマネーサイト
イオンデビットカード
19位 複数枚
35位 -
43位 49枚
58位 49枚
3位 4枚
10位 無制限
8位 無制限※2枚まで年会費無料
13位 発行不可
23位 複数枚
53位 複数枚
52位 20枚
21位 20枚
30位 複数枚
また、スルガ銀行が発行する「SURUGA Visaデビットカード」には、自動貸越サービスが付帯しています。
出典:Visaデビットカードを選ぶなら、スルガ銀行がおトクで便利
自動貸越サービスとは、簡単に言うと「SURUGA Visaデビットカードでキャッシングができる」サービスです。
SURUGA Visaデビットカード
19位 11,000円
35位 2,200円
43位 0円
58位 2,200円
3位 22,000円
10位 36,300円
8位 27,500円
13位 13,200円
23位 33,000円
53位 1,375円
52位 2,200円
21位 11,000円
30位 2,200円
デビットカードの審査に落ちる5つの理由
それでは、デビットカードの審査に落ちる=発行が受けられない理由には、どんなものがあるのでしょうか。考えられる理由として、次の5つについて説明しましょう。
- 継続的な収入がない
- 個人信用情報に異動登録がある
- 銀行とトラブルを起こしたことがある
- 海外での生活に使うと判断された
- 本人確認書類に不備がある
1.継続的な収入がない
「引き落とし時に残高が足りない場合に立て替える」仕組みが導入されているデビットカードの審査(=与信審査)では、継続的な収入がないことが審査落ちの原因につながります。
そのため
- 学生、専業主婦などで定期的な収入がない
- 起業したばかりで事業の収益の見通しが立たない
- 芸能人、いわゆる水商売など、不安定な職業についている
などに当てはまる場合は、審査がないタイプのデビットカードを申し込みましょう。
2.個人信用情報に異動登録がある
- 任意整理、自己破産などの債務整理をした
- クレジットカードを強制解約になったことがある
- 携帯電話代、奨学金の返済などを延滞・滞納したことがある
などの理由で、個人信用情報に異動登録がある場合、審査があるタイプのデビットカードは作れません。
個人信用情報については、ここで詳しく解説しています!
3.銀行口座をめぐるトラブルを起こしたことがある
個人信用情報に異動登録がある場合よりも深刻なのが、銀行口座をめぐるトラブルを起こしたことがあるケースです。ここでは代表例として「違法な貸金業者(ヤミ金融)を使ったことで、銀行口座が凍結された」ケースを紹介しましょう。
銀行口座の凍結とは?
日本にはクレジットカード会社、消費者金融など「貸金業者」と呼ばれる業種の企業を整備する法律(貸金業法)が整備されています。そして
- 貸金業法や他の法律(利息制限法、出資法など)の規制を大きく上回る利息で貸付を行う
- 貸金業法で定められている登録手続をしていない
業者については、厳しく取り締まっているのです。
取り締まりの1つが、銀行口座の凍結です。つまり、警察からヤミ金融からの融資および返済に使っている銀行口座と判断された場合は、その口座から引き出すことはできなくなります。
ヤミ金融の手口の一つとして「返済用の口座として、他の債務者の銀行口座を指定する」ことが挙げられます。この手口を使われると、自分の銀行口座が闇金の貸し付けに使われていると警察が判断してしまうのです。さらなる被害を防ぐために、警察は銀行口座の凍結手続きを行います。
出典:被害者に口座凍結トラブル相次ぐ ヤミ金対策が裏目に 支援団体、国に申し入れへ – 産経WEST
そして、一度でも銀行口座の凍結手続きが行われたことがあったら、他の銀行もその情報を把握している可能性が極めて高いです。ヤミ金融や振り込め詐欺など、金融に関連する犯罪が原因で、銀行口座の凍結手続きを行った場合、預金保険機構は対象口座としてインターネットでその情報を公開します。
金融に関連する犯罪により被害を受けた人を補償する「振り込め詐欺救済法(犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律)」の規定により、手続きとして定められているからです。
出典:振り込め詐欺救済法とは | 金融犯罪の手口 | 一般社団法人 全国銀行協会
銀行口座を凍結された場合、他の銀行でも口座開設を断られる可能性が一気に高まります。
「自分名義の口座が作れないので就職できない」
ヤミ金被害者の支援団体「大阪クレサラ・貧困被害をなくす会(通称・いちょうの会)」(大阪市北区)によると、大阪府内の40代の女性は、もう3年も自分の銀行口座を持てない生活を強いられているという。
平成24年、家賃の支払いに充てるためヤミ金業者から約2万円を借り入れた。その際、振込先として銀行の口座番号を伝えた。
後日、銀行で現金を引き出そうとすると、現金自動預払機(ATM)が使えなくなっていた。けげんに思っていると、ほどなく警察から「ヤミ金に使われた口座を凍結した」と電話があった。無関係と説明したが聞き入れられなかった。確認すると、他の口座もすべて使えなくなっていた。
女性は同会にヤミ金の被害を相談し、給料が手渡しされる日払いの仕事をしながら借金を完済した。だが、今でも口座を開設できず、生活は安定しないという。
出典:被害者に口座凍結トラブル相次ぐ ヤミ金対策が裏目に 支援団体、国に申し入れへ – 産経WEST
4.海外での生活に使うと判断された
これは、審査の不要なデビットカードであっても注意したい点です。租税回避の防止、国際テロ組織などの反社会団体への資金流出の防止の観点から、海外に住んでいる日本人が日本の銀行口座を使いつつづけることは、極めて難しくなっています。2019年12月現在、ネット銀行のほとんどが「非居住者の預金口座の利用はできない」と規約に明言しているのが現状です。
第1条 預金口座取引
1.当社と預金口座取引が行えるお客さまは、日本国内に居住し、税法上の居住地国が日本のみである満15歳以上の個人、もしくは日本国内の事業者であり納税義務のある国が日本である法人事業者(個人事業者および日本国内において登記された法人事業者で、日本国外に本店または主たる事業所を有する事業者を除く)のうち当社が認めた先に限らせていただきます。
非居住者とは
- 日本国内に住所または1年以上居所を有しない
- 1年以上国外に居住する必要があると推測される
- 契約等により日本国外での勤務時間が1年以上または未定
のいずれかに当てはまる人のことです。
そのため、仮にネット銀行で銀行口座を開設し、デビットカードを使おうとした場合でも、何等かの理由で「海外での生活に使う」と判断されたら、銀行口座の開設も、デビットカードの利用もできない可能性が出てきます。
5.本人確認書類に不備がある
最近では、オンラインでの口座開設を受け付けている銀行も増えてきました。ネット銀行はもちろんのこと、昔からある店舗型銀行でも、決して珍しい手続きではありません。
しかしそれだけに、本人確認書類に不備があるなどの理由で
- 銀行口座が開設できない
- 開設にこぎつけるまで遅れる
こともありうるのです。
デビットカードの審査に落ちないために気を付けるべき5つのポイント
それでは、デビットカードの審査に落ちない、発行ができないのを避けるためには、どういう点に注意すればよいのでしょうか。ポイントをまとめました。
1.審査があるかどうかを見極める
デビットカードであっても「残高不足の場合に立て替える」サービスが付帯している場合は、審査=与信審査が必要になります。自分が作ろうとしているデビットカードが、審査が必要かどうかは、必ず確認しましょう。
確認する方法ですが、一番簡単なのは、デビットカードの商品概要書を読むことです。
こちらは、イオンデビットカードの商品概要書ですが、審査の有無についても記載があります。
・バックアップサービス付のカード商品となりますので、新規加入時および更新時には当行所定の審査を
行います。審査の結果、お取扱ができない場合もありますのでご了承願います。
2.海外での生活に使う場合はメガバンクを選ぶ
海外で1年以上生活する予定があるなど、非居住者に該当する可能性が高い場合は、メガバンクでデビットカードを作るようにしましょう。非居住者向けのサービスを別個に設けているので、海外にいながらにして日本の銀行口座も、デビットカードも問題なく使えます。
海外でデビットカードを使っている人のリアルな体験談は、こちらから読めます!
また、ソニー銀行でも、日本を出国する前であれば、日本国内での連絡先となる人を指定することで、銀行口座を利用することが可能です。当然、デビットカードである「Sony Bank WALLET」も利用できます。
3.本人確認書類は期限通りに所定のものを出す
銀行口座が開設できない、開設できても非常に時間がかかる、というトラブルを避けるためには
のが非常に重要です。
- 本人確認書類として使えるものかを確認する
- 使えるものであっても、発行日の規定がある場合は満たすものを使う
- アプリで画像を取り込む際は不鮮明にならないよう気を付ける
など、細心の注意を払いましょう。
4.トラブルを起こしたことがある銀行は選ばない
銀行口座の凍結ほど深刻なトラブルでなくても、銀行とトラブルを起こしたことがある場合は注意が必要です。
銀行に関連するトラブルで考えられるのは
です。
一見、銀行口座の開設とは何も関係がないように思えますが、銀行側も、トラブルを起こしたことがある事例および顧客の情報を、社内で共有しています。クレーム対応の状況も把握しているため、経過次第では「新規の取引を断るのが妥当」という結論を出すこともあるのです。
銀行口座の開設を断られたとしても、銀行側は断るに至った理由を開示しないのが一般的となっています。そのため、銀行口座の開設を申し込んでも、トラブルを起こしたことがあるのを理由に、断られるのは十分に考えられるでしょう。
5.自宅から遠い支店には行かない
銀行口座が開設できないという意味では「自宅から遠い支店に行き、窓口で口座開設をしようとした」場合も、断られる1つの要因になるので注意しましょう。
金融庁は、振り込め詐欺などの金融犯罪の防止のため、銀行をはじめとした金融機関に対する監督を強化しています。その一環として、銀行口座の開設にあたり「自宅から遠い支店で銀行口座を作ろうとしていないか」もチェックされるのです。
このため
- 職場から近い
- 将来Uターンをする予定がある
などの特別な理由がある場合を除き、自宅から離れた支店で手続きをするのは、あまり得策ではありません。
まとめ
デビットカードの「審査なし」というのは、どちらかといえば「与信審査を行わない」という意味でとらえられがちです。確かに銀行口座さえあれば、ほとんど問題なく作れてしまうのが、デビットカードのメリットです。しかし、銀行口座が作れない、という状況も確かに存在します。