商品を購入したあとに、何等かの理由があってキャンセルしたり、返品をしたりすることは、そう珍しいことでもありません。クレジットカードの場合は、決済の取り消しを行い、その月もしくは翌月以降の請求額から差し引くのが一般的な対応です。しかし、デビットカードの場合はどうなるのでしょうか?
この記事では
- デビットカードのキャンセルと返品の基本
- 注意が必要な4つのケース
の2テーマに分けて、デビットカードを利用した際のキャンセルについて解説しましょう。
デビットカードでのキャンセルと返金の基本
最初に、デビットカードを利用して商品・サービスを購入した後、何等かの理由でキャンセルした場合に、どのような流れで返金処理が行われるのかについて見てみましょう。
基本的な流れ
こちらの図を見てください。
これは、デビットカードを使って商品・サービスを購入した後にキャンセルをし、その後、デビットカードに登録された銀行口座に返金が行われるまでの流れを示したものです。大まかな流れは、以下の通りとなります。
- 店舗でデビットカードを利用する
- 店舗が伝票(利用日と利用情報)を起票する
- 銀行に伝票が到着する
- 銀行の入出金明細に利用状況が反映される
- 店舗で商品等のキャンセルをする
- 店舗が伝票を取消す
- 銀行にキャンセル情報(伝票の取消)が到着し、お客さまの口座へ返金を実行される
- 入出金明細が更新される
ここで注意したいのは「自分がキャンセルしたとしても、店舗が必要な手続を行わなければ、返金はされない」ということです。
ここから先は、注意が必要なケースとして
- 二重引き落としが発生している
- キャンセルしたにも関わらず返金されない
- 外国で利用した分について為替差益・差損が生じた
- デポジットの支払いに使った
- 商品を購入できるほどではなさそうな少額の引き落としがある
の5つを解説しましょう。
注意が必要な5つのケース
1.二重引き落としが発生している
デビットカードを使って商品・サービスを購入し、その後キャンセル処理を行った場合、既にキャンセル分の購入代金は返金されていたにも関わらず、再び引き落とし手続が行われることがあります。なぜ、このようなことが起こるのでしょうか?
二重引き落としが発生する理由
二重引き落としが発生する理由を一言でまとめると
です。この場合、銀行はデビットカード会員の銀行口座から再度、利用分の引き落としを行うことになります。
返金までにかかる時間は銀行による
実際に返金されるまでにかかる時間は、銀行によってまちまちです。一度規定を確認するといいでしょう。
購入をキャンセルし代金が普通預金口座へ返金された後、まれにショップから当社へご利用確定通知が到着することがあります。
その場合、当社はお客さまの普通預金口座から再度代金を引き落としいたします。
その後、ショップから当社へ返金依頼が到着次第(原則翌営業日までに)口座へご返金します。2回目の引き落としの際に、残高が不足していた場合、ご入金依頼のお電話・メールを差し上げることがございますが、ご了承ください。
出典:キャンセルと返金|Visaデビットカード|PayPay銀行
2.キャンセルしたにも関わらず返金されない
デビットカードを使って商品・サービスを購入し、その後キャンセルする場合は、店舗側で次の2つの処理を行わないといけません。
- 商品・サービスのキャンセル処理(売上の取り消し)
- デビットカードを使った客に対する返金処理
そして、1については問題なく行われていても、2を店舗の担当者が忘れていた場合、いつまで経っても返金されないという事態が起こりうるのです。
店舗に問い合わせが必要
具体的に、いつ返金されるのかについては、銀行や店舗によって、多少の差はあります。例えば、楽天銀行の場合、ケースごとの返金のタイミングの目安は、以下の通りです。
カードのご利用日当日または翌日でのキャンセル | カードのご利用から2日以上経過してからのキャンセル | |
---|---|---|
店舗でのご利用 インターネット・通販等でのご利用 |
数日内に返金されます | 1~2週間後に口座に返金されます |
また、三菱UFJ銀行の場合、国際ブランドによっては最大で2カ月程度かかるとされています。
返金時期は加盟店の取扱方法等により異なりますが、VISAデビットは1ヵ月半程度、JCBデビットは2ヵ月程度かかる場合がございます
出典:【三菱UFJデビット】を利用した買い物をキャンセルした場合、口座に返金されるのはいつですか? | よくあるご質問 | 三菱UFJ銀行
いずれにしても、銀行側が目安として提示している期間を過ぎても返金がない場合は、店舗に問い合わせるとともに、銀行にも相談しましょう。
お客さまがショップに購入のキャンセルをした後、1週間以内にお客さまの口座に返金されない場合は、ショップが注文の取消処理だけをして、返金処理をしていないケースが想定されます。その場合は、出金日から60日後(出金日を含まず)に返金される仕組みになっています。
出典:キャンセルしたはずなのに、JNB Visaデビットの請求がきました。どうしたらいいですか。 | PayPay銀行
海外に問い合わせをする場合の英文例
海外の通販サイトを通じて商品・サービスを購入し、その後キャンセルしたときに、返金対応が遅い場合は、注意が必要です。自分から問い合わせをしないと動かないケースもあります。
まずは、メールを送ってみましょう。英語でメールを送る場合は、以下の文例を参考にしてみてください。
I cancelled my purchase via Visa debit, but have not yet received refund.
I request for you to process an authorization reversal (cancellation).
The details of my payment is as follows:
Order Number:______________
Order Date: ________________
Payment Amount: ___________
Name: ____________________
<対訳>
Visaデビットでの注文を取り消したのですが、まだ返金されません。
オーソリ取り消しをお願いします。
注文に関する情報は以下の通りです。
注文番号: ______________
注文日: ______________
金額: ______________
名前: ______________
出典:海外サイトでのJNB Visaデビットの購入で、注文をキャンセルしましたが、返金されません。問い合わせをする場合の英文例を教えてください。 | PayPay銀行
仮に、メールで連絡しても音沙汰がない場合は、専門機関に相談しましょう。国民生活センター越境消費者センター(CCJ)では、海外のオンラインショッピング利用上のトラブルにも対応してくれます。
- デビットカードの利用明細
- 海外のオンラインショッピング運営業者とのやり取り
- 利用した日時
など、証拠になるものは、あらかじめひとまとめにしておくのをおすすめします。
3.外国で利用した分について為替差益・差損が生じた
デビットカードは海外の実店舗はもちろん、オンラインショッピングでも利用可能です。この場合、利用するタイミングによっては、為替差益・差損が生じることがあります。仮に、支払いが終わったあとに為替差益・差損が生じた場合、その分の調整はどのように行われるのでしょうか。
為替レートの扱い
一般的に、デビットカードを海外の加盟店で利用した場合、利用額の日本円への換算は、支払い時点の為替レートで行われます。その後、Visa、JCB、Mastercardなどの国際ブランドが定める為替レートと差額があった場合、為替差損にあたるか、為替差益にあたるか次第で、以下のように処理が行われる仕組みです。
為替差損が生じた場合
為替差損とは、わかりやすくいえば「支払い時点の為替レートで計算した金額より、国際ブランドが定める為替レートで計算した金額の方が大きかったケース」です。
為替差損が生じていた場合は、再計算を行った後、不足額を追加で銀行口座から引き落とします。
為替差益が生じた場合
為替差益とは、わかりやすくいえば「支払い時点の為替レートで計算した金額より、国際ブランドが定める為替レートで計算した金額の方が小さかったケース」です。
為替差益が生じていた場合は、再計算を行った後、差額分の銀行口座への払い戻しが行われます。
4.デポジットの支払いに使った
国内外問わず、レンタカーやホテルを利用する場合、デポジット(保証金)を預けなくてはいけないことがあります。
商品・サービスの提供が終わった後に最終的な支払額が確定する、という性質上、デビットカードでのデポジットの支払いを受け付けていない場合が多いですが、中には受け付けてくれていることもあるのです。この場合の返金処理について、見てみましょう。
あまりに遅い場合は銀行に連絡を
返金のタイミングは、銀行や国際ブランドによって差があるのが実情です。
海外のホテルやレンタカーを利用する場合、宿泊費・利用料を含めた「デポジット(前受金)」を支払わなければならない場合があります。「デポジット」の支払方法は、ホテル・レンタカーによって異なります。
ホテルのチェックインやレンタカーご利用の際に、「Visaデビットカード」を利用すると、「デポジット」が引き落としされます。通常「デポジット」は、ルームサービスのご利用がない場合およびレンタカーの延長利用がない場合等には、宿泊費・利用料との差額が返金されます。なお、宿泊費・利用料のお支払いに本カードをご利用いただいた際の差額の返金はチェックアウト後およびレンタカー返却後、数日から2週間程度かかります。
出典:デポジットを支払った場合いつ返金されますか。 | PayPay銀行
なお、返金が遅いという理由で銀行に連絡する場合は、次の情報をまめてとおくといいでしょう。
- 利用したレンタカー会社、ホテルの名称(わかれば連絡先も)
- 利用した日時
- デポジットとして支払った金額
5.商品を購入できるほどではなさそうな少額の引き落としがある
デビットカードの利用明細をしっかり見てみると、時々50円や100円など、ごく少額の引き落としがあることに気づく人もいるかもしれません。このような「商品を購入できるほどではなさそうな少額の引き落とし」はなぜ起きるのでしょうか?
カードの有効性確認
「商品を購入できるほどではなさそうな少額の引き落とし」が起こる理由は、カードの有効性の確認を行うためです。つまり「このデビットカードは実際に使えるようになっているか」を確かめるために、あえて少額の金額の引き落としを行います。
有効性が確認できれば店舗側が返金処理を行いますが、万が一行われなくても、一定期間を経たあとに銀行側から返金されますので、安心しましょう。
まとめ
ここまでの内容を踏まえて「デビットカードよりはクレジットカードを使った方がいいケース」について、考えてみましょう。次の3つのケースについて説明します。
まず1つ目は「海外のオンラインショッピングサイトを使う場合」です。店舗側が返金処理に快く応じてくれればなんの問題もありませんが、オンラインショッピングの運営会社によっては、業務の進め方がかなりずさんな場合もあります。この場合、自分1人で返金交渉を行うのは至難の技になるはずです。語学力や交渉力によほどの自信があるなら別ですが、そうでないなら、クレジットカードを使ったほうが、心理的な負担は少ないでしょう。
2つ目は「自分が使っているのが返金までタイムラグがあるデビットカードだった場合」です。デビットカードを利用して購入したサービス・商品をキャンセルする場合、実際に返金までにかかる時間は、銀行によって差があります。短い所なら1~2週間もあれば返金されますが、長い所は最大で2カ月近くもかかるケースがあるのです。「長い時間待っているのが辛い」という人には、デビットカードはおすすめできません。
3つ目は「日本人観光客があまり行かない場所にいく場合」です。店頭での買い物の際も、オンラインショッピングの時と同様、トラブルがあった場合にどのように交渉を進めるかが、事態の解決ができるかどうかの別れ際になります。日本人観光客がよく訪れる場所なら、交渉も多少はしやすいかもしれませんが、逆もあり得るのです。