デビットカードを使う場合にも、クレジットカードと同様、暗証番号が求められるケースがあります。そして、暗証番号を万が一忘れてしまった場合、セキュリティ保持の観点から、かなり煩雑な手続きが必要になるので、注意しましょう。
この記事では
- デビットカードに暗証番号が必要な理由
- 暗証番号を忘れてしまった場合の対処法
- 忘れにくい暗証番号の決め方
について、解説します。
デビットカードに暗証番号が必要な2つの理由
デビットカードに暗証番号が必要となる主な理由は
- 実店舗での支払いに使うため
- 海外ATMでの現金引き出しに使うため
の2つです。
1.実店舗での支払いに使うため
スーパー、コンビニ、デパートなどで買い物をする際にも、国際ブランドが付帯しているデビットカードであれば、クレジットカードと同じように支払いに使えます。
その際
- 紙の伝票やタッチパッドにサインする
- 専用の端末にカードを通し、暗証番号を入力する
など、実際の支払いの流れは店舗によって異なります。
しかし、これからは後者の「専用の端末にカードを通し、暗証番号を入力する」方法が主流になるでしょう。
サインでの支払いができなくなりつつある理由
出典:ICカード取引の推進|カードセキュリティの基礎知識|安全・安心なクレジットカード取引への取組み|一般社団法人日本クレジット協会
前者の「紙の伝票やタッチパッドにサインする」方法ではなく、後者の「専用の端末にカードを通し、暗証番号を入力する」方法が主流になりつつある背景として、「偽造カード対策」が挙げられます。
紙の伝票やタッチパッドにサインする方法の、より具体的な流れは以下の通りです。
- クレジットカードを専用の端末に通し、磁気ストライプに記録された情報を読み取る
- 利用金額等の情報を確認した上で、クレジットカード会員がサインをし、決済が完了する
そして、この方法で使われる磁気ストライプは、スキミングの被害に遭いやすいという欠点があります。つまり、クレジットカードやデビットカードを読み取るための端末に「スキマー」という特殊な機械を仕掛け、情報を盗み取られる恐れがあるのです。
そして、スキミングにより盗み取った情報を用いて偽造カードを作り、クレジットカード・デビットカードの会員本人が知らないところで不正利用するという犯罪が多発していました。このような現状を受けて、2018年6月から施行された改正割賦販売法において、クレジットカード(デビットカードも含む)の100%IC化が目標として掲げられています。
クレジットカードの100%IC化を推進し、磁気ストライプカードから、偽造防止効果の高い「ICチップ」の付いたクレジットカードへの移行を進めます。販売店には、これを処理する端末を設置するなどの不正利用対策が求められます。
出典:クレジットカードを安全・安心に(METI/経済産業省)
外国ではICチップ付きが基本
既にヨーロッパでは、クレジットカードやデビットカードにICチップを付けることが義務化されています。一方、ICチップ付きのクレジットカードへの移行において、アメリカはヨーロッパにだいぶ遅れをとっていました。
しかし、アメリカ国内でカード情報の大規模な漏洩事件が頻発したことから、2014年10月に当時のオバマ大統領が「消費者金融取引のセキュリティ向上に関する大統領令」を発令し、クレジットカード・デビットカードのIC化に本格的に乗り出したのです。
この施策が功を奏し、アメリカ国内でもほとんどの店舗でICチップ付きのクレジットカード・デビットカードでの決済に対応した端末が導入されました。
2013年7月には、アメリカの企業から過去5年間に1億6,000万枚以上のクレジットカード情報を盗み、数億ドルの被害を与えたハッカーグループが起訴された。また、2013年末には、量販店大手の「ターゲット・コーポレーション」から4,000万枚のカード情報が漏えいしたことが判明した。これらの流出した情報をもとに、世界中で偽造磁気カードが作られ、電子商取引で不正な取引が多数発生した。
出典:キャッシュレス先進国を巡る 第6回 磁気カードの不正使用からの脱却とIC化を目指す―アメリカ|digital FIT
つまり、外国では「専用の端末にカードを通し、暗証番号を入力する」のが一般的であって、サインで決済ができている日本が特殊と言っても過言ではありません。2020年には東京オリンピックの開催も控えていることから、クレジットカードやデビットカードなど「キャッシュレス」の決済環境の整備が求められています。ICチップ付きのクレジットカードの普及も、ますます急速に進んでいくでしょう。
2.海外ATMでの現金引き出しに使うため
国際ブランドが付帯しているデビットカードであれば、海外の空港、商業施設、銀行などに設置されているATMを使い、現地通貨で現金を引き出すことができます。その際にも暗証番号が必要になるので、注意しましょう。
出典:Visaデビットカードの海外での使い方|Visaデビットカード|PayPay銀行
海外ATMからデビットカードで現金を引き出す場合の方法については、この記事で詳しく解説しています。
一定回数以上間違えるとどうなるか
海外ATMで現金を引き出す場合に限ったことではありませんが、暗証番号を忘れたからといって、あてずっぽうで番号を入力するのはやめましょう。
- 日本にいる間に暗証番号を確認しておく
- 万が一に備え、デビットカード・クレジットカードは複数持ち歩く
など、自分でできる対策を講じるのをおすすめします。
暗証番号を忘れた場合の対処法
万が一、暗証番号を忘れてしまい、思い出せそうにない場合はどうすればいいのでしょうか。大まかな流れとして
- 銀行に連絡する
- 暗証番号を変更する
の2つについて解説します。
1.銀行に連絡する
最初にやるべきことは、銀行に連絡することです。
電話またはWebから手続きをする
デビットカードの暗証番号を忘れた場合、どのよう手続きを進めるかは、銀行・国際ブランドによっても差があります。例えば、三菱UFJ銀行の場合、以下のように手続きが決められているのです。
暗証番号をお忘れの場合
[VISAデビット]
必ずカード名義人ご本人さまよりデビットデスクまでご連絡ください。 暗証番号通知書(郵送)にて回答いたします。お電話でのご回答はいたしかねます。
通知書のお届けまでに1週間~10日程度かかります。
デビットデスクお問い合わせ画面へ
住所変更のお届けがお済みでない場合は受付できません。住所変更手続についてくわしくは こちら。[JCBデビット]
JCBデビットをお持ちのお客さまは会員専用WEBサービス「MyJCB」から暗証番号通知書のお申し込みが可能です。
[JCBデビット]MyJCB 新規登録・ログイン画面へ
会員専用WEBサービスをご利用いただけない場合は、上記[VISAデビット]と同様のご案内となりますのでご参照ください。
出典:【三菱UFJデビット】の暗証番号を忘れたので、教えて欲しい(暗証番号を変更したい) | よくあるご質問 | 三菱UFJ銀行
回答までには時間がかかる
手続きがわかったとしても、注意すべきことが1点あります。電話での連絡であっても、Webからの連絡であっても、その場で暗証番号を教えてもらえるわけではありません。
具体的にどれだけ時間がかかるかは銀行によってまちまちですが、通知書の郵送により暗証番号を教えてもらうことになるため、1週間から10日程度は時間がかかります。
暗証番号の照会自体ができないケースもある
また、銀行によっては、暗証番号を忘れた場合であっても、照会=問い合わせて教えてもらうこと自体ができない、としているケースもあります。このような扱いをしている銀行の場合、暗証番号を忘れた時点で、カードの再発行をしなくてはいけないので注意しましょう。
会員がデビット用暗証番号を失念した場合においても、当行は、事由の如何を問わず、当該暗証番号の照会に回答することはできないことを会員は異議なく承諾するものとします。会員がデビット用暗証番号を失念した場合、第16条の規定によりカードの再発行手続を行わなければならないものとします。
出典:楽天銀行デビットカード規定 | ご利用規定 | 楽天銀行
2.暗証番号を変更する
デビットカードで支払いをしたり、海外ATMから現金を引き出したりする場合は、暗証番号の入力が必要です。しかし、セキュリティの関係上、入力間違いの回数が一定以上になると、そのデビットカードは使えなくなってしまいます。
カードの再発行が必要
デビットカードが使えなくなってしまった場合、暗証番号の変更が必要です。そして、デビットカードの暗証番号は、カード本体に内蔵されているICチップに記憶されています。このため、暗証番号を変更する場合は、カード自体を交換しなくてはいけません。
なお、再発行の際に必要なものや具体的な手続きは、銀行により定められているので、それに従いましょう。
暗証番号を変更する場合・暗証番号の入力相違によりカードが利用できなくなった場合
新しい暗証番号でのカード再発行が必要です。当行本支店窓口にお越しください。新しい暗証番号のカードは1週間~10日程度でお届けします。
《窓口にお越しの際にお持ちいただくもの》
本人確認資料
デビットカード
キャッシュカード または 通帳
お届印
出典:【三菱UFJデビット】の暗証番号を忘れたので、教えて欲しい(暗証番号を変更したい) | よくあるご質問 | 三菱UFJ銀行
暗証番号を忘れないための2つのポイント
デビットカードに限らず、暗証番号を忘れると、何かと面倒なのは間違いありません。忘れてしまった場合でも対処のしようはありますが、まずは忘れないように注意するのが先でしょう。
そこで、暗証番号を忘れないための工夫として
- 忘れにくい番号にする
- 別の場所に控えをとっておく
の2つについて、詳しく解説します。
1.忘れにくい番号にする
驚異的な記憶力を誇る人でもない限り、意味のない番号を長期間覚えているのはかなり難しいです。やはり、番号自体に意味があったほうが長期間覚えていられるでしょう。では、番号自体に意味を持たせるにはどうすればいいのでしょうか?
自分の誕生日や電話番号の一部はNG
大前提として「自分の誕生日や電話番号の一部など、容易に推測される番号は避ける」ことを頭に入れておきましょう。銀行によっては、これらの番号を暗証番号として使うのを認めていないケースもあります。
例として、楽天銀行のデビットカード規定を紹介しましょう。
第5条(暗証番号)
(中略)
3.会員は、デビット用暗証番号を新規登録または変更する場合、「0000」、「9999」等の同一数字全桁または自己の生年月日、電話番号等容易に想像できる番号は設定しないものとします。
出典:楽天銀行デビットカード規定 | ご利用規定 | 楽天銀行
また、規約で明言されていなくても、推測されやすい暗証番号として考えられるものも紹介しておきます。
車のナンバー
自家用車を持っている場合、ナンバープレートの4桁の数字を暗証番号にしてしまう人もいるかもしれません。
しかし、自家用車は自宅以外の駐車場に停めることもある以上、誰にナンバープレートを見られているかはわかりません。心無い人が見た場合、暗証番号として見抜かれてしまう可能性も0ではないので気を付けましょう。
住所の一部
マンションの部屋番号など、住所の一部を暗証番号にするのもおすすめできません。
万が一、デビットカードと運転免許証など、住所が記載されている個人確認書類を一緒に紛失してしまった場合、見抜かれてしまう可能性があります。
万が一、暗証番号を見破られたらどうなる?
デビットカードの暗証番号については、銀行が利用規約で「容易に推測できる番号は使わない」ことを呼び掛けているケースがほとんどです。
しかし、このようなチェックをすり抜けてしまった状態で推測しやすい暗証番号が設定され、不正利用につながった場合、補償は受けられるのでしょうか?
仮に、「デビットカード会員側に過失がある=落ち度がある」と判断された場合、補償が受けられないので注意しましょう。
第3条 補償が行われない主な場合
1.第1条の規定にかかわらず、次に掲げる損害に対しては補償は行われません。
(ア)お客さままたはお客さまの法定代理人の故意もしくは過失または法令違反に起因する損害
出典:楽天銀行デビットカード盗難補償規定 | ご利用規定 | 楽天銀行
覚えやすくて推測されにくい番号の例
推測されにくい、という意味では、暗証番号を「自分にちなんだ数字」ではなく「自分の周囲の人にちなんだ数字」にするのがおすすめです。
例えば
- 恋人、家族の誕生日
- 結婚記念日
- 恋人、家族の携帯電話番号
などがこれにあたります。
中には
という人もいるかもしれません。
そんな人におすすめの方法が
- 好きな芸能人の誕生日
- 好きな歴史の年号(例:1867年→大政奉還)
- 勤務先の証券コード(例:三井住友フィナンシャルグループ→8316)
など、自分が関心を持てるものにちなんだ数字を使うことです。
2.別の場所に控えをとっておく
原始的な方法ですが、暗証番号を設定したらどこかに書き留めておくのをおすすめします。
例えば
- 銀行、クレジットカード会社の名前
- カード番号
- 暗証番号
- 紛失した際の連絡先(コールセンターの番号など)
を一覧表にして整理しておくと、すぐに確認できて便利です。
絶対にカードと一緒に保存しないこと
ただし、この方法を行う際には、絶対にカードと一緒に保存しないのが大事です。カードと一緒に一覧表を紛失してしまった場合、情報が漏れだしてしまいます。
- 家の中で保管する場合は、鍵の閉まる場所(金庫など)に入れる
- 旅行に行くために持ち出す場合は、カードとは別に持ち歩く
など、工夫をしましょう。