

コンビニエンスストア(以下、コンビニ)でも、クレジットカードの支払いができる店舗であれば、デビットカードもほぼ問題なく使えます。しかし、使う際の流れや使えない取引には、注意する必要がありそうです。また、近年急速に普及してきたモバイル決済でも、デビットカードからチャージをしたり、デビットカードの情報を登録したりして、支払いに利用することができます。
そこで、この記事では
- コンビニでデビットカードは使える?
- コンビニでデビットカードを使う際の流れ
- モバイル決済と連携してデビットカードを使う際の流れ
- コンビニでデビットカードを使う際の5つの注意点
という観点から、コンビニでのデビットカードの利用について、詳しく解説しましょう。
コンビニでデビットカードは使える?

最初に、そもそもコンビニでデビットカードは使えるのかについて、解説しましょう。
大手チェーンなら問題なく使える
コンビニでも「大手チェーン」として扱われる以下のチェーンなら、デビットカードが使えます。
- セブン-イレブン
- ファミリーマート
- ローソン
- ミニストップ
- スリーエフ
- ポプラ
参照:ファミマとローソンが追い上げ、セブンのひとり勝ちにストップ/コンビニ6社・2020年2月期中間決算|食品産業新聞社ニュースWEB
これらのチェーン店では、クレジットカードでの支払いを受け付けているためです。
個人経営の場合はその店舗次第
特に地方部に多く存在しますが、個人経営のコンビニの場合は、その店舗の対応状況次第と言わざるを得ません。デビットカードどころか、クレジットカードも受け付けていないところも多々あるためです。
しかし、2019年10月から開始された「キャッシュレス・消費者還元事業」により、それまでキャッシュレスの導入に消極的だった個人経営の店舗であっても、クレジットカードをはじめとした決済用端末の導入に踏み切るところも増えてきました。
モバイル決済と連携して使うことも可能
サービスごとに対応状況に差はありますが、モバイル決済と連携してデビットカードを使うことも可能です。連携といっても、より具体的には
- チャージ:デビットカードを支払い元とし、モバイル決済の残高を積み増す
- 登録:デビットカードの情報をモバイル決済のアプリに登録した上で、(デビットカードの実物を用いず)支払いを行う
の2つに分けられます。
コンビニでデビットカードを使う際の流れ
ここで、コンビニでデビットカードを使う際の基本的な流れを解説しましょう。
- レジで「クレジットカードで」と伝える
- 端末にデビットカードを差す
- 待っていれば決済が完了する
の3ステップについて、解説します。
1.レジで「クレジットカードで」と伝える
買いたい商品が決まったら、まずはレジに行きましょう。自分の番が回ってきたら、店員に「クレジットカードで」と伝えてください。
デビットカードと伝えないほうがいい理由

国際ブランドが付帯したデビットカードを使う場合であっても「クレジットカードで」と伝えたほうがいい理由は、次の3つです。
- 会計上、デビットカードとクレジットカードは同一に扱われるため
- 店員がJ-Debitと誤解した可能性があるため
- 店員がデビットカード自体を知らない可能性もあるため
まず、1についてですが、デビットカードであっても、国際ブランドが提供する決済網を使い、決済を行うのは変わりありません。そのため、会計上はデビットカードとクレジットカードは同一に扱われています。この実態を考えると「クレジットカードで」と伝えても何ら問題はないでしょう。
また、2と3についてですが、国際ブランドが付帯したデビットカードが日本の銀行で発行されるより前に、「J-Debit」というシステムが始まっています。これは、簡単に言うと「銀行のキャッシュカードを使って、加盟店で買い物ができる」システムです。
店員によっては、「デビットカード」というと「J-Debit」を思い浮かべてしまうこともあるため、スムーズな意思疎通ができない恐れがあります。
Q.楽天銀行デビットカードを使い、お店で「デビットで」と伝えて決済しようとしたらできませんでした。
A.回答
決済いただけなかった理由として、以下の可能性があります。店舗側で「J-Debit(ジェイ・デビット)」サービスと間違って認識されたため。
「JCBデビットまたはVisaデビット」は「J-Debit」サービスとは異なります。「支払はカードで」とお伝えされた場合、「J-Debit」サービスと間違って認識される場合があります。「支払はJCBまたはVisaで」とお伝えいただくことをお勧めします。
出典:楽天銀行デビットカードを使い、お店で「デビットで」と伝えて決済しようとしたらできませんでした。| よくあるご質問|楽天銀行(個人のお客様向け)
2.端末にデビットカードを差す
店員にクレジットカード払いをすることを伝えたら、デビットカードを端末に差すよう促されます。指示に従い、差しましょう。
タッチ決済が使えることも
また、ローソンなど、一部のコンビニでは「タッチ決済」といって、デビットカードを端末の所定の部分に近づければ、それだけで決済が完了するシステムが取り入れられています。デビットカードの中でも、国際ブランドとしてVisaが付帯しているものの一部で利用可能です。

3.待っていれば決済が完了する
端末の所定の部分に入れる、もしくは近づければ、決済の手続きに入ります。何も問題がなければ、決済完了です。
暗証番号の入力を求められる場合もある
どこのチェーンを利用するかにもよりますが、コンビニで買い物する場合であっても、一定の金額以上の場合は、暗証番号の入力を求められる場合があります。大手チェーンごとに「暗証番号の入力(もしくはサインの記入)が必要になる金額」を調べました。
ローソン | 10,000円以上 |
---|---|
セブン-イレブン | 10,001円以上 |
ファミリーマート | 10,000円以上 |
ミニストップ | 10,000円以上 |
スリーエフ | 10,000円以上 |
ポプラ | 10,001円以上 |
モバイル決済と連携してデビットカードを使う際の流れ


近年普及してきたQRコード決済、非接触IC決済などのモバイル決済でも、デビットカードを連携して使うことはできます。


QRコード決済 | 専用端末を用いず、所定のQRコード、バーコードを読み取って決済する方法。代表的なサービスはPayPay、LINEPay、楽天ペイなど。 |
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非接触IC決済 | ICチップを搭載したスマートフォン、もしくはプラスティック製のカードに情報を登録し、専用端末にかざして決済に用いる方法。代表的なサービスは、Apple Pay、Google Pay。プラスティック製のカードが発行される電子マネー(楽天Edy、Suica等)もここに含まれるが、特にスマートフォンを用いて行うものを「スマートフォン(スマホ)決済」と呼ぶ場合がある。 |
1.対応しているデビットカードかを確認する
モバイル決済でデビットカードを使う際に、最初にやるべきなのは「そのデビットカードを使えるかどうか」を確認することです。サービスによって、デビットカードの扱いは
- デビットカード自体が使えない
- 特定の国際ブランドしか使えない
- 特定の銀行かが発行されたものしか使えない
など、かなりばらつきがあるので、商品説明書やWebサイトなどで確かめましょう。
使えないケースの具体例
例えば、楽天ペイの場合、デビットカードの扱いは、付帯している国際ブランドによって差があります。
アプリ決済では、VISA・Masterのデビットカード、プリペイドカードが利用できます。
なお、J-Debit カードは、ご利用いただけません。
出典:デビットカード、プリペイドカードは使えますか? | 楽天ペイ(実店舗決済)加盟店様向け: よくある質問
また、Google Payの場合、国際ブランドとしてVisaが付帯していても、2019年12月の時点では、特定の銀行から発行されたものしか使えません。
Google Payへの対応は、PayPay銀行、ソニー銀行、三菱UFJ銀行、りそな銀行、埼玉りそな銀行、関西みらい銀行が発行するVisaデビットカードが対象となります。
出典:Visaデビットカードが「Google Pay”!」に対応 | Press Release | Visa
チャージ(入金)、登録手続きを行う
自分が使っているデビットカードが対応していることがわかったら、次はモバイル決済とデビットカードの連携を行いましょう。専用のアプリから設定を行うパターンがほとんどです。
この際、注意すべきことが1点あります。
チャージ(入金)とは
チャージとは、デビットカードを使って、モバイル決済に入金することを指します。

登録とは
登録とは、モバイル決済の専用アプリにデビットカードの情報を登録することを言います。専用アプリを使えば、国際ブランドの加盟店(例:Visaが使える店舗)での支払いが、実物のデビットカードがなくてもできるようになるのです。
3.実際にコンビニに行って買い物をする
設定が済んだら、実際にコンビニに行って買い物をしましょう。
主要サービス別・デビットカードへの対応状況
2019年12月現在のデータにもとづき、モバイル決済の主要なサービスについて、デビットカードの対応状況をまとめました。

- デビットカードの利用の可否
- チャージ
- 登録
- 利用できる国際ブランド
楽天ペイ
- デビットカードの利用の可否:可能
- チャージ:可能
- 登録:可能
- 利用できる国際ブランド:Visa、Mastercard
PayPay
- デビットカードの利用の可否:可能
- チャージ:不可
- 登録:可能
- 利用できる国際ブランド:Visa、Mastercard
LINE Pay
- デビットカードの利用の可否:可能
- チャージ:不可
- 登録:可能(ただし、利用はLINEサービス内のみ)
- 利用できる国際ブランド:Visa、Mastercard
au PAY
- デビットカードの利用の可否:可能
- チャージ:可能
- 登録:不可
- 利用できる国際ブランド:Visa、Mastercard、JCB(ただし、発行会社により対応していない場合あり)
d払い
- デビットカードの利用の可否:可能
- チャージ:可能
- 登録:不可
- 利用できる国際ブランド:Visa、Mastercard、JCB(ただし、3Dセキュアを導入している必要あり)
Origami PAY
- デビットカードの利用の可否:可能
- チャージ:不可
- 登録:可能
- 利用できる国際ブランド:Visa、Mastercard(ただし、発行会社により対応していない場合あり)
メルペイ
- デビットカードの利用の可否:不可
- チャージ:不可
- 登録:不可
- 利用できる国際ブランド:-
QUIC Pay
- デビットカードの利用の可否:可能(QUIC Pay+として)
- チャージ:可能
- 登録:不可
- 利用できる国際ブランド:JCB
iD
- デビットカードの利用の可否:可能
- チャージ:可能
- 登録:不可
- 利用できる国際ブランド:Visa、Mastercard
Apple Pay
- デビットカードの利用の可否:可能
- チャージ:不可
- 登録:可能
- 利用できる国際ブランド:JCB(ただし、みずほ銀行が発行したもののみ)
Google Pay
- デビットカードの利用の可否:可能
- チャージ:不可
- 登録:可能
- 利用できる国際ブランド:Visa(ただし、PayPay銀行、ソニー銀行、三菱UFJ銀行、りそな銀行、埼玉りそな銀行、関西みらい銀行が発行したもののみ)
コンビニでデビットカードを使う際の5つの注意点

最後に、コンビニでデビットカードを使う際の注意点として
- 使えない取引がある
- J-Debitは使えない
- ICチップ、磁気ストライプが傷んでいると使えない
- 銀行残高が足りないと使えない
- 曜日、時間帯によっては使えない
の5つについて解説しましょう。
1.使えない取引がある
デビットカードをコンビニで使う場合、取引の性質上、使えない取引があることに注意しましょう。
ここでは代表的な例を紹介します。
タバコ、金券類など換金性の高いもの
- タバコ
- 各種ギフトカード
- 各種プリペイドカード
など、換金性の高いものを購入する際には、デビットカードは使えません。
公共料金、携帯電話代金
コンビニで
- 電気料金
- 水道代
- ガス代
などの公共料金や、月々の携帯電話代金を支払う場合も、デビットカードは使えません。
自治体のごみ処理券
自治体によっては、家庭の粗大ごみやオフィスで出たごみ(事業性のごみ)を出す際に、所定のごみ処理券を購入する必要があります。
このようなごみ処理券を購入する際も、デビットカードは使えません。
収納代行
ほとんどのコンビニが、収納代行サービスを利用する際の支払い手段は現金のみと決めています。

収納代行とは、コンビニが他社に代わって代金の集金を行う代わりに、見返りとして手数料(収納代行手数料)を得ているものです。ここで、仮に収納代行サービスを利用する際の支払い手段としてクレジットカードを使われてしまうと、コンビニ側がクレジットカード会社側に手数料を支払わないといけなくなります。
つまり、クレジットカード会社に支払う手数料が収納代行手数料を上回るおそれもあるのです。コンビニ側としては、制限なく収納代行サービスの利用において、クレジットカード払いを受け付けるのは、経営上の大きなリスクになりえます。
テレホンカード類、バスカード・各種乗車券・回数券、各種商品券、QUOカード、切手・ハガキ、・印紙、一部のLoppi取次サービス、公共料金・収納代行票でのお支払は現金のみとさせていただいております。
2.J-Debitは使えない

近年は、各地の銀行により国際ブランドが付帯したデビットカードが盛んに発行されるようになってきました。それ以前に用いられていたのがJ-Debitです。
大手コンビニは加盟していない
しかし、J-Debitはコンビニでは使えません。公式ホームページには、J-Debitの加盟店が一覧で掲載されていますが、大手コンビニチェーンは掲載されていないのです。
理由の1つとして考えられるのは「24時間決済に対応していないこと」でしょう。J-Debitの場合、どこの金融機関のキャッシュカードを使うかにもよって異なりますが、曜日や時間帯によっては使えないことがあります。

出典:J-Debitナビ | 金融機関検索
これは、銀行などの金融機関のシステムがオンラインである時間帯に関係しています。つまり、金融機関のシステムが稼働していないときは支払いもできないため「24時間いつでも開いている」コンビニのような業態では、スムーズな支払い手段として使うのは難しいでしょう。
なお、J-Debit では、代金がリアルタイムに即時引落しされることから、その利用は従来、金融機関のオンラインシステム運用時間帯(日中)に制約されており、このため、夜間や早朝における利用者ニーズの充足が難しかった。
出典:日本銀行決済機構局「最近のデビットカードの動向について」
3.ICチップ、磁気ストライプが傷んでいると使えない
コンビニに限ったことではありませんが、デビットカードにはICチップ、磁気ストライプなどの部品が組み込まれています。これらの部品が何等かの理由で汚損、破損していた場合は、端末での正常な読み取りができなくなるため、支払いもできません。
調子が悪いときは交換を
汚損、破損する原因としては
- テレビ、バッグやスマートフォンケースの留め具など、強い磁気を発するものの近くに置いてあった
- 水、ほこりがついてもそのままにしていた
- 他のカードと重ねて保存していた
- 角や固いものにぶつけてカードが曲がった
などが考えられます。これらの場合、デビットカードの発行会社に問い合わせれば、新しいカードを発行してくれるので、早めに対応しましょう。
4.銀行口座残高が足りないと使えない
デビットカードは「支払いを行った瞬間、紐づけられた銀行口座から即時に利用額が引き落とされる」仕組みのカードです。
他の決済方法との併用もできない

デビットカードで支払いを行う場合、銀行口座の残高が足りなかった場合、不足分を現金など他の決済方法を併用して支払うことはできません。理由は次の2つです。
- 「いくらまでならデビットカードで払えるのか」が店舗のレジではわからない
- 「払える分だけデビットカードで、残りは現金で」というように複数の決済方法を併用するのはオペレーション上の負担が大きい

5.曜日、時間帯によっては使えない
国際ブランドが付帯したデビットカードであっても、銀行のシステムメンテナンスのスケジュールなどの理由により、使えない曜日、時間帯が設けられている場合があります。
商品説明書で確認しよう
例えば、みずほ銀行が発行する「みずほJCBdebit」の場合、利用可能な曜日・時間帯は以下の通りです。
ご利用可能時間(日本時間)
月曜日0金曜日 24時間
土曜日 0時00分022時00分
日曜日 8時00分024時00分
*土曜日22時00分~翌日曜日8時00分、および毎月第1、第4土曜日3時00分~5時00分はご利用いただけません。
一方、三井住友銀行が発行する「SMBCデビット」の場合、利用可能な曜日・時間帯は以下の通りです。
24時間365日
※当行システムのメンテナンス時間帯(毎週日曜21時~月曜7時まで)もご利用が可能です。
出典:商品説明書
システムメンテナンス中にデビットカードが使えるかどうかは、銀行によっても扱いに差があります。

と疑問に思うなら、商品説明書を確認してみましょう。
商品説明書は、インターネットで「(銀行名) デビットカード 商品説明書」と検索すれば見られます。

まとめ
普段から、クレジットカードをコンビニで使っている人であれば、デビットカードを使って買い物をするのも、そう難しいことではありません。しかし、利用できない取引があったり、曜日や時間帯によっては使えなかったりと、「デビットカードならではの事情」を理解した上で使う必要があります。
日本において、デビットカードはクレジットカードと比較すると、やや普及が遅れている感があるのも事実です。しかし、無駄遣いを防げる上に、現金を持ち歩かなくていいというデビットカードのメリットは、もっと見直されてもいいでしょう。
