妻=奥さんが専業主婦だった場合、旦那さん=配偶者に万が一のことがあったり、自己破産したりしてしまうと、生活が一変してしまいます。また、残念ながら離婚してしまう場合も、大きく生活が変わるでしょう。
生活が変わる故に、いろいろなことに対処していかないといけませんが、その中で問題になることの1つが「これまで使ってきたクレジットカードの扱い」です。
そこで、今回の記事では
- 配偶者が死亡した
- 配偶者が自己破産した
- 配偶者と離婚することになった
場合に分けて、専業主婦のクレジットカードの扱いについて考えてみましょう。
専業主婦のクレジットカードにおいて配偶者の情報が重視される理由
本格的な話に入るより前に、なぜ専業主婦がクレジットカードを使うのに、配偶者の情報が大事になるのかを考えてみましょう。
配偶者の支払能力を前提にサービスが提供される
クレジットカード会社の扱いでは、専業主婦は外で働いていたり、在宅ワークをしていたりなど「給料や報酬の受け取りを伴う仕事をしていない」人とされています。そのため、年収も0円として扱われてしまうのです。
年収が0円であれば、本人には支払能力はないと考えられます。そのため、日々の生活費は配偶者の収入で賄っているのが実情です。このような実情が背景にあるため、クレジットカード会社が専業主婦に対してクレジットカードを発行する場合は、配偶者の支払能力に着目して、審査を行っているのです。
裏を返すと、配偶者が万が一のことになってしまったり、自己破産したりした場合や、配偶者と離婚することになった場合は、配偶者の収入はもうあてにできません。当然、クレジットカード会社も
- クレジットカードの利用の可否
- 利用限度額の引き下げ
を含めた判断を行うことになります。
配偶者が死亡、自己破産した事実はクレジットカード会社に発覚するか?
そもそも、配偶者=旦那さんが亡くなってしまったり、自己破産をしたりした事実が、クレジットカード会社に発覚してしまうことはあるのでしょうか?
申告しない限り発覚しない場合が多い
大前提として、クレジットカード会社の側から、会員(ここでは専業主婦である本人)の家族が死亡したり、自己破産したりした事実を、電話などによるヒアリングで調べることはまずありません。
ただし、専業主婦の人が配偶者と同じクレジットカード会社から発行されているクレジットカードを使っていた場合、配偶者が海外への出張中に急死したなどの理由で、海外旅行傷害保険に基づく保険金の請求を行った場合、社内でそのデータは共有されることになります。
家族カードの場合は発覚する
専業主婦の人がクレジットカードを使う場合
- 自分名義のクレジットカードを、自分名義の銀行口座を支払元として使う
- 配偶者のクレジットカードに家族カードを追加してもらって使う
のいずれかの方法によるはずです。前者の方法で利用していた場合は、あくまで自分からクレジットカード会社に伝えない限りは、配偶者が死亡したことや、自己破産したことは発覚しにくいのが事実でしょう。一方で、後者の方法で利用していた場合は、注意が必要です。
配偶者が死亡した場合、生前に取引があった銀行に対し、死亡した事実を伝え、相続に向けて手続きを開始します。そして、手続きが開始すると、葬儀費用として使うなど一部の例外を除いて、自由に銀行口座にあるお金は使えなくなってしまうのです。当然、クレジットカードの請求額の引き落としを実行することもできないはずです。
クレジットカード会社に亡くなった事実を知らせていなかったとしても、引き落としができなかった時点で調査を開始するので、いずれは発覚します。
一方、配偶者が自己破産した場合、家族カードの支払元として利用していた口座がある銀行との取引状況によって、扱いがやや異なるのが事実です。住宅ローンやその他のローンを利用していた場合は、自己破産の手続きを開始した時点で、銀行口座の残高をローンの残高と相殺することから、凍結されてしまいます。
また、自己破産したという事実は、クレジットカードの請求額の支払いに重要な影響を及ぼす事象として、個人信用情報にも記録されます。そのため、いずれにしてもクレジットカードおよび追加されていた家族カードが使えなくなるので、注意しましょう。
配偶者と離婚した事実はクレジットカード会社に発覚するか?
一方、配偶者と離婚して新しい人生を歩む場合、クレジットカードの扱いはどうなるのでしょうか。
名義、住所の変更を行うので発覚する
一般的に、離婚した場合は結婚する前の苗字に戻ることがほとんどです。
また、住む場所も変わる場合がほとんどなはずなので、住所変更の手続きをしないといけないでしょう。クレジットカード会社側からすれば、住所の変更はともかくとして、苗字の変更は相応の理由があると考え、チェックを行うはずです。このような事情があるため、離婚した場合は、クレジットカード会社にその事実が発覚する可能性は高いと考えていいでしょう。
現実的な扱いとしては、クレジットカード会社の利用規約には
- 会員情報(苗字、住所、婚姻状況も含む)が変更になった場合はすぐに届け出ること
- 届出を怠った場合、重要な利用規約違反として強制解約も含めた処分の対象となること
の2点が設けられています。このような実情も考えると、離婚した場合はできるだけ早めにその事実をクレジットカード会社に伝えた方が、トラブルにはなりにくいでしょう。
再審査の結果使えなくなることも
離婚した事実および名義、住所の変更をクレジットカード会社に伝えた場合、変更後の情報に基づき、再審査が行われます。審査の結果がどうなるかは、その時の状況次第ですが
- 利用限度額が大幅に下がってしまう
- 会員資格を更新できず強制解約になる
など、残念な結果に終わるケースもあることに、注意が必要です。
配偶者が死亡した場合の手続き
ここから先は、実際に行うべき手続きについて考えていきましょう。まず、配偶者が死亡した場合の手続きについて、解説します。
自分名義でクレジットカードを利用していた場合
自分名義のクレジットカードを、自分名義の銀行口座を支払元にして利用していた場合は、得に手続きをする必要はありません。
再就職した場合はその事実を伝える
配偶者が亡くなったことをきっかけに再就職し、継続して安定した収入が入ってくるようになった場合は、その事実をクレジットカード会社に伝えましょう。再就職により得られるようになった年収をもとに再審査が行われます。
家族カードを利用していた場合
配偶者が亡くなった場合、配偶者本人が使っていたクレジットカード(親カード)も家族カードも使えなくなってしまいます。以下の手順で、クレジットカード会社への手続きおよび携帯電話、電気、ガス、水道などの月額料金を支払っていた会社・団体への手続きを済ませましょう。
1.クレジットカード会社に連絡する
まずは、クレジットカード会社に連絡しましょう。配偶者本人が使っていたクレジットカードの裏に書いてある連絡先に電話をし「配偶者が亡くなったので、退会手続きをしたい」旨を伝えてください。適切な部署に電話をつないでくれるはずです。
2.クレジットカードの退会手続きを行う
クレジットカード会社の担当者より、死亡に伴う退会手続きについて、説明があります。その際、以下の公的書面の提出が必要になるので、あらかじめ用意しておきましょう。
- 戸籍謄本
- 住民票(除票)
- 死亡診断書
また、家族カードも含めたクレジットカードの利用残高の支払いについては、相続をどのように進めるかによっても扱いが異なります。
相続の種類 | 単純承認 | 限定承認 | 相続放棄 |
---|---|---|---|
意味 | 資産・負債ともに相続する | 受け継いだ資産の範囲内で、負債を引き受ける | 資産・負債ともに一切相続しない |
クレジットカード利用残高の扱い | 全部支払う | 一部支払わない部分もある | 全部支払わない |
ポイントは相続できない
クレジットカードを利用していた配偶者が亡くなった場合、クレジットカード会社のポイントが使われずに残っていることがあります。これらのポイントについては、相続できないとしているクレジットカード会社が多いようです。
第14条 (ポイントの譲渡の禁止) 本会員等は、付与されたポイントを他人に譲渡または質入したり、他人と共有したり、相続させることはできません。
マイルは相続できることも
一方、航空会社のマイルが貯まるクレジットカードを利用していた場合は、若干事情が異なります。航空会社によっても規約が異なるので確認が必要ですが、「マイルは相続できる」としている会社が多いのも事実です。例えば全日本空輸(ANA)の場合は、会員(配偶者)が死亡してから6カ月以内に所定の手続きを行えば、マイルを相続できることを利用規約で定めています。
21条 会員の死亡
会員が死亡した場合、法定相続人は、会員が取得していたマイルを、所要の手続きが完了した時点で有効な範囲で承継することができます。その際、当該法定相続人は、故人である会員のマイルの相続権を有することを証明する書類を弊社に会員の死亡後6カ月以内に提示する必要があります。相続の申し出が前記の期間内になされない場合は、当該会員の積算マイルはすべて取り消されます。
出典:ANAマイレージクラブ会員規約 | ANAマイレージクラブ
3.月額料金等の支払方法の変更手続きを行う
- 携帯電話、固定電話の料金
水道代、ガス代、電気代などの公共料金 - スポーツクラブの会費などの月謝
を配偶者名義のクレジットカードや家族カードで作っていた場合、支払情報の変更が必要になります。タイミングが遅くなると、支払いが滞ってしまうこともあるので、できるだけ早めに済ませましょう。
配偶者が自己破産した場合の手続き
次に、配偶者が自己破産してしまった場合の手続きについて解説しましょう。
自分名義でクレジットカードを利用していた場合
配偶者が死亡した場合と同様、自分名義のクレジットカードを、自分名義の銀行口座を支払元にして利用していた場合は、得に手続きをする必要はありません。
1.再就職した場合はその事実を伝える
また、配偶者が自己破産したことをきっかけに、家計を助けるために再就職をした場合は、その事実をクレジットカード会社に伝えましょう。結果として年収がアップすれば、それに伴って利用限度額が上がることもあるためです。
家族カードを利用していた場合
一方、家族カードを利用していた場合は、注意が必要です。
1.家族カードは強制解約になる
大前提として、配偶者が自己破産した場合は、っているクレジットカードがすべて強制解約されてしまいます。当然、配偶者が使っていたクレジットカードが強制解約されてしまうと、追加カードとして発行されていた家族カードも使えません。
2.月額料金等の支払方法の変更手続きを行う
- 携帯電話、固定電話の料金
- 水道代、ガス代、電気代などの公共料金
- スポーツクラブの会費などの月謝
を家族カードで作っていた場合、支払情報の変更が必要になります。タイミングが遅くなると、支払いが滞ってしまうこともあるので、できるだけ早めに済ませましょう。
3.再就職後に新しくクレジットカードを作る
家計を助けるために再就職した場合は、落ち着いたタイミングを見計らってクレジットカードを作りましょう。
配偶者と離婚する場合の手続き
配偶者と離婚することになった場合も、クレジットカードの扱いには注意する必要があります。済ませなければいけない手続きについて解説しましょう。
1.離婚届を出す前にクレジットカードを作っておく
実態はどうであれ、法的には、離婚届を出すまでは配偶者との婚姻関係は続きます。クレジットカードの申し込みにおいても、これは同じです。離婚の話が持ち上がったら、離婚届を出す前にできるだけ早く、クレジットカードを申し込んでおきましょう。
2.クレジットカード会社に氏名、住所変更の手続きを行う
離婚届を出して、免許証の書き換えや銀行口座の名義の変更など必要な手続きが終わったら、クレジットカード会社にも会員情報の変更として、氏名・住所を変更したい旨を伝えましょう。クレジットカードの裏に書いてある連絡先に電話すれば、適切な部署に電話をつないでくれます。
再就職をした場合はその旨を伝える
配偶者が死亡したり、自己破産したりした場合と同様、離婚がきっかけで再就職をした場合は、その旨を伝えましょう。伝えた際に
- 勤務先の名称
- 雇用形態
- おおよその年収
についても聞かれるので、すぐに答えられるようにしてください。
再審査の結果使えなくなる場合があるので注意
離婚により氏名、住所が変わるのは会員情報の変更に当たるため、クレジットカードの再発行に伴う再審査が行われるのが一般的な流れです。再審査の結果
- 従来より大幅に利用限度額が引き下げられる
- 会員資格を更新できず、強制解約になる
こともあるのに、注意しましょう。
3.月額料金等の支払い方法の変更手続きを行う
- 携帯電話、固定電話の料金
- 水道代、ガス代、電気代などの公共料金
- スポーツクラブの会費などの月謝
などをクレジットカードで支払っていた場合、クレジットカードの情報が変更になるので、支払情報も変更する必要が出てきます。手続きに時間がかかることもあるので、クレジットカード会社への届出が完了したら、なるべく早く着手しましょう。