還元率は驚異の25%。2020年夏からマイナンバーカード所持者へポイント還元率を実施。政府がここまでやる理由とは?

政府はマイナンバーカード(個人番号カード)の保有者に対し、民間事業者のキャッシュレス決済を通じ、買い物に使えるポイントを付与する制度を2020年9月をめどに始めることを明らかにしました。

マイナポイントとは?

マイナポイントとは?

出典:マイナンバーとは – マイナンバーカード総合サイト

政府はこの施策を「マイナンバーカードを活用した消費活性化策(通称:マイナポイント)」と名付けました。

施策の内容については

一定額を前払い等した者に対して、マイナンバーカードを活用したポイントである「マイナポイント」を国で付与するもの。

と定義づけています。

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これだけだとかなりわかりにくいので、詳しく説明しましょう。

マイナポイントとは?

マイナポイントとは、マイナンバーカードを申請・取得している人が、所定の手続きを行うことで付与されるポイントのことです。

実際は、マイナポイントを

  • ICカードにチャージすると一定額のプレミアムが付与される
  • QR決済アプリを使って買い物をすると、一定額のプレミアムが付与される

形で運用が行われます。

出典:マイナポイント

なお、新聞報道によれば

1人当たりの上限を最大5千円分とし、2万円を払えば2万5千円分のポイントを受け取れる案を軸に調整する。

出典:政府、マイナンバーにポイント付与 1人最大5000円  :日本経済新聞

とのことです。

仮にこれが実現すれば、ポイント還元率は25%にも上ります。

準備が必要なものは?

マイナポイントを受取るために必要なのは、次の2つです。

  1. マイナンバーカード
  2. マイキーID

出典:マイナポイントを活用した消費活性化策のご案内

マイキーIDの取得は、パソコンおよびICカードリーダライタから行います。AndroidのスマートフォンからもマイキーIDの取得を行うことも可能です。

2019年11月現在、iPhone(iOS)は未対応ですが、今後対応予定とのことです。

なお、この記事は2019年11月21日現在発表されている情報に基づき作成しております。

  • 対応するICカード、QRコード決済事業者
  • その他の詳細

は、随時発表されるとのことです。

詳細は、専用のWebページからもご覧いただけます!

ニュースに関する考察ーマイナンバーカードを持っているのは、〇人に1人?ー

今回の施策の目的として

  • キャッシュレス・消費者還元事業および東京オリンピック2020終了後の消費の冷え込み対策
  • マイナンバーカードの発行率の引き上げ

などが挙げられます。今回は後者の「マイナンバーカードの発行率の引き上げ」について考えてみましょう。

マイナンバーカードを持っているのは、8人に1人

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マイナンバーカードの発行率を引き上げたい、と言っているけど、そこまで低いんですか?

という疑問を持っている人もいるはずです。その疑問に答えるためのデータを用意しました。

これは、総務省がまとめたマイナンバーカードの発行数です。

区分 人口(H30.1.1時点) 交付枚数(H31.4.1時点) 人口に対する交付枚数率
全国 127,707,259 16,566,976 13.00%
特別区 9,396,597 1,679,322 17.90%
政令指定都市 27,445,782 3,831,387 14.00%
市(政令指定都市を除く) 79,815,668 9,900,565 12.40%
町村 11,049,212 1,155,702 10.50%

出典:総務省「マイナンバーカードの市区町村別交付枚数等について(平成31年4月1日現在)」

地区や年代によっても交付枚数率にはかなりの差があるので一概には言えませんが、日本全国で見ると

マイナンバーカードを持っているのは、8人に1人

という結論になります。

マイナンバーはなぜできた?

ここで、なぜマイナンバー制度が始まったのかについて考えてみましょう。この制度が生まれるきっかけになったのは、2007年に発覚した「消えた年金問題」です。

当時の社会保険庁(現:日本年金機構)が、国民が収めた年金の記録を住民票コードで管理できたにも関わらず、これを怠ったため、納付記録はあるものの持ち主がわからない5000万件の年金記録があることが発覚しました。

この問題がきっかけで、当時与党だった自民党は2007年7月の参議院選挙で大敗したのです。しかし、その後、民主党が与党となっても、過去の分にさかのぼり、個人情報と年金記録を照合する作業は進みませんでした。

その後、再び自民党が与党となった2013年に、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(通称:マイナンバー法)が成立したのです。国民1人1人に対し番号を割り当て、税・社会保障に関する情報を管理できるようにすることが目的の1つとされています。

住基ネット違憲訴訟とは?

実は、マイナンバー法が成立する前にも、税・社会保障に関する情報を管理する試みはなされていました。それが、住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)制度です。

地方公共団体と行政機関で個々の日本国民を特定する情報を共有・利用することを目的として構築され、市区町村の住民基本台帳に記録されている者(=日本国民)に11桁の住民票コードが割り当てられる形で運用されていました。

しかし、この住基ネットをめぐっては深刻な問題が発生しました。それが「住基ネット違憲訴訟」です。簡単にまとめると、住民基本台帳ネットワークシステムはプライバシー権を侵害し違憲だとして、自分の住民票コードの削除を求めた訴訟が日本各地で起きました。

なお、この訴訟は最終的に、「違憲ではない」という判決に終わっています。

この訴訟とともに、東京都国分寺市・中野区・杉並区、神奈川県横浜市など一部の自治体が、住基ネットからの離脱を表明するなど、情報の管理を全うできるとは言えない状況に陥ったのです。

総務省が発表したところによれば、平成27年=2015年の全国民に対する住基カードの発行率は、わずか約5.6%にとどまりました。

マイナンバーカードの発行状況が芳しくない背景にも、住基ネット違憲訴訟と同じく、プライバシー権の侵害の恐れがあるとする心理が働いているのかもしれません。

マイナンバーの本来の目的は?

もちろん、マイナンバーの本来の目的は、国民のプライバシーを侵害することではありません。本来は

  1. 公平・公正な社会の実現
  2. 国民の利便性の向上
  3. 行政の効率化

の3つを目的として導入されたものです。

一例として、首相官邸からは、マイナンバーカードを健康保険証として利用することにより

  • 医療の質の向上
  • 被保険者の利便性の向上

につなげる構想が明らかにされています。

参照:マイナンバーカードの普及とマイナンバーの利活用の促進に関する方針(案)

しかし、このような構想も、マイナンバーカードの普及率があまりに低くては、達成できそうにありません。

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今回のマイナンバーカードの発行によるポイント還元を通じて、「どのような社会になれば、暮らしやすいのか」を考えるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。

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