ガソリンスタンドを運営する石油元売り会社は、自社のガソリンスタンドの顧客に向けて、ガソリンの値引きなどが受けられる決済用のカードを発行しています。これが「ガソリンカード」です。
現在では、ガソリンカードはクレジットカード機能が付帯したものが主流になっています。このため「ガソリンカードはクレジットカードの審査に通らないと持てない」といった誤解がされがちです。
しかし、ガソリンカードの中には、現金払い専用のものや、プリペイドカード形式になっているものもあります。これらのタイプのものなら、クレジットカードの審査に通りにくい事情があった場合でも、問題なく持てるでしょう。
そこで今回の記事では、審査なしで作れるガソリンカードについて
- 基本的な知識
- 手に入れられるガソリンスタンドおよび入手方法
- メリット・デメリット
を解説します。
審査なしで作れるガソリンカードとは
既に触れた通り、現在、ガソリンカードにおいて主流になっているのは、ガソリンスタンドを運営する石油元売り会社と信販会社=クレジットカード会社が提携して発行している、クレジットカード機能が付帯したものです。
しかし、詳しくは後述しますが、これだと「クレジットカードを持てない何らかの事情」があった場合、持つことができません。このような場合に、他に使える手段はないのか考えてみましょう。
「現金専用カード」か「プリペイドカード」ならOK
ガソリンスタンドによっては、現金専用カードやプリペイドカードといって、クレジットカード払いを前提としないガソリンカードを発行していることもあります。
現金専用カード | ガソリンスタンドで給油する際に提示すると、会員価格(通常価格より割引になっている)で給油することができる。利用額は現金でその場で支払う。 |
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プリペイドカード | あらかじめ一定額をチャージ(残高の積み増し)し、残高の範囲内でガソリンを給油した際の支払いに使える。なお、プリペイドカードを利用した場合も、利用額の算定には会員価格が用いられる。 |
同じガソリンカードであっても、現金専用カードやプリペイドカードであれば、審査は必要ありません。
個人事業主、法人代表者なら協同組合を使うのもあり
個人という範囲からは少し外れてしまいますが、個人事業主や法人代表者として自分でビジネスをしているなら、協同組合が発行するガソリンカードを使うのも1つの手段です。
もっと簡単に言ってしまうと
- 協同組合を設立し、ビジネスを立ち上げたばかりで信用力がないなどの理由で、ガソリンカードを作れない人を組合員として募る
- 組合員に代わって、協同組合が法人用のガソリンカードを申し込み、組合員に使わせる
- 協同組合は組合員から毎月の利用分および手数料を徴収し、石油元売り会社への支払いに充てる
というのが基本的な仕組みと考えましょう。
クレジットカード機能が付帯したものは審査必須
念のために、クレジットカード機能が付帯したガソリンカードは、なぜ審査が必要なのかについても改めて振り返っておきましょう。
クレジットカード払いの基本的な仕組みは、以下の通りです。
- 加盟店=使えるお店で、クレジットカード会員が買い物をし、クレジットカードで支払う
- 加盟店は、クレジットカード会社にクレジットカード会員の利用状況を報告する
- クレジットカード会社は、加盟店からの報告を受け、手数料を差し引いた金額を加盟店の口座に振り込む
- クレジットカード会社は一定期間のクレジットカード会員の利用額を集計し、請求を行う
- 所定の引落日に、クレジットカード会員があらかじめ支払元として指定した銀行口座から請求額が引き落とされる
これらの流れの中で注目してほしいのが「一度、立替をしている」ということです。つまり、クレジットカード会員が本来支払うべき利用分を、クレジットカード会社が一度立て替えて加盟店に払い、後で請求するという仕組みになっています。
このような仕組みがあるため、クレジットカード会社にとっては「立て替えた金額を支払ってもらえない」ということが、経営上は大きなリスクになりえます。リスクを回避するためにも、クレジットカードを新しく申し込む際はもちろん、利用し始めてからも、定期的に審査を行い、支払能力を確認する仕組みが取られているのです。
ガソリンスタンド別・審査なしで作れるガソリンカードを入手する方法
個人向けに現金専用カードやプリペイドカードを発行しているガソリンスタンドは、実は案外限られているのも事実です。ここでは、比較的多くの都道府県に店舗を展開しているチェーンとして
- ENEOS
- 出光
- エネフリ(伊藤忠エネクス)
の3つを紹介します。
1.ENEOSの場合
ENEOSの場合、現金払いが前提のカードとして
- ENEOSキャッシュ(現金専用カード)
- ENEOSプリカ(プリペイドカード)
の2つが用意されています。
ENEOSキャッシュ
扱いのあるENEOSサービスステーションで給油し、現金払いをする際に提示すると、会員価格で購入できます。なお、申し込みは扱いがあるサービスステーションの店頭で行うことが可能です。また、入会金・年会費は無料になっています。
ENEOSプリカ
ENEOSプリカは、全国に展開しているENEOSサービスステーションのうち、一部の店舗で購入できます。券種は次の2種類です。
券種 | 利用可能金額 | 希望小売価格 |
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10,000円 | 10,000円 | 10,000円 |
5,000円 | 5,000円 | 5,000円 |
また、同じENEOSサービスステーションでも、ENEOSプリカが使えるかどうかは扱いに差があるので、事前に確認が必要です。
2.出光の場合
出光の場合、現金でチャージをし、繰り返し使えるプリペイドカードとして「出光キャッシュプリカ」を発行しています。
出光キャッシュプリカ
出典:出光キャッシュプリカ – 出光のプリカ – 出光カード
出光では、現金でチャージし、残高の範囲内で利用できるプリペイドカードとして「出光キャッシュプリカ」を発行しています。3,000円、5,000円、10,000円、20,000円、25,000円単位で繰り返し入金でき、支払に使える仕組みです。なお、チャージ残高の上限は29,999円までになっています。
出光キャッシュプリカの残高を確認する方法は、以下の2つです。
ネットによる照会 | 公式ホームページから残高や利用履歴を紹介できる |
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レシートによる照会 | 出光サービスステーションで利用した場合、残高と有効期限がレシートに印字される |
3.エネフリの場合
エネフリは、伊藤忠商事傘下の伊藤忠エネクスが運営するガソリンスタンドのチェーン店です。独自の「カーエネクス」という名前を冠した店舗を運営する一方、出光昭和シェルやコスモ石油など、他の大手石油元売り会社の店舗のフランチャイズ展開もしています。
エネプリ
出典:カードのご案内 |カードについて(個人の方) |個人のお客様へ |エネクスフリート株式会社【エネフリ】
エネフリは、エネクスフリート・プリペイドカード=エネプリという名称で、現金でチャージできる形式のプリペイドカードを発行しています。3,000円、5,000円、10,000円、20,000円、30,000円、40,000円の単位で繰り返し入金し、支払に使えます。なお、エネプリにご入金できる上限額は50,000円です。
審査なしで作れるガソリンカードのメリット
ここで、審査なしで作れるガソリンカードのメリットについて、考えてみましょう。次の3点について解説します。
- クレジットカードが作れない場合でも持てる
- その日のうちに手に入れられる
- 現金払いであってもガソリンの割引が受けられる
1.クレジットカードが作れない場合でも持てる
そもそも、なぜクレジットカード機能が付帯したガソリンカードが作れないのでしょうか。一言で答えをまとめると「クレジットカードの審査に通りそうにないから」です。
個人信用情報に異動情報が登録されている=ブラックリストに載っている場合はもちろん、脱サラして会社を立ち上げたばかりであったりやリストラなどで働けなくなってしったりした場合でも、クレジットカードの審査に通るのは極めて難しくなるでしょう。
そもそも、クレジットカードは後払い形式のカードであるため、クレジットカード会社側には「会員の利用額として立て替えた分を回収できない」というリスクが常につきまといます。リスクを引き下げるためにも、支払能力になんらかの問題がありそうな人にはクレジットカードを発行しないのです。
しかし、プリペイドカード形式や現金払い専用のガソリンカードであれば、ガソリン代は前払いをする、もしくは、その場で現金で払うのが前提になります。「一度立て替え、後で支払ってもらう」という仕組みではないため、審査も必要ありません。
2.その日のうちに手に入れられる
クレジットカード機能が付帯したガソリンカードの場合、クレジットカード会社の審査に通らないと発行を受けることができません。そのため、申込書やフォームを提出してから、実際に手元に届くまでそれなりに時間がかかります。早くても1週間、遅ければ2~3週間はかかると思っていた方がいいでしょう。
一方、プリペイドカード形式のガソリンカードであれば、販売しているガソリンスタンドに行けば、すぐに購入できます。また、現金払い専用のガソリンカードも、ガソリンスタンドに行き、申込書を書けばその場で渡してもらえることがほとんどです。
3.現金払いであってもガソリンの割引が受けられる
ガソリンスタンドで給油をしたことがある人ならわかるはずですが、ほとんどのガソリンスタンドでは「会員価格」と「一般価格」の2つを案内しています。つまり
会員価格 | そのガソリンスタンドの現金専用カードやプリペイドカード、提携クレジットカードなど、所定のガソリンカードを提示した場合の優待価格 |
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一般価格 | 所定のガソリンカードを提示しない場合の価格 |
ということです。具体的な金額差はガソリンスタンドのチェーンや地域、原油の価格などによっても異なりますが、大まかな傾向として、会員価格の方が一般価格より2~3円安いと考えておきましょう。
現金払い専用のガソリンカードや、プリペイドカード形式のガソリンカードを使えば、現金払いであっても割引が受けられるので、非常に便利です。
審査なしで作れるガソリンカードのデメリット
一方、審査なしで作れるガソリンカードには、デメリットもあります。次の2点について解説しましょう。
- 個人向けに対応しているガソリンスタンドが少ない
- 現金払いの場合は決済に時間がかかる
1.個人向けに対応しているガソリンスタンドが少ない
従来においては、個人向けのガソリンカードは、現金払い専用のものが主流でした。しかし、ガソリンスタンドを運営する石油元売り会社がクレジットカード会社との提携に力を入れ始めたことから、現在はクレジットカード機能が付帯したガソリンカードが主流になっています。
そのような背景も反映してか、全国展開するガソリンスタンドの中でも、個人向けの現金専用カードやプリペイドカードを扱っているチェーンが少なくなっているのは事実です。今回の記事を書くにあたり、筆者が調べたところ
- コスモ石油
- 出光昭和シェル
- キグナス石油
については、個人向けの現金専用カードやプリペイドカードについては、公式ホームページに案内が掲載されていませんでした。
同じチェーンでも対応にばらつきがあることも
また、同じチェーンであっても、現金専用カードやプリペイドカード形式のガソリンカードが使えるかどうかは、ここのサービスステーションによって扱いに差があります。
ガソリンスタンドの店舗=サービスステーションを「どこの会社が運営しているのか」でさらに細かく分類すると、次の2つに分かれます。
直営店 | 石油元売り会社が自ら運営する店舗 |
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フランチャイズ店 | 外部の企業が石油元売り会社と締結したフランチャイズ、外部の企業が運営する店舗 |
このうち、フランチャイズ店は、扱う決済方法など店舗の運営の一部については、運営会社の裁量で決められる部分があるのも事実です。
現金払いの場合は決済に時間がかかる
現金払い専用のガソリンカードを使うが場合、気をつけるべきことが1つあります。それは「決済に時間がかかる」ということです。請求額をちょうど渡せれば問題はないのですが、お釣りが必要になった場合、ガソリンスタンドの店員さんに事務所に取りに行ってもらうことになります。何十分も待たされることはまずないと思いますが、急いでいるときには気になるかもしれません。