クレジットカードに暗証番号がある理由
クレジットカードの暗証番号は、何のためにあるのか、ますはそこから解説しましょう。
前に届いたクレカ、利用期間の更新かと思ってたけど、違かった
今までのカードまだまだ使える
届いたのはICチップ付きカードだった
それで利用時に暗証番号がいるってことだけど、その暗証番号を設定する案内がない
最初のクレカ申請の時に書いたっけ?
まったく覚えがないよ
どーすりゃいいんだ— 象 (@elephantictube) 2019年6月20日
ICクレジットカードによる決済の普及
従来、店舗でクレジットカードにより決済を行う場合は、店員にクレジットカードを渡し、伝票を確認した上でサインする方法が主流でした。しかし、この方法の場合、
- 本人に成りすましてサインをすれば、誰でも決済出来てしまう
- 磁気テープの情報をもとに、クレジットカード本体を偽造して、本人の知らないところで使いまわす
など、不正利用や偽装ができてしまうため、問題になっていたのです。
これを防ぐためには、クレジットカードと決済端末のIC対応を完了させるのが、現時点でできる唯一の対策とされています。
つまり、
- クレジットカードに情報を暗号化して格納したICチップを搭載する。
- 決済の際は、ICチップの情報を読み取れる端末を使い、さらに暗証番号による認証を行う。
ことで、不正利用や偽装を防げるといわれています。そのため、クレジットカードに暗証番号がついているのです。
日本と世界の現実
ICクレジットカードによる決済の普及状況ですが、日本は外国に比べると大きく遅れを取っています。こちらのグラフは、ICクレジットカードによる決済の普及状況を示したグラフです。
出典:経済産業省「クレジットカード取引におけるセキュリティ対策の強化に向けて」
出典元となった報告書自体は、平成28年=2016年に発表されたものなのです。その時点であっても、欧州・東南アジアの一部の国では、100%近く普及していました。また、中国・韓国においても義務化により、IC対応が急速に進んでいます。
米国はやや遅れをとっていましたが、2014年10月に、当時のオバマ大統領がクレジット決済のIC化に係る大統領令を発令したことで、一気に普及が進んだのです。
一方、日本は外国に比べるとICクレジットカードへの対応が進んでいませんでした。日本クレジット協会が会員企業234社に対し、国際ブランドクレジットカードについてICクレジットカード対応の進捗状況について行ったところ、2017年12月末時点で、100%対応が完了していた企業は、84社にとどまりました。発行枚数ベースでいうと、77.3%です。
つまり、日本がクレジットカード決済システムの脆弱性をついた犯罪の標的にされる可能性が出てきました。この現状に対し、訪日外国人からも「セキュリティの高いICカード対応の決済環境を整備すべき」という声が上がっているのです。
そこで、クレジットカード会社や加盟店、業界団体等は、この事態を重く見て、2020年3月末までのクレジットカードの100%IC化及び加盟店の決済端末の100%IC対応を見据え、以下のような取り組みを行っています。
関係者 | 具体的施策 |
---|---|
クレジットカード会社 | ・クレジットカードのIC化100%を実現(2020年3月まで) ・IC取引時のオペレーションルール(PINレス等)の策定 |
加盟店 | ・POS等の決済システムのIC対応を完了(2020年3月まで) |
行政 | ・先行的に取り組む加盟店の見える化、未対応による不正使用の損害賠償ルールの明確化) ・実効性確保の観点から、割賦販売法における更なる措置を検討 ・中小加盟店等への支援 |
国際ブランド | ・加盟店がIC対応する際の認証プロセスの効率化 |
POS機器メーカー | ・POSの接続部分のソフトウェアを共通化 ・POSシステムのIC対応を標準化 |
サインと何が違うの?
サイン(決済の際に、伝票やタブレットに名前を書くこと)も暗証番号も、対面でクレジットカードの決済を行う際に、本人であることを証明するために行われるものです。しかし、既に触れたように、今後はICクレジットカードおよび暗証番号を用いた支払いが主流になっていくと考えられるため、サインで支払いを済ますことができなくなるのも十分に考えられます。
セキュリティコードと何が違うの?
クレジットカード本体の裏面の署名欄に書いてある3桁(一部4桁)の数字のことを、セキュリティコードといいます。これは、オンラインショッピングなど、インターネット経由でクレジットカードを決済を行う場合(非対面取引)に使われるものです。暗証番号と同じく、本人であることを証明するためのものですが、意味合いは全く異なります。
暗証番号がなくても支払いはできる?
日本に限って言えば、暗証番号がわからなかくても、サインによる決済を申し出れば、受け付けてくれる店舗も多いです。
しかし、外国ではICクレジットカードと暗証番号による決済が主流になっているため、サインでの決済は受け付けてくれない可能性もあります。
クレジットカードの暗証番号の決め方
推測されやすい番号はダメ!
最も大事なことは、「推測されやすい番号を使わない」ということです。推測されやすい番号(例:誕生日)を暗証番号に使ったのが原因で不正利用の被害にあったら、補償が受けられない可能性もあるため、気を付けましょう。
なお、クレジットカード会社が「推測されやすい番号」と判断したら、「変更不可」「受付不可」などの扱いで、別の番号にするよう指示される場合もあります。
オススメの決め方は?
推測されやすい番号は使えませんが、一方で、「覚えやすくて忘れにくい番号」を使うと、必要な時にすぐに暗証番号を思い出せるはずです。ここまでの内容を踏まえて、暗証番号に使えない数字とオススメの数字の決め方を、表にまとめました。
使わないほうがいい決め方 | オススメの決め方 |
---|---|
生年月日 住所から推測できる番号(自宅、勤務先とも) 電話番号の下4桁 7777など同じ数字を続けた番号 郵便番号 自動車の車両番号 |
自分以外の家族の誕生日 結婚記念日 生まれたときの体重 好きな芸能人の誕生日 |
保存の仕方にも気を付けよう
「暗証番号を忘れるといけないから……」という理由で、別のところに控えている人も多いでしょう。しかし、次のような保存の仕方は、人に暗証番号が漏れてしまう可能性が高いので、やめてください。
- クレジットカードの券面に書いておく
- 手帳に書いて、クレジットカードと一緒に持ち歩く
- 付箋に書いて、パソコンや机の上に貼っておく
クレジットカードの暗証番号忘れた!どうすればいい?
- 暗証番号を忘れてしまった
- そもそも設定したのか覚えていない
場合、冷静に対応するのが大事です。以下の説明をよく読み、必要なことを1つ1つ済ませていきましょう。
むやみに入力するのは逆効果
仮に、暗証番号を忘れたとしても、絶対にやってはいけないのが、「あてずっぽうに数字を入力する」ことです。既に触れた通り、暗証番号はICクレジットカードを用いて決済する際に使われます。
そして、ICクレジットカードの決済システムは、仕様上、暗証番号の入力を一定回数以上(目安は3回程度)間違えると、決済の受付ができません。クレジットカードも使えなくなりますので、クレジットカード会社に電話し、必要な手続きをする必要があります。
まって〜〜〜最悪すぎる〜〜〜❕暗証番号まちがえてクレカ使えんくなったほんとゴミ
— いちごちゃん (@I5CHANX) 2019年6月21日
ますはクレジットカード会社に連絡
- 暗証番号がわからない
- 暗証番号を設定したかどうか確認したい
場合は、クレジットカード会社に連絡しましょう。オンライン上から手続きを行うか、専用の電話番号に連絡するのが一般的です。
暗証番号の照会という形で、手続きを進めてくれます。主要カード会社の暗証番号の問い合わせに関連するページと受付電話番号を、表にまとめました。
会社名 | 電話での問い合わせ先 |
---|---|
三井住友カード | FORYOUデスク 0570-004-980 受付時間 /9:00~17:00 ・年中無休 (12/30~1/3を除く) |
オリコカード | オリコテレホンサービス 0120-911-004 携帯電話・スマートフォンの場合:03-5877-5555 24時間受付・年中無休 |
JCBカード | JCB暗証番号サービス 0120-899-020 携帯電話・スマートフォンの場合: <東京>0422-76-5411 <大阪>06-6945-6857 24時間受付・年中無休 |
アメリカンエキスプレス | ICカード暗証番号の登録受付 0120-456375 携帯電話・スマートフォンの場合: 03-3220-6624 24時間受付・年中無休 |
ダイナース | 専用ダイヤル 0120-951-551 9:00~17:00・年中無休 |
解決までの時間はまちまち
クレジットカード会社に暗証番号照会を行った場合、結果は郵送されています。大体1週間程度ですが、時期によっても手元に届く時間にばらつきがあるので、落ち着いて待ちましょう。
海外にいく予定があるなら要注意
一方、旅行・出張などで海外に行く予定がある場合は要注意です。先述した通り、海外ではICクレジットカードの普及が急速に進んでいるため、暗証番号がわからないと何もできない可能性があります。
- 別のクレジットカードをメインカードにする
- 他のクレジットカードを作ってから出発する
など、暗証番号が受け取れなかったときにどうするかも考えておきましょう。
【海外でクレジットカードを使うときの注意】
・事前に暗証番号を確認しとく→サインは少ない
・支払い金額を確認してから暗証番号を入力する→レジの金額を店員が打ち込む端末もあるので桁間違いや詐欺の可能性もあるかも。暗証番号を入力しての決済は例外除きカード会社の補償対象にならない。つまり— Ann@ドイツ観光🇩🇪 (@Ann01110628) 2019年5月3日
家族でも代わりはできません
うちの母親に「クレジットカードの暗証番号のことなんてわからないから、代わりにやって」と言われたんだけど……
クレジットカードの暗証番号の照会は、本人でないとできません。決済を済ませるために不可欠な情報であるため、漏洩を防ぐためにも本人が対応するのが基本だからです。
クレジットカードの暗証番号は流出に気を付けて!
クレジットカードの暗証番号は、絶対に第三者に流出しないようにしましょう。流出すると、大変なトラブルに巻き込まれてしまいます。
暗証番号が盗まれると何が起きる?
そもそも、暗証番号が盗まれると、何が起きるのでしょうか?
不正利用の原因になる
暗証番号は、ICクレジットカードで決済を済ませる際、サイン代わりに使うとても大事な情報です。そのため、クレジットカード番号と一緒に暗証番号が第三者に漏れてしまった場合、不正利用につながります。この2つがそろっていれば、たとえ本人でなくても、クレジットカードを使って決済ができてしまうからです。
さらに、ATMでキャッシングするのも可能になるので、気が付いた時には莫大な損害を被っていた……なんて話もあり得ます。
補償を受けられないこともある
基本的に、クレジットカードが不正利用された際は、補償ということで、クレジットカード会員本人は支払いを免除されます。
しかし、クレジットカード番号や暗証番号が漏れたのが、
- 暗証番号が書かれたメモとクレジットカードを一緒に保管していた
- 誰かに教えてしまった
など、明らかに本人に落ち度があったからだったとしたら、補償を受けられない可能性があります。多くのクレジットカード会社では、「会員の故意または重大な過失に起因する損害」は補償対象外としているためです。
暗証番号が盗まれる手口
故意や重大な過失がなかったとしても、心無い人のせいで暗証番号が盗まれる可能性は十分にあります。暗証番号が盗まれる手口として考えられるものを解説しましょう。
電話やメールで聞き出そうとする
- クレジットカード会社の社員を装い、電話口で暗証番号を聞く
- ECサイト等を装ったメールを送り、架空のリンクをクリックさせる
手口がこれにあたります。
また、メールの場合も、心当たりがなければ開かないに越したことはありません。最近は、こちらのツイッターのように、ぱっと見ただけでは偽物とは気づかないメールもたくさんあります。
拡散希望
詐欺にご注意を⚠️アップル社を装ってが送ってきたメール内容がこれです
クレジットカード番号や暗証番号等を送付しないように注意して下さい⚠️
最近は巧妙な手口で送ってくるので、本物なのか偽物なのか判別が難しくなりました
ほんと、皆さんも気をつけて下さい。 pic.twitter.com/aS39r7SrB4
— 東雲 圭吾 (@keigo_shinonome) 2019年6月20日
背後からのぞき見
店舗でクレジットカード決済をしていたり、ATMでキャッシングをしたりする際に、暗証番号を入力しているところをのぞく人には気を付けましょう。数字キーの位置さえ把握しておけば、手の動きでどの番号を押しているかわかってしまう可能性もあります。
ロッカーの暗証番号を盗み見る
スポーツクラブ等に通っていて、暗証番号を自分で設定するタイプのロッカーを使っている人は、クレジットカードの暗証番号と同じものは使わないようにしましょう。先ほどの店舗やATMの時と同じく、手の動きで番号がわかってしまうおそれがあります。万が一、クレジットカードが盗まれた場合、その暗証番号を使って不正利用されてしまう可能性が0とは言い切れません。
偽の警官に聞き出される
日本ではあまり見かけない手口ですが、外国では、偽の警官がパスポートやクレジットカードを提示するよう求めてくる事件も発生しています。
オリンピックを控え、また偽警官の動きがちらほら見受けられるようになったということです。警官がクレジットカードやサイフを出せということはまずないので、遭遇した場合は無視するよう心がけてください。人混みの多い場所でのスリ、置き引きなどにも注意し、ご旅行をお楽しみ下さい。
— H.I.S.ロンドン🇬🇧 (@his_london) 2012年7月9日
その際に、暗証番号を聞かれることもあるのです。もし、そのような偽の警官に遭遇したら、周囲に助けを求めましょう。パスポートやクレジットカードが盗まれたら、早急に現地の領事館やクレジットカード会社に連絡し、指示を仰いでください。
店員が暗証番号を聞いてくる
悪意があるかどうかは断言できませんが、店舗での決済で、クレジットカード決済に慣れていないスタッフが対応する場合、暗証番号を聞いてくる可能性もあります。
今日とある店の支払いでクレジットカードを若い女性の店員さんに渡したら、しばらくして戻ってきてめちゃくちゃ元気よく
「暗証番号を教えてください!」
て言うから思わず元気よく答えそうになった。あぶないあぶない。
— 松田広宣|コピーライター (@hirocopy) 2019年5月16日
暗証番号が盗まれたときにやるべきこと
どんなに気を付けていても、クレジットカード番号や暗証番号が人に盗まれてしまう可能性を0にするにはできません。
現実的な対処法を学んでおきましょう。
まずは落ち着く
「もうダメだ……終わった!」と思う気持ちはわかりますが、まずは落ち着きましょう。
クレジットカード会社に連絡する
クレジットカード本体がある場合は、お問い合わせ用の電話番号が書いてあるので、まずはそこに電話しましょう。本体がなくなってしまった場合は、クレジットカードの発行会社のWebページを調べてください。お問い合わせ用の電話番号がわかったら、すぐに連絡しましょう。
警察にも連絡する
最寄りの警察署または都道府県警察本部に設けられている都道府県警察本部のサイバー犯罪相談窓口に相談しましょう。
支払情報の変更をする
暗証番号が盗まれた場合、これまで使っていたクレジットカードの再発行をすることがほとんどです。携帯電話料金や電気・水道・ガスなどの公共料金の支払いにクレジットカードを使っていた場合、クレジットカード番号の変更をする必要があります。
思い切ってクレジットカードを変えてしまう
荒療治になるかもしれませんが、不正利用されないために最も確実な方法は「暗証番号が盗まれたクレジットカードを解約してしまい、新しいクレジットカードを作る」ことです。新しいクレジットカードをなるべく早く手に入れたいなら、即日発行のクレジットカードも活用しましょう。
まとめ
クレジットカードの暗証番号は、これまで使われてきたサインに代わる、「本人が決済をする」という事実を証明するためのものです。
- 推測されやすいものを使わない
- わからなくなったら問い合わせる
- 流出、盗難には気を付ける
の3点は必ず守りましょう。