支払停止の抗弁とは?商品が届かないときカードの支払いを止められる条件と手順

支払停止の抗弁とはと書かれたアイキャッチ画像。荷物とクレジットカードのイラストと4万円以上の表示

通販で買った商品が届かない。届いたものが写真とまるで違う。販売店に連絡しても返事がない。それでもカードの引き落とし日は来ます。こういうときに使えるのが支払停止の抗弁です。割賦販売法が定めている制度で、販売会社との間で生じている問題を理由に、クレジット会社への支払いを一時的に拒むことができます。ただし使える条件が細かく決まっており、1回払いは対象外という重要な線引きがあります。条文と日本クレジット協会の説明で整理します。

この記事でわかること

  • 割賦販売法30条の4第1項により、購入者は販売業者に対して生じている事由をもって、支払いを請求するクレジット会社に対抗することができます
  • これは契約を解除できる権利ではありません。問題が解決するまで支払いを止める権利で、解決すれば支払いは再開します。
  • 申し出できないのは、支払期間が2月未満の取引、支払総額が4万円未満(リボルビングやローン提携販売では現金価格が3万8千円未満)、購入が購入者にとって商行為になるときなどです。
  • 金額の根拠は割賦販売法施行令21条で、1項が4万円、2項が3万8千円と定めています。
  • 「支払停止はできない」と書いた特約は無効です。同条2項が、購入者に不利な特約を無効としています。
  • 申し出の前に、まず販売会社へ問題そのものの解決を求めます。連絡がつかない、解決しない場合にクレジット会社へ申し出ます。

3者間の契約だから、支払いに対抗できる

クレジットカードでの買い物は、購入者・販売会社・クレジット会社の3者が関わります。日本クレジット協会は、2者間契約の場合は販売店に「商品が納品されるまでお金は払わない」と主張でき、これが民法に定める同時履行の抗弁権であるのに対し、3者間契約の場合はクレジット会社に同様の主張をすることになり、これが割賦販売法に定める支払停止の抗弁権だと説明しています。

購入者・販売会社・クレジット会社の3者間契約の関係と、支払停止の抗弁を申し出るまでの5段階の手順を示した図
売買契約の問題を、立替払契約の支払いに対抗できるのがこの制度。

条文はこうです。割賦販売法30条の4第1項は「購入者又は役務の提供を受ける者は、(中略)支払分の支払の請求を受けたときは、当該商品若しくは当該指定権利の販売につきそれを販売した包括信用購入あつせん関係販売業者又は当該役務の提供につきそれを提供する包括信用購入あつせん関係役務提供事業者に対して生じている事由をもつて、当該支払の請求をする包括信用購入あつせん業者に対抗することができる」と定めています。

これは解除の制度ではありません。日本クレジット協会は「『支払停止の抗弁権』は、契約を解除できる権利ではありません。販売会社との間で生じている問題が解決するまで、クレジット会社への支払いを停止する権利です」と明記しています。商品が届けば問題は解決したことになり、支払いは再開されます。

申し出できる事由と、できない場合

支払停止の抗弁を申し出できる8つの事由と、申し出できない5つの場合を左右に並べた図
日本クレジット協会が挙げている区分。金額と支払期間の線引きが実務上いちばん効く。

申し出ができる事由として、日本クレジット協会は次の8つを挙げています。売買契約や役務提供の条件に起因するものとして、見本・カタログ等と現物が相違した場合、商品の引き渡しがない場合、引き渡しが遅延した場合、商品に欠陥(種類または品質に関して契約の内容に適合しない場合)がある場合、販売の条件となっている役務の履行がない場合。売買契約そのものに起因するものとして、強迫・強要の場合、詐欺の場合、錯誤による意思表示の場合です。

日本クレジット協会のクレジットで購入した商品が届かないというページ画面。申し出できる事由と申し出できない場合が一覧で示されている
出典:一般社団法人日本クレジット協会「クレジットで購入した商品が届かない。どこに相談したらよいのか?」。

いちばん引っかかるのは支払期間と金額

条件 内容 根拠
支払期間が2月未満 申し出できない 日本クレジット協会が挙げる除外事由。翌月一括払いはここに当たります
支払総額が4万円未満 申し出できない 割賦販売法30条の4第4項と、割賦販売法施行令21条1項(4万円)
リボルビング・ローン提携販売で現金価格が3万8千円未満 申し出できない 同施行令21条2項(3万8千円)
購入が購入者にとって商行為になるとき 申し出できない 連鎖販売個人契約および業務提供誘引販売個人契約に係るものを除く
割賦販売法の適用除外となっている権利の契約 申し出できない 同上
上記に当たらない分割払い・ボーナス払いなど 申し出できる余地がある 割賦販売法30条の4第1項

「1回払いだと使えない」が実務でいちばん多いつまずきです。日本のクレジットカードの多くは翌月一括払いが基本で、この形は支払期間が2月未満の取引に当たります。分割払いやリボルビング払いに変更していれば別ですが、購入時の支払方法で判断されます。1回払いで買った商品が届かない場合は、この制度ではなく、販売会社への請求やカード会社の不正利用・未着に関する独自の対応窓口を頼ることになります。

申し出の進め方

1. 販売会社に連絡する

まず商品の引き渡し、修理、交換、役務の提供など、問題そのものの解決を求めます。ここで解決すれば申し出は不要です。連絡した日時と方法を記録しておきます。

2. 解決しなければクレジット会社へ

連絡がつかない、対応してもらえない場合に、利用したクレジット会社へ支払停止の抗弁を申し出ます。カード裏面の連絡先か、会員サイトの問い合わせ窓口です。

3. 事由を書いた書面を出す

割賦販売法30条の4第3項は、クレジット会社から事由の内容を記載した書面の提出を求められたときは、その書面を提出するよう努めなければならないと定めています。

4. 解決したら支払いが再開する

停止は一時的なものです。問題が解決すれば支払いは再開します。停止している間の扱いはクレジット会社の説明を確認してください。

相談先が分からない場合、日本クレジット協会は消費者向けの相談窓口を案内しています。お住まいの地域の消費生活センターに相談する方法もあります。

日本クレジット協会のクレジットに関する相談窓口のページ画面
出典:一般社団法人日本クレジット協会「クレジットに関する相談窓口」。

似ているが別の制度と、混同しないために

制度 誰に対する主張か 根拠 効果
同時履行の抗弁権 販売店 民法 2者間契約で「商品が納品されるまでお金は払わない」と主張できる
支払停止の抗弁 クレジット会社 割賦販売法30条の4 3者間契約で、販売会社との問題を理由に支払いを一時的に拒める
クーリング・オフ 販売店 特定商取引法など 一定期間内に契約を解除できる。取引類型ごとに要件が定められている
不正利用の補償 クレジット会社 会員規約 自分が使っていない取引についての補償。売買契約の内容の問題とは別

自分が使った覚えのない請求なら、支払停止の抗弁ではなく不正利用の問題です。手口と対策はクレジットカードの不正利用で整理しています。ネット決済で本人認証を求められる仕組みはEMV 3-Dセキュアを確認してください。

やってはいけないこと

クレジット会社に何も言わずに口座の残高を空にして引き落としを止めること。これは支払停止の抗弁ではなく単なる延滞になり、信用情報に影響します。

やっておくべきこと

注文画面、確認メール、配送状況、販売会社とのやり取りを保存しておくこと。事由の内容を記載した書面を求められたときの材料になります。

買う前にできる予防

場面 やっておくこと
高額な買い物をするとき 支払方法を確認する。1回払いでは支払停止の抗弁の対象にならないため、支払期間が2月以上になる方法を選ぶかどうかを意識する
初めて使う通販サイト 特定商取引法に基づく表記で、事業者名、所在地、連絡先、返品の条件を確認する
納期が長い商品 注文確認メールに納期の記載があるかを確認し、保存する。引き渡しの遅延は申し出できる事由の1つです
役務(サービス)の契約 提供の条件と期間を書面で受け取る。役務の履行がない場合も申し出できる事由に含まれます
4万円前後の買い物 支払総額が4万円未満だと申し出の対象外です。金額の境目にあることを頭に入れておく
e-Gov法令検索の割賦販売法のページ画面
出典:e-Gov法令検索「割賦販売法」。第30条の4が包括信用購入あつせん業者に対する抗弁。

よくある質問

支払停止の抗弁とは何ですか

割賦販売法に定められた制度で、消費者が販売会社と結ぶ売買契約(または役務提供契約)上の問題を理由として、クレジット会社への支払いを一時的に拒むことができる権利です。契約を解除できる権利ではありません。

1回払いでも使えますか

使えません。日本クレジット協会は、支払期間が2月未満の取引のときは申し出ができないとしています。翌月一括払いはこれに当たります。

いくら以上なら使えますか

クレジットカードまたは個別方式のクレジットを利用した契約では、支払総額が4万円未満のときは申し出ができません。リボルビング払いやローン提携販売の場合は、商品・役務・権利の現金価格が3万8千円未満のときが対象外です。金額は割賦販売法施行令21条に定められています。

カードの規約に「支払停止はできない」と書いてあります

割賦販売法30条の4第2項は、同条1項の規定に反する特約であって購入者または役務の提供を受ける者に不利なものは無効とすると定めています。

どこに申し出ればいいですか

利用したクレジット会社です。まず販売会社に問題の解決を求め、連絡がつかない、または解決しない場合に申し出ます。相談先が分からない場合は、日本クレジット協会の相談窓口や、お住まいの地域の消費生活センターに相談する方法があります。

申し出れば支払わなくてよくなりますか

いいえ。問題が解決するまで支払いを停止する権利です。商品が届くなど問題が解決すれば、支払いは再開されます。

引き落としを口座残高で止めればいいのでは

それは支払停止の抗弁ではありません。手続きを踏まずに引き落としを止めると延滞として扱われ、信用情報に影響する可能性があります。必ずクレジット会社へ申し出てください。

参照した一次情報


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30枚以上のクレジットカードを保有するFP。一般カードから、ゴールドカード、プラチナカード、ブラックカード、法人カード、デビットカード、ETCカードと様々なカードを持ち、お得にカードを使うためにどうすれば良いのか?楽しく検証しています。マイルやポイントを貯める方法を中心につぶやきます。