カードが使える店はどう決まる?割賦販売法35条の17の8の加盟店調査義務と、決済代行の登録制度

登録・加盟店の調査・基準に合わない場合の措置という3段の流れを示したアイキャッチ
結論から

お店にカード決済を導入する会社は、勝手に始められるわけではありません。割賦販売法35条の17の2は、加盟店とカード番号の取扱契約を結ぶことを業とする者に対し、経済産業省に備えるクレジットカード番号等取扱契約締結事業者登録簿への登録を義務づけています。いわゆるアクワイアラと決済代行会社です。

登録した事業者には調査義務が付きます。35条の17の8第1項は、契約の締結に先立って、加盟店になろうとする事業者について、カード番号の適切な管理と不正利用の防止に支障を及ぼすおそれの有無を調査しなければならないと定めています。

調査は1回では終わりません。同条3項は、契約済みの加盟店についても定期的に、または必要に応じて同じ事項を調査しなければならないとしています。

基準に適合しない、またはそのおそれがあると認めるときは、契約前なら契約してはならず(2項)、契約後なら契約の解除その他の必要な措置を講じなければなりません(4項)。「あの店で急にカードが使えなくなった」の背後には、この条文があります。

カード決済を扱う会社は経済産業省に登録されている

カード会員から見ると、決済に関わるのはカード会社だけのように見えます。しかし加盟店の側には、カード番号を取り扱う契約を結ぶ事業者がいます。国際ブランドの加盟店契約を直接結ぶ会社(アクワイアラ)と、その下で加盟店を取りまとめる決済代行会社です。

割賦販売法35条の17の2は、この2つを登録の対象にしています。

次の各号のいずれかに該当する者は、経済産業省に備えるクレジットカード番号等取扱契約締結事業者登録簿に登録を受けなければならない。(割賦販売法35条の17の2)

表1 登録が必要になる2つの立場(35条の17の2第1号・第2号)
号 どんな事業者か 通称
1号 自ら利用者に付与するクレジットカード番号等を加盟店に取り扱わせる契約を結ぶことを業とするクレジットカード等購入あっせん業者 アクワイアラ
2号 特定のクレジットカード等購入あっせん業者のために、加盟店とその契約を結ぶことを業とする者 決済代行会社(PSP)
e-Gov法令検索で表示した割賦販売法第35条の17の2と第35条の17の3の画面。経済産業省に備えるクレジットカード番号等取扱契約締結事業者登録簿への登録義務と、登録申請に名称・営業所の名称と所在地・役員の氏名を記載することが書かれている
出典:e-Gov法令検索「割賦販売法」35条の17の2・35条の17の3(令和7年6月1日施行版/2026年9月27日確認)

登録の申請では、名称、本店その他の営業所の名称と所在地、役員の氏名を記載した申請書を経済産業大臣に提出します(35条の17の3第1項)。定款や登記事項証明書などの添付も必要です。そして35条の17の7は、経済産業大臣は登録簿を一般の閲覧に供しなければならないと定めています。誰が登録されているかは公開情報です。

契約前に調べ、契約後も定期的に調べる

登録して終わりではありません。35条の17の8が課しているのは、加盟店に対する継続的な調査です。条文は4つの段階に分かれています。

図1 35条の17の8が定める調査と措置

1項 事前調査

契約の締結に先立って、加盟店になろうとする事業者について、カード番号の適切な管理と利用者による不正利用の防止に支障を及ぼすおそれの有無を調査する

2項 契約の禁止

調査その他の方法で知った事項からみて、加盟店が講じようとする措置が基準に適合せず、または適合しないおそれがあると認めるときは、契約を締結してはならない

3項 定期調査

契約済みの加盟店についても、定期的に、または必要に応じて同じ事項を調査する

4項 事後の措置

基準に適合せず、または適合しないおそれがあると認めるときは、契約の解除その他の必要な措置を講じる

5項 記録

1項と3項の調査に関する記録を作成し、保存する

e-Gov法令検索で表示した割賦販売法第35条の17の8の画面。契約の締結に先立つ調査、基準に適合しないおそれがあるときは契約を締結してはならないこと、契約後の定期的な調査、契約の解除その他の必要な措置が並んでいる
出典:e-Gov法令検索「割賦販売法」35条の17の8(令和7年6月1日施行版/2026年9月27日確認)

基準の中身は、35条の16(クレジットカード番号等の適切な管理)と35条の17の15(クレジットカード番号等の不正な利用の防止)に置かれています。後者は、加盟店が経済産業省令で定める基準に従い、利用者による不正利用を防止するために必要な措置を講じなければならないという条文です。

カード番号の管理義務がネット決済の本人認証にどう効いているかは、35条の16の記事で扱いました。今回の35条の17の8は、その義務を加盟店に守らせる役目を、契約を結ぶ側に負わせた条文という関係になります。

利用者から見て、この条文はどこに現れるか

法律の文面だけだと遠い話に見えますが、利用者が実際に目にする場面があります。

図2 調査義務が利用者側に見える形

  • ある店で急にカードが使えなくなる 4項の措置として契約が解除されると、その店ではカード決済ができなくなります
  • ネット通販で本人認証の画面が増える 不正利用防止の措置が基準に合うよう、加盟店側が対応を進めた結果です
  • 新しい店でカード決済の開始が遅れる 1項の事前調査を終えないと契約できません
  • 怪しい通販サイトでカードが通らない 基準に適合しないおそれがあると判断されれば、そもそも契約が結ばれません

逆に言えば、登録されていない事業者を通したカード決済は、この仕組みの外にあります。見慣れない決済画面に番号を入れる前に、誰が決済を扱っているのかを確かめる価値はあります。クレジットカード現金化のように、カード会社が禁じている使い方については現金化の記事で整理しました。

業界団体を経由して情報が回る仕組みもある

調査は1社だけで完結するものではありません。割賦販売法は、業界の情報共有の器として「認定割賦販売協会」を置いています。35条の18第1項は、経済産業大臣が、割賦販売業者やクレジットカード番号等取扱契約締結事業者などが設立した一般社団法人のうち、一定の要件に該当すると認められるものを、申請により認定できると定めています。

認定を受けるための要件は4つです。取引の健全な発達と利用者等の利益の保護に資することを目的としていること、割賦販売業者等を社員とする旨の定款の定めがあること、業務を適正かつ確実に行うために必要な実施方法を定めていること、そしてそれを行うに足りる知識・能力と財産的基礎を有していること。

図3 認定割賦販売協会の業務と情報の流れ

規則の制定

取引の公正の確保とクレジットカード番号等の適切な管理等を図るために必要な規則を定める(35条の18第2項1号)

遵守状況の調査

会員が法令・命令・処分・規則を守っているかを調べる(同2号)

指導・勧告

会員に遵守させるための指導または勧告その他の業務(同3号)

会員からの報告

会員は、加盟店が行ったクレジットカード番号等の適切な管理等に支障を及ぼす行為に関する情報などを協会へ報告する(35条の20)

会員への提供

会員から請求があったときは、正当な理由がある場合を除き、その情報を提供しなければならない(35条の21)

社員名簿

協会は社員名簿を公衆の縦覧に供しなければならない(35条の19第1項)

つまり、ある会社が問題のある加盟店を見つけて契約を切っても、その情報は協会を経由してほかの会員も参照できます。別の決済代行に乗り換えれば通る、という形にならないように設計されています。協会の役員・職員には秘密保持義務があり、認定業務以外の目的で利用することも禁じられています(35条の22)。

登録は取り消されることがある

登録事業者が調査義務や業務運営の措置に違反していると認められるとき、経済産業大臣は改善命令を出すことができます(35条の17の10)。さらに一定の場合には登録の取消しもあります(35条の17の11)。

表2 登録事業者に対する行政の手段
条文 内容
35条の17の9 取得したクレジットカード番号等に関する情報の適切な管理のために必要な措置を講じる義務
35条の17の10 調査義務や情報管理の措置に違反していると認めるときの改善命令
35条の17の11 一定の事由に該当するときの登録の取消し
35条の17の12 登録の消除
35条の17の13 処分の公示

35条の17の13が処分の公示を定めている点が重要です。処分は公表される前提で組まれています。登録簿が一般の閲覧に供される(35条の17の7)ことと合わせて、外から確認できる設計になっています。

よくある質問

決済代行会社も登録が必要ですか

必要です。35条の17の2第2号は、特定のクレジットカード等購入あっせん業者のために加盟店とカード番号の取扱契約を結ぶことを業とする者を登録の対象にしています。

加盟店の調査は何を見るのですか

条文が挙げているのは、カード番号等の適切な管理または利用者による不正利用の防止に「支障を及ぼすおそれの有無に関する事項であつて経済産業省令で定める事項」です。具体的な項目は経済産業省令に委ねられています。

調査は最初の1回だけですか

違います。35条の17の8第3項が、契約済みの加盟店についても定期的に、または必要に応じて調査しなければならないと定めています。5項により、調査の記録を作成し保存する義務もあります。

基準に合わない加盟店はどうなりますか

契約前であれば2項により契約を締結できません。契約後であれば4項により、契約の解除その他の経済産業省令で定める必要な措置が求められます。

登録されている事業者かどうかを調べられますか

35条の17の7は、経済産業大臣は登録簿を一般の閲覧に供しなければならないと定めています。登録の有無は公開情報として扱われます。

参照した一次情報

  • e-Gov法令検索「割賦販売法」(昭和36年法律第159号)https://laws.e-gov.go.jp/law/336AC0000000159(35条の17の2の登録義務と1号・2号、35条の17の3の申請事項、35条の17の7の登録簿の閲覧、35条の17の8第1項から第5項の調査と措置、35条の17の9の情報管理、35条の17の10の改善命令、35条の17の11の登録の取消し、35条の17の13の処分の公示、35条の17の15の不正利用の防止、35条の18の認定割賦販売協会の認定と業務、35条の19の社員名簿の縦覧、35条の20の報告、35条の21の情報提供、35条の22の秘密保持義務。令和7年6月1日施行版/2026年9月27日確認)

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30枚以上のクレジットカードを保有するFP。一般カードから、ゴールドカード、プラチナカード、ブラックカード、法人カード、デビットカード、ETCカードと様々なカードを持ち、お得にカードを使うためにどうすれば良いのか?楽しく検証しています。マイルやポイントを貯める方法を中心につぶやきます。