デビットカードとは?仕組みから審査まで徹底解説

woman
高校生の甥が、春休みに短期留学に行くんですけど、学校から「デビットカードを作って持って行って」と言われたらしいです。うちの妹から「お姉ちゃん、デビットカードって何?」って連絡がきたんですけど、どういう風に話せばいいんですかね?
teacher
一度全体を理解してもらったほうが、話が早いかもしれませんね。

都市銀行、地方銀行を含めた多くの金融機関で、デビットカードの発行を受け付けるようになりました。クレジットカードに比べると、まだ一般的ではない支払い手段の1つですが、違いを理解して利用すれば、非常に便利です。

そこで、この記事では

  1. デビットカードとは?
  2. デビットカードを使うには?
  3. デビットカードのメリット・デメリット

という3つの側面から、デビットカードについて解説します。

デビットカードとは?

デビットカードとは?

最初に、そもそもデビットカードは何か、について説明しましょう。

基本的な仕組み

デビットカードとは、都市銀行・地方銀行などの金融機関が発行する、預金口座と紐づけられた決済用カードのことです。実店舗・オンラインショップ等で買い物をする際に、デビットカードで決済すると、代金が即座に銀行口座から引き落とされる仕組みとなっています。

また、デビットカードにはクレジットカードと同じように、国際ブランドが付帯しています。そのため、国際ブランドの加盟店であれば、クレジットカードと同じように支払いに使えるのです。

例えば、「Visaのステッカーが貼ってあるお店であれば、Visaデビットも支払いに使える」と考えましょう。

クレジットカードとの違いは?

woman
ふーん、そうなんですね。クレジットカードとの違いが今一つわからないんですが?

クレジットカードとデビットカードの最大の違いは、「クレジットカード会社による立替があるかどうか」です。

クレジットカードによる支払いは、以下の流れで進みます。

  1. クレジットカード会員(以下、会員)は店舗でクレジットカードでの支払いを行う
  2. 店舗からの連絡を受け、クレジットカード会社が一度、会員の利用額を立て替える
  3. クレジットカード会社は一定期間における会員の利用額を集計し、会員に請求を行う
  4. 所定の引き落とし日に会員があらかじめ登録した銀行口座から、請求額が引き落とされる

一方、デビットカードによる支払いは、以下の流れで進みます。

  1. デビットカード会員(以下、会員)は店舗でデビットカードでの支払いを行う
  2. 店舗から送信されたデータに基づき、即座にデビットカードに紐づけられた銀行口座から引き落とし処理が行われる

つまり

  • クレジットカードでの支払いの場合、クレジットカード会社による立替がある
  • デビットカードでの支払いの場合、立替にあたるものはない

という大きな差があるのです。

その他にも細かい違いがいろいろあるので、表にまとめました。

カードの種類 デビットカード クレジットカード
支払い方法 即時決済 決済後、1カ月~2カ月後に引き落とし
支払い回数 1回払いのみ(リボ・分割などは不可) 1回払い、2回払い、分割払い・リボ払い・ボーナス払い
利用可能額 預金口座の残高および利用限度額の範囲内 利用限度額の範囲内(審査の結果による)
キャッシングなどの借り入れ 不可 可能(審査の結果による)
海外での引き出し 可能(預金口座からの出金として) 可能(借り入れ=キャッシングとして)
利用可能年齢 15歳以上(一部12歳以上) 原則18歳以上
利用できる店舗 国際ブランドの加盟店(一部、利用できない加盟店あり) 国際ブランドの加盟店
審査 与信審査なし(口座開設の審査はある) 審査あり
ポイント還元率 低い(0.5%が相場) 高い(1.0%が相場)

日本ではVisa、JCBが主流

デビットカードにも、クレジットカードと同じように国際ブランドが付帯しています。日本の金融機関から発行されているデビットカードに付帯しているのは

  1. JCB
  2. Visa

の2つが主流です。

2019年11月現在、日本の金融機関でMastercardデビットカードを発行しているのは、住信SBIネット銀行およびトマト銀行のみとなっています。

それぞれの国際ブランドについて、発行している銀行を一覧にしました。

JCBデビット

文字通り、国際ブランドの1つ、JCBの加盟店で利用できます。2019年11月現在、JCBデビットカードの発行が受けられるのは以下の銀行です。

鹿児島銀行 もみじ銀行 秋田銀行 八十二銀行 三菱UFJ銀行 七十七銀行 京都銀行 広島銀行
みずほ銀行 セブン銀行 熊本銀行 北陸銀行 中国銀行 ちばぎん 紀陽銀行 東邦銀行
じぶん銀行 北九州銀行 名古屋銀行 楽天銀行 池田泉州銀行 親和銀行 沖縄銀行 北洋銀行
イオン銀行 福岡銀行 十六銀行 山口銀行 大垣共立銀行 西日本シティ銀行 愛媛銀行 栃木銀行

原則として、

  • その金融機関に普通預金口座を持っている
  • 日本国内に住んでいて、金融機関に届け出ている住所で、カードを受け取ることができる
  • 中学生を除く15歳以上

であれば、申し込めます。

Visaデビット

国際ブランドの1つ、Visaの加盟店で利用できます。2019年11月現在、Visaデビットカードの発行が受けられるのは以下の銀行です。

原則として、

  • その金融機関に普通預金口座を持っている
  • 日本国内に住んでいて、金融機関に届け出ている住所で、カードを受け取ることができる
  • 中学生を除く15歳以上

であれば、申し込めます。

ゆうちょ銀行は、12歳以上であれば申し込めます。ただし、親権者の同意が必要です。
大光銀行 楽天銀行 GMOあおぞらネット銀行 三菱UFJ銀行 あおぞら銀行 広島銀行
PayPay銀行 岩手銀行 関西みらい銀行 ゆうちょ銀行 北海道銀行 琉球銀行
中京銀行 滋賀銀行 北陸銀行 西日本シティ銀行 スルガ銀行 北國銀行
イオン銀行 常陽銀行 三井住友銀行 ソニー銀行 池田泉州銀行 SMBC信託銀行
福井銀行 りそな銀行 愛知銀行 埼玉りそな銀行 住信SBIネット銀行

デビットカードを使うには?

デビットカードを使うには?

それでは、実際にデビットカードを使うにはどうすればいいのでしょうか?

基本的な流れとして

  1. 対応している銀行の口座を用意する
  2. デビットカードを申し込む(同時に口座開設の申込も可能)
  3. 手元に届いたら使う

の3つを解説しましょう。

1.対応している銀行の口座を用意する

最初に、デビットカードを発行している銀行の口座を用意しましょう。

  • 都市銀行
  • 地方銀行
  • ネット銀行

など、自分のライフスタイルや好みに合わせて選んでください。自分が普段から使っている銀行がデビットカードの発行をしているなら、最初はそれを申し込んでもいいでしょう。

もし、「自分が使っている銀行はデビットカードを発行していない」なら、他の銀行も検討しましょう。

銀行口座を保有していないデビットカードに申込をすると、同時に口座開設の申込もできる銀行がほとんどですので、デビットカードの申込をすれば、「銀行口座」「デビットカード」の両方を作成することができます。
teacher
こちらの記事も参考にしてみてくださいね。

2.デビットカードを申し込む

実際にデビットカードを申し込みましょう。

  • オンライン
  • 店頭
  • 郵送

で受け付けている場合がほとんどです。「自分でサクサク進めたい」場合はオンラインを、「銀行の人に話を聞きながら進めたい」場合は店頭をおすすめします。

なお、クレジットカードの場合と同様、申込書類やフォーム入力済みのデータに不備があると、手続きが進まないので注意しましょう。

基本的に審査はない

デビットカードはクレジットカードと違い、支払い能力に関する審査はありません。銀行口座が開設できれば、デビットカードの申込も問題なく進む場合がほとんどです。

3.手元に届いたら使う

申込手続が完了すると、1~2週間ほどでデビットカードが手元に届きます。書留、もしくは本人限定受取郵便で届くので、確実に受け取れるようにしておきましょう。

引っ越しを控えている場合は、引っ越しおよび住民票の移転も完了してから申し込むのをおすすめします。

裏面への署名は必須

なお、デビットカードにも、クレジットカードと同様、裏面に署名欄が設けられています。デビットカードが届いたら、すぐに油性サインペンなどのにじんだり、消えたりしない筆記用具で自分の名前を書きましょう。

(注意)名前を書かずに使い続け、どこかで落としたり、盗難にあったりした場合、不正利用にあっても補償の対象外になる可能性が高いです。

デビットカードのメリット・デメリット

デビットカードのメリット・デメリット

ここで、デビットカードのメリット・デメリットについて解説しましょう。

メリット

デビットカードのメリットは

  1. 審査がいらない
  2. 使いすぎを防げる
  3. ポイント、キャッシュバックを受けられる
  4. 海外でも使える
  5. 中高生でも持てる

の5点です。

それぞれについて、詳しく説明しましょう。

1.審査がいらない

デビットカードを作るにあたっては、審査は原則として行われません。

woman
なんで審査しないんですか?

デビットカードには、クレジットカードと違い、「クレジットカード会社が一度、会員の利用分を立て替える」というプロセスがありません。クレジットカード会社にとっては、「会員から利用分を回収できない」という経営上のリスクを抱えなくて済むので、審査も必要ないのです。

一部、例外として銀行システム停止時や預金口座残高が不足している場合に、一時的に利用金額を立て替えるシステムを採用している銀行もあります。そのような場合は、デビットカードであっても審査が行われます。

そのため

  • クレジットカードを強制解約になったことがある
  • 自己破産などの債務整理をした

などの理由で、個人信用情報に金融事故の記録が残っている=ブラックリストに載っている状態でも、デビットカードなら作れます。

銀行口座が作れなければNG

ただし、

  • 闇金業者とトラブルになったことがある
  • 反社会勢力(例:暴力団)の構成員だった、もしくは交流があった
  • 刑事事件の被告になり、罰金刑以上の実刑に処された

などの理由で、銀行口座の開設自体を断られるケースがあります。その場合は、デビットカードも作れません。

2.使いすぎを防げる

クレジットカードの場合、審査の結果に基づき、クレジットカード会社が利用限度額を設定します。仮に、銀行口座にお金がなくても、利用限度額の範囲内でなら支払いに使えてしまうので、人によっては浪費の原因になる場合もあるでしょう。

一方、デビットカードの場合、基本的には銀行口座の残高の範囲内でしか支払いに使えません。

「自分は浪費家だから、クレジットカードだと使いすぎてしまいそう」と思うなら、クレジットカードよりはデビットカードをメインで使ったほうがいいでしょう。

3.ポイント、キャッシュバックを受けられる

デビットカードの特徴として、「ポイント、キャッシュバックを受けられるものも多い」ことが挙げられます。例えば、みずほ銀行で発行している「みずほJCBデビット」の場合、毎月利用額の 0.2%がキャッシュバック(1円未満切り捨て) されるのです。銀行のATMから現金を下ろして支払った場合、このようなキャッシュバックは受けられません。

曜日・時間帯によっては、ATM手数料を支払わなくてはいけないことを考えると、さらにお得でしょう。

4.海外でも使える

日本で発行されたデビットカードであっても、クレジットカードと同じように、海外でも使えます。

つまり

  • Visaの加盟店であればVisaデビットが
  • Mastercardの加盟店であればMastercardデビットが
  • JCBの加盟店であればJCBデビットが

使えるということです。

また、キャッシングに対応しているATMであれば、日本の銀行口座から現地通貨で現金も引き出せます。

  • Visaデビットであれば「Visa」「PLUS」のマークがあるATMで
  • Mastercardデビットであれば「Mastercard」「Cirrus」「Maestro」のマークがあるATMで
  • JCBデビットであれば「JCB」「Cirrus」のマークがあるATMで

使えると考えましょう。

実際に、ポーランドで三菱UFJデビットを使った方の体験談も参考にどうぞ!

5.中高生でも持てる

デビットカードは支払い能力の審査がいらないため、クレジットカードに比べると、年齢制限は緩くなっています。ほとんどのデビットカードが、15歳以上(中学生を除く)から持てます。また、ゆうちょ銀行で発行しているVisaデビットカード「mijica(ミジカ)」であれば、12歳以上で発行可能です。

ただし、いずれのケースでも親権者の同意が必要になります。
teacher
海外への修学旅行、語学研修の時にあるとやっぱり便利ですよ!

デメリット

何かと便利なデビットカードですが、デメリットももちろんあります。

ここでは

  1. 一部の取引では使えない
  2. 時間帯によっては使えない
  3. ポイント還元率・キャッシュバック率は低い
  4. 残高の範囲内でしか使えない
  5. 不正利用補償額の上限が低い
  6. 付帯サービスには期待できない

の6つについて説明しましょう。

1.一部の取引では使えない

デビットカードには「利用すると同時に支払額が確定し、即座に銀行口座から引き落とされる」という性質があります。

そのため

  • ガソリンスタンドでの給油
  • 公共料金の支払い
  • 高速道路の通行料

など、支払額が確定するタイミングが利用より後になる取引の支払いには、デビットカードは使えません。

また、デビットカード発行会社の側で

  • 過去にトラブルが頻発した加盟店
  • 取引の性質上、トラブルが起こりやすい加盟店

については、デビットカードでの支払いを受け付けていないケースもあります。

例えば、ソニー銀行のデビットカードの場合、以下の加盟店での支払いには、デビットカードが使えない決まりです。

※ ここの表エクセルで作るよ

2.時間帯によっては使えない

デビットカードは、利用と同時に銀行口座からの引落が行われます。

そのため、銀行口座が利用できない時間帯には、デビットカードでの支払いもできません。

たとえば

  • システムメンテナンスの時間帯
  • 大規模なシステム改修が行われている期間

は、デビットカードも使えないのです。

これらの時間帯、期間は銀行のホームページや店頭で確認できます。

3.ポイント還元率・キャッシュバック率は低い

一般的に、クレジットカードのポイント還元率・キャッシュバック率は0.5%程度と言われています。しかし、中には、1.0%を超える高還元率のものもあります。

一方、デビットカードのポイント還元率・キャッシュバック率は0.2%~0.5%程度です。

teacher
参考までに、主要な都市銀行で発行しているデビットカードのポイント還元率・キャッシュバック率をまとめてみました。
銀行・カード名 ポイント還元率 キャッシュバック率
三菱UFJ銀行「三菱UFJデビット」 (ポイント還元なし) 0.20%
みずほ銀行「みずぼJCBデビット」 (ポイント還元なし) 0.20%
三井住友銀行「SMBCデビット」 0.50% 0.25%
りそな銀行「りそなデビットカード」 0.50% (キャッシュバックなし)
※交換商品により、還元率は異なります。ポイントアップの特典もございます。
ポイント還元率・キャッシュバック率の高さを求めている人には、デビットカードはやや物足りないかもしれません。

4.残高の範囲内でしか使えない

デビットカードは、銀行口座の残高の範囲内でしか使えません。

無駄遣いをしない、という観点からはこれは大きなメリットですが

  • 結婚式
  • 家具、電化製品のまとめ買い

など、一度に数十万、数百万単位の買い物をする際は、大きなデメリットになります。

さらに、銀行によっては、銀行口座の残高とは別に、デビットカードで決済できる金額に上限を設けているケースもあるのです。

例えば、みずほ銀行の「みずほJCBデビット」の場合、利用上限額は以下のように決められています。

初期設定 1日あたり : 50 万円
1回あたり : 50 万円
11ヵ月あたり : 100 万円
設定可能最大額 1日あたり : 200 万円
1回あたり : 200 万円
1 ヵ月あたり :  250 万円
高額な買い物をする予定がある場合は、あらかじめ、銀行口座に必要な金額を入金しておくか、クレジットカードで支払うかを考えておいたほうがいいでしょう。

5.保険による補償が手薄

デビットカードにも、クレジットカードと同様に

  • お買い物保険(ショッピング・プロテクション)
  • 海外旅行保険

が付帯しているものが多いです。

しかし

  • 補償額が低い
  • 補償期間が短い
  • (海外旅行保険については)利用付帯である

など、補償内容は充実しているとは言えないものもやはり多くなっています。

あくまで「必要な補償はクレジットカードで賄うから大丈夫」と割り切ったほうがいいかもしれません。

6.付帯サービスには期待できない

クレジットカードの中には

  • 特定の店舗での利用で、ポイント還元率がアップする
  • 国内、海外の空港でラウンジが使える

など、充実した付帯サービスを誇るものも多くあります。しかし、デビットカードでそのような付帯サービスがあるものは、ごくわずかです。仮に付帯サービスがあったとしても、一般的なゴールドカードで受けられるもの程度である場合が大半でしょう。

「付帯サービスが充実していること」を求めるなら、デビットカードよりはクレジットカードを使うのをおすすめします。 

まとめ

デビットカードは、ほとんど誰でも持つことができ、無駄遣いにもつながりにくいのが大きなメリットです。そのため、「今までキャッシュレスになじみがなかった」人でも、比較的使い始めやすいでしょう。

しかし、クレジットカードに比べると、使い勝手が悪い部分もあるので、利用するシーンに応じて、適宜使い分けるのをおすすめします。

teacher
「まだデビットカードを持っていない」という人は、こちらの記事も併せてどうぞ!

コメントを残す