インターネット上には、時折「会社を退職する前にクレジットカードは作ること」という意見が散見されます。もちろん、ゴールドカードも例外ではありません。また、退職する直前にゴールドカードを作った場合、退職した後でも使い続けられるのかという疑問はやはり残るでしょう。そこで今回の記事では
- ゴールドカードを作るのは退職後より退職前に済ますべき理由
- 退職後もゴールドカードを使い続ける際の注意点
について解説します。
ゴールドカードを作るのは退職後より退職前に済ますべき理由
最初に、ゴールドカードを作るのは退職後より退職前に済ますべき理由として
- 同じゴールドカードでも審査に通りにくくなる
- すぐに転職先が決まるとは限らない
- 転職してから半年経過するまではカードの申込自体を控えたほうがいい
が挙げられます。それぞれについて、詳しく解説しましょう。
1.同じゴールドカードでも審査に通りにくくなる
クレジットカード自体が珍しかった時代ならともかく、少なくとも2020年の今なら、ゴールドカードの審査に通ること自体は、安定継続した収入があれば、それほど難しくありません。別に一部上場企業や公務員のように「同世代の平均より給料の高い職場」に勤めているわけでなくても、これまでのクレジットカードの利用状況に取り立てて問題がなければ、審査に通る可能性は十分にあるでしょう。
カード会社が「無職」や「起業したての経営者」を嫌う理由
しかし、仕事を辞めて無職になったり、起業する準備に入ったりしてからゴールドカードを申し込んでも、審査には通らないことが多いです。その理由は、クレジットカード会社が審査において何を重視しているかを考えればすぐにわかります。
- 加盟店=クレジットカードを利用できる店舗で会員が買い物をする
- 加盟店からの連絡に基づき、クレジットカード会社は会員の利用分を会員に代わって立て替えて支払う
- クレジットカード会社は一定期間の会員の利用状況に基づき、請求額を確定させ、会員に通知する
- 所定の引き落とし日に、支払い元として指定した銀行口座から請求額が引き落とされる
このような流れを考えると、確定させた請求額が所定の日に支払われないことは、クレジットカード会社にとって重大な経営上のリスクになります。
2.すぐに転職先が決まるとは限らない
もちろん、会社を退職した後、一時的に無職になったとしても、転職先が決まって働き始めれば、いずれ給料は入ってきます。しかし、状況次第ではその前提も崩れることに注意しましょう。
転職活動が長期化した場合生活に困窮する恐れがある
転職活動の期間がどれぐらいになるのかは、その人の年齢や職種、社会全体の状況によって様々です。早い人なら1カ月で決まることもあるし、1年近く転職活動をしても決まらないことだってもちろんあり得るのでしょう。
問題なのは、その間の生活費をどうするかということです。十分な貯金があるなら気にする必要はありませんが、転職活動が長期化すると、だんだん貯金は減っていきます。状況次第だと、生活に困窮するほどにお金が無くなることもあり得るのです。
起業する場合はさらに注意が必要
さらに注意が必要なのが、会社を退職後に起業する予定の人です。どんな業種の会社を立ち上げるのか、退職するまで事業資金としていくら貯金してきたかにもよりますが、事業を立ち上げ、すぐに黒字転換できる人はまれです。2~3年やって黒字転換できる人の方が、圧倒的に少ないでしょう。つまり、しばらくは経営者である自分自身の持ち出しになってしまう状態が続くのも覚悟したほうがよさそうです。
このような背景があるため、会社を退職して起業した人が、クレジットカードを作るのは難しいと言われています。最近は、起業したての個人事業主や経営者に向けた法人クレジットカードの募集が開始されるなど「起業する」ということが、仕事をする上での選択肢としても広く認知されるようになりした。しかし、審査に通らないことは往々にしてある上に、通ったとしても利用限度額はそれほど高くないのも事実です。
■起業あるある
〜パート3〜・思ってる以上にお金が残らない
→勘定あって銭足らず・オンオフの境目がなくなる
→No Work No Life・電話が鳴らないと不安になる
→携帯壊れてんじゃない?って思う・何かと審査が厳しくなる
→なぜかクレカ作れない。。— 島田雄左 (@shimadayusuke66) January 9, 2020
3.転職してから半年経過するまではカードの申込自体を控えたほうがいい
退職後の転職先が既に決まっている場合でも、注意が必要です。転職してから半年経過するまでは、ゴールドカードを含めて、クレジットカードの申込自体は控えたほうがいいでしょう。
試用期間終了後の正式採用見送りもあり得る
日本の会社の場合、入社した後の一定期間を「試用期間」として設けていることが多々あります。具体的な期間は会社によってまちまちですが、過去の裁判では1年を超える試用期間は無効とされたため、3カ月~半年程度の場合になることが多いです。
試用期間はあくまで「お試し期間」であるため、働いている人が「この会社でずっとやっていくのは厳しい」と思ったら、本採用には進みません。また、数としてはかなり少ないですが、会社側が「この人にずっと働いてもらうのは厳しいのではないか」と判断した場合も、本採用の見送りが行われることがあり得ます。
いずれにしても、働きだして3カ月~半年間は、安定継続した収益が得られるかどうかはわからないということです。勤続期間が短いから、ということだけで審査に落ちるとは限りませんが、その他の要素次第では、かなり不利に働くと考えてください。
勤続年数はめっちゃ気にされるよ。転職直後だと、おそらくクレカは作れない。
— HODA (@_HODA) January 25, 2018
退職後もゴールドカードを使い続ける際の注意点
逆に、これまでゴールドカードを使ってきた人が、退職したあともゴールドカードを使い続けたい場合はどうすればいいのかについて、考えてみましょう。
1.クレジットカード会社には退職した事実を伝える
最初にやるべきことは、クレジットカード会社に退職した事実を伝えることです。
利用規約上は妥当な行動
どのクレジットカード会社の利用規約にも「登録事項に変更が生じた場合は、速やかに連絡すること」という旨の一文が盛り込まれているはずです。クレジットカード会社は会員から提出された情報とこれまでのクレジットカードの利用状況を鑑み、支払能力を常にチェックしています。そのため、前提となる情報に変更が生じた場合は、速やかに知らせるのが必要です。
退職してもカードを持ちつづけること自体は可能
たとえ、これまでゴールドカードを持っていた人が、それまで勤務していた会社を退職し、その旨をクレジットカード会社に知らせたとしても、クレジットカードを使い続けられる場合がほとんどです。
そもそも、クレジットカード会社がなぜ会員の年収や職業を知りたがるのか、考えてみましょう。クレジットカード会社にとって重要な課題の1つは「会員から請求日に定められた請求額をきっちり回収すること」です。そのため、この課題を達成できるだけの支払能力が会員にあるかが問題になります。支払能力を推し量るための情報として、年収や職業を参考にしているのです。
裏を返せば、支払能力があると認められれば、仕事をしているか、していないかは、さほど問題にはなりません。ましてや、無職になったことだけを原因に強制解約されるのは、考えにくいでしょう。ただし、問題になるのは、転職活動が長期化し、日々の生活に困窮するようになったなど、支払能力に明らかな問題が生じた場合です。延滞・滞納を繰り返すようになれば、クレジットカード会社側から強制解約の処分を下されても不思議ではありません。
2.退職後の身の振り方に応じた適切な対応をする
ゴールドカードを発行しているクレジットカード会社に連絡するのはもちろんですが、その後の身の振り方をどうするかによっても、伝えるべきことは異なります。ここでは、次の5つのケースを想定し、どのような対応が妥当なのか考えてみましょう。
- 転職先が既に決まっている場合
- 転職先がまだ決まっていない場合
- 独立起業する場合
- 結婚して専業主婦・主夫になった場合
- 海外への移住、留学をする場合
1.転職先が既に決まっている場合
すでに転職活動をして内定をもらい、入社する会社が決まっている場合は、その会社の名前を伝えればいいでしょう。連絡する時期と実際に就業を開始する時期に開きがある場合は「●月●日から働き始める予定です」と伝えておきましょう。
2.転職先がまだ決まっていない場合
逆に、転職活動をしてはいるものの、内定がまだ出ていなかったり、転職活動もまだ始めていなかったりする場合は「転職活動をしている(これからするつもり)」と伝えましょう。転職活動と並行してアルバイトをしている場合は「アルバイトをしていて収入はある」旨も伝えておくと効果的です。
3.独立起業する場合
会社を辞めて独立起業する場合、すでに法人を設立していたり、個人事業主として届出を済ませていたりする場合は、会社名や屋号を伝えましょう。独立起業した旨や会社名・屋号を伝えた際に「どんな業務を扱っている会社なのか」聞かれるかもしれません。
4.結婚して専業主婦・主夫になった場合
結婚して専業主婦・主夫になった場合は、退職した旨を伝えると同時に、苗字変更の手続きをしなくてはいけません。苗字が変更になる場合は、マイナンバーカードや運転免許証など「旧姓の苗字と新姓の苗字の両方がわかる本人確認書類(のコピー)」の提出が必要になるので、基本的に郵送のやり取りになります。
使っているゴールドカードを発行しているクレジットカード会社に連絡し、必要な書類と手続きについて聞いてください。また、その時に配偶者の年収を聞かれることがあるので、質問されたらすぐに答えられるようにしておきましょう。
5.海外への移住、留学をする場合
最も注意が必要なのがこのケースです。
- 海外に滞在する期間がどのくらいなのか
- 日本国内の連絡先にできる家族はいるのか
によっても、対応がかなり異なりますので、想定されるケースをいくつか考えてみましょう。
1.海外への滞在予定が1年未満で、日本国内に家族がいる場合
この場合は、日本で利用しているクレジットカードはそのまま持っていって構わないでしょう。海外への滞在予定が1年未満であれば、税法上の非居住者には当たらないためです。ただし、クレジットカード会社から郵便物が届く場合があるので、受取人として日本国内に在住している家族を指定しておきましょう。
2.海外への滞在予定が1年以上で、日本国内に家族がいる場合
この場合は、日本で使っているクレジットカードをそのまま持っていくのは考えものです。支払元の口座として指定している銀行が「非居住者の口座の利用はできない」旨を利用規約で設けていた場合、海外に長期滞在する場合は、その銀行口座自体が利用できなくなります。
まずは、非居住者でも利用できる銀行で口座を開設し、クレジットカードの支払元としてもその銀行の口座を指定しましょう。また、クレジットカード会社から郵便物が届く場合があるので、受取人として日本国内に在住している家族を指定しておくのも忘れないようにしてください。
3.海外への滞在予定が1年以上で、日本国内に家族がいない場合
非居住者でも利用できる銀行で口座を開設するところまでは、日本国内に郵便物の受取人として指定できる家族がいる場合と同じです。しかし、日本国内に郵便物の受取人として指定できる家族がいない場合は海外への郵便物への郵送に対応してくれるクレジットカード会社を選び、クレジットカードを1枚作っておくといいでしょう。
例えば、三井住友カードの場合は、海外生活ヘルプデスクという名前で、在外邦人向けのサービスを提供しています。
同じSMBCグループに属する三井住友銀行も「SMBCダイレクト・グローバルサービス」という名前で、インターネットバンキングを主体とした在外邦人向けのサービスを提供しているので、セットで考えるといいかもしれません。
なお、渡航先の国の事情にもよりますが、居住を開始してすぐの場合、銀行口座やクレジットカードを作るのは難しいこともあります。当座の生活をしのぐためにも、最低1枚は日本でクレジットカードを作り、持っていきましょう。また、家族の赴任に同行したり、留学したりするなどの理由で海外に滞在する場合は、クレジットカードの扱いを含め、勤務先や学校から指示があるはずです。基本的には、それに従うようにしてください。
海外赴任決まったとき旦那にクレカをゴールドカードにしたいと頼んだのにお金が勿体無いからヤダと言われた。そのせいでいろいろ面倒。不正利用された?とかで今また1枚使えないし…ここの会社以前にもあったから日本帰ったら止めよう。
— nezumigashira (@nezumigashira) February 21, 2018