学生のうちにクレジットカードを持つべき9つの理由
というように「学生がクレジットカードを持つこと」に抵抗を覚えるご家族はいらっしゃるでしょう。
しかし、ここでは結論として
と言い切ります。その理由について、次の9つの観点から解説しましょう。
- 学生のうちは審査に通りやすい
- 防犯上優れている
- 国がキャッシュレスを強力に推し進めている
- 節約にも役立つ
- 海外研修、留学時の支払い手段として使える
- 資格試験、検定の受験手続がしやすくなる
- 携帯電話代、水道代、電気代などの支払い漏れがない
- 就職活動の時に何かと必要になる
- 社会人になってからクレジットカードを作れなくなることもある
1.学生のうちは審査に通りやすい
クレジットカード会社の重要な経営課題の1つに
が挙げられます。このような背景があるため、学生向けのクレジットカードを発行し、利用実績に応じては早い段階で上位カードへの切り替えに対応するなど、学生を優遇しているクレジットカード会社が多く存在するのも事実です。
また、学生は本来、学校に通って勉強するのが本分であるため
- 携帯電話代金の延滞・滞納をしたなど支払能力に著しく疑問を抱かせるトラブルを起こした
- 家族が延滞・滞納、強制解約などのクレジットカードを巡るトラブルを起こした
など、特殊な理由がない限りは、クレジットカードの審査にも通りやすくなっています。
2.防犯上優れている
現金と比較した場合、クレジットカードは防犯面で優れています。
現金はどこでも使えるという強みを有していますが、一方で、万が一紛失・盗難にあった場合は、ほぼ戻ってきません。紛失・盗難にあった金額がそのまま損害になってしまうのです。
一方、クレジットカードは紛失・盗難にあった場合でも再発行ができる上に、それが原因で不正利用された場合でも、補償が受けられます。
3.国がキャッシュレスを強力に推し進めている
日本は諸外国に比べると
- 治安が良く、現金を持ち歩いていても犯罪に巻き込まれる可能性が低い
- 紙幣・硬貨の製造技術が発達しているため、偽造紙幣・硬貨も出回りにくい
という条件から、現金が広く用いられてきました。
しかし、2020年開催の東京オリンピックに備え、外国人観光客の支払い手段を確保するという意味から、近年、キャッシュレス決済への移行を強力に推し進めています。
さすがに、スウェーデンやデンマークなどの北欧諸国のように
- 現金の新規発行を取りやめる
- 商店、交通機関でもキャッシュレスでの支払いを基本とし、現金は受け付けない
といった「完全にキャッシュレスにシフトする」のは、現状の日本においては考えにくいでしょう。しかし、職員の利便性を図り、不正経理や脱税を防止するという意味でも、キャッシュレスの導入に踏み切る商店や公共機関は増えています。
4.節約にも役立つ
クレジットカードによる支払を行うと、利用額に応じたポイントが付与されます。このポイントは
- 景品に交換する
- 支払の一部に充当する
- 慈善団体への寄附に使う
など、ほぼ貨幣と同じ価値を持つものです。
5.海外研修、留学時の支払い手段として使える
学校に在学している間に、海外研修や留学に行く予定がある場合は、クレジットカードは必須です。海外ではクレジットカードでの支払いが主流であるため、日本からクレジットカードを持っていかないと日々の生活もままなりません。
2000年代初めごろまでは、海外に行った際の支払い手段として、トラベラーズチェックが広く用いられていました。これは、旅行者用小切手のことで
- ホテルなど観光客がよく利用する施設ではそのまま支払いに使える
- 現地の銀行に持っていくと、手数料を指し引いた上で、所定の通貨で払い戻してくれる
というのが基本的な仕組みでした。しかし
- トラベラーズチェック本体を持ち歩かないといけない
- あらかじめ所定の場所にサインした上で、渡すときにも別の場所にサインをしないといけない
など、使い勝手が悪かったのも事実です。そのため、2010年代に入ってからは、日本においてはほとんど用いられなくなりました。
6.資格試験、検定の受験手続がしやすくなる
学校に在学している間に、資格試験、検定を受験する場合も、クレジットカードがあった方が便利です。近年は、様々な資格試験、検定における受験料の支払いに、クレジットカードが利用できるようになっています。
7.携帯電話代、水道代、電気代などの支払い漏れがない
これは特に「学校に進学するのを機に親元を離れる」お子さんがいる場合に考えてほしいことです。
- 水道代
- 電気代
- ガス代
などの公共料金や、携帯電話代を支払い忘れると、支払いが済んでいない料金を支払うまでは使えなくなってしまいます。
8.就職活動の時に何かと必要になる
東京、大阪などの大都市圏に住んでいるとあまり意識しないかもしれませんが、地方に住んでいる場合は、就職活動がかなり大変になる恐れがあります。会社説明会や選考に参加するために、新幹線や高速バスでの移動、現地での宿泊が必要になるのも珍しくありません。
これらの出費はもちろん現金でも支払えますが、多額の現金を持ち歩くのは、紛失・盗難のリスクもあるので注意しましょう。
9.社会人になってからクレジットカードを作れなくなることもある
学生のうちにクレジットカードを作らないこと最大の問題点として
が挙げられます。
クレジットカードやローンを契約すると、個人信用情報として履歴が残ります。クレジットカード会社や銀行などの金融機関は、この個人信用情報を精査したうえで、自社のサービスを提供するかどうかを決めているのです。
そして、審査にあたっては
必ずチェックされます。
確かに、クレジットカードやローンを使ったことがなければ、トラブルを起こすはずもないのは確かです。しかし、クレジットカードやローンを使ったことがない以外の理由で、個人信用情報に履歴が残らないケースも考えられます。
代表例が「過去に個人信用情報に異動情報が登録されていたため、一切の取引ができなかった」ケースです。つまり「ブラックリストに載っていたので、クレジットカードもローンも使えなかった」と考えましょう。
クレジットカード会社や銀行などの金融機関が見ているのは、あくまで「個人信用情報に何が書かれているか、書かれていないか」だけです。
このように、個人信用情報に一切の履歴がない状態を「スーパーホワイト」と言います。スーパーホワイトである原因を、クレジットカード会社や金融機関は知りようがないので、審査にも慎重にならざるを得ません。
学生がトラブルに巻き込まれずにクレジットカードを使うために決めるべき10つのルール
学生にとっても、クレジットカードがあった方が何かと好都合であるのはわかっていただけたはずです。しかし、お金が絡むことである以上、ルールを決めずに使ってしまうと、思いがけないトラブルに巻き込まれるおそれもあります。
そこで、最低限決めるべきルールとして、次の10項目について必ず話し合いをしておきましょう。
- 「何となく使う」は止めさせる
- 「後払い」であることを理解させる
- 一括払いを基本にする
- 不用意に人に見せない
- 友達には絶対に貸さない
- 延滞・滞納は厳禁であることを理解させる
- 利用明細をこまめに確認させる
- 裏面にサインをさせる
- 自分の端末以外でクレジットカードを使わせない
- 限度額は少なめにさせる
1.「何となく使う」は止めさせる
クレジットカードに限ったことではありませんが、お金を使う上でやってはいけないことの1つが「何となく使う」です。クレジットカードを使うときは
- まず、本当に必要な支出かを考える
- いくらまでなら払えるか具体的な金額を決める
- 迷ったときは衝動買いをせず、一度立ち止まって考える
など「何となく使わない」ための工夫を心がけさせましょう。
2.「後払い」であることを理解させる
クレジットカードでの支払いの一般的な流れを見てましょう。
- クレジットカードを持っている人(会員)が、クレジットカードが利用できるお店(加盟店)で、クレジットカードによる支払を行う
- クレジットカード会社は、加盟店からの連絡を受け、手数料を差し引いた金額を会員に代わって一度立て替える
- クレジットカード会社は会員の一定期間における利用額を集計し、会員に対して請求を行う
- 所定の引き落とし日に、会員の銀行口座から請求額の引き落としが行われる
この一連の流れを見てもわかるように、クレジットカードでの支払いは「後払い」が基本です。自分がいくら使っているのか把握せずに、クレジットカードを使い続けてしまうと、後になってびっくりするような金額の請求が届くのも珍しくありません。
期限通りに支払いができない、という事態を避けるためにも
- まずは「後払い」であることを理解させる
- 使っている金額を把握し、銀行口座にいつ準備すればいいかを考えさせる
の2点は徹底させましょう。
3.一括払いを基本にする
クレジットカードでの支払いを「支払い回数」で大まかに分類すると、以下のようになります。
- 一括払い:利用額を1度で支払う
- 分割払い:利用額をあらかじめ決めた回数(3回、5回等)で支払う
- リボ払い:あらかじめ決めた金額を毎月支払うことで、元本と利息の残高を返済していく
- ボーナス払い:利用額を、クレジットカード会社が決めた指定月にまとめて支払う
このうち、分割払い・リボ払いを行った場合は、金利手数料がかかります。返済も長期化する恐れがあるため、途中で支払いができなくなるリスクもあるのです。
また、ボーナス払いの場合、金利手数料はかかりませんが、指定の月にまとまった金額を用意しなくてはいけません。用意できなかった場合、やはりトラブルにつながります。
4.不用意に人に見せない
オンラインショッピングが普及する前は、クレジットカードでの支払いは「クレジットカード本体を用いて行う」が前提でした。しかし、現在のようにオンラインショッピングが普及した現状では、たとえクレジットカードの本体がなくても
- クレジットカード番号
- クレジットカード会員名
- 有効期限
- セキュリティコード(カードの券面に記載されている3桁もしくは4桁の番号)
の4つがわかれば、支払はできてしまいます。つまり、クレジットカード本体があるかないかに関わらず、自分が知らないところで使われてしまう可能性があるのです。
5.友達には絶対に貸さない
クレジットカードは本来、申込をしてきた人の支払能力を審査した上で、所定の基準を満たすと判断した場合に発行されます。そのため、いかなる理由があっても、クレジットカードの表面に書かれた名義の本人しか利用することはできません。
万が一、友達に貸したことで
- 勝手に使い込まれていた
- 紛失、盗難にあい、不正利用されていた
としても、そのことにより被った損害は免れることはできません。
6.延滞・滞納は厳禁であることを理解させる
お子さんが大きくなるまでに「約束は守ること」「時間に遅れないようにすること」をしつけてきたご家族は非常に多いはずです。クレジットカードの支払いもこれと同じで、延滞・滞納は厳禁であることを伝えましょう。
クレジットカードを利用した履歴は、個人信用情報にすべて登録されるのです。
万が一、長期(目安は61日以上)にわたる延滞・滞納があった場合、個人信用情報に異動情報として登録されてしまうので注意しましょう。
また、延滞・滞納が長期に渡らなかったとしても、クレジットカード会社内部で情報は共有されています。
延滞・滞納を理由として、クレジットカード会社側から強制解約を行うこともあり得るので、注意しましょう。
7.利用明細をこまめに確認させる
オンラインショッピングの普及により、クレジットカード本体がなくても、支払ができるようになりました。そのため「自分では利用した覚えがないにも関わらず、知らないところでクレジットカードが使われている」のも十分にあり得ます。
クレジットカードが不正利用された場合、クレジットカード会社から補償が受けられますが「実際に不正利用された日から61日以上経過していた」場合は、補償が受けられません。
8.裏面にサインをさせる
クレジットカードをめぐるトラブルで意外と多いのが「裏面にサインをしないままクレジットカードを落としたことで不正利用された」です。
クレジットカードを受け取ったら、裏面にある署名欄にサインを書かないといけません。
しかし、サインをしない状態で落としてしまった場合、拾った人が表面のクレジットカード会員名を見て、適当にサインを書いてしまうこともできてしまうのです。
9.自分の端末以外でクレジットカードを使わせない
クレジットカードには
- クレジットカード番号
- クレジットカード会員の名前
- 有効期限
- セキュリティコード
が1枚1枚割り振られています。そして、これらの情報があれば、クレジットカードの実物がなくても、オンラインショッピングで買い物ができてしまうのです。
端末の設定によっては、入力した情報がそのまま残っているケースも考えられます。仮に、他人の端末でクレジットカード情報を入力し、そのまま残ってしまった場合、心無い人が見たら悪用される可能性は十分にあるのです。
10.限度額は少なめにさせる
一般的に、学生がクレジットカードを利用する場合、一般的なクレジットカードと比べると、限度額の上限はかなり低めに設定されています。
例えば、
- 一般向け:~100万円
- 学生向け:10万円~30万円
として設定されているのです。
実際のところは、最初にクレジットカードを作るときは低め(10万円程度)の限度額からスタートし、利用状況に応じて上下していくでしょう。仮に、限度額が大きくなったからといって、それは「自由に使っていいお金」というわけではありません。
学生のうちは
- 海外に出かける予定がある
- 引っ越し、就職活動などまとまった出費がある予定がある
など、特殊な事情がない限りは、できるだけ限度額は少なめにさせましょう。
【参考】成年を迎えたときに改めて話し合う
クレジットカードを申し込む際は、未成年者であれば親権者の同意が必要とされています。裏を返せば、成年(満20歳)になれば、親権者の同意は必須ではなくなるということです。その時、親がどこまで関与するかは、家庭やお子さんの事情により異なるでしょう。
学生がクレジットカードを選ぶときに注意すべきポイントは?
学生のお子さんがクレジットカードを選ぶときに注意すべきポイントとして
- 大手の会社が発行するものを選ぶ
- 大学が発行するクレジットカードも1つの選択肢
- 海外旅行傷害保険の内容を確認すること
- 年会費は無料もしくは数千円程度まで
の4つを解説しましょう。
1.大手の会社が発行するものを選ぶ
一口に、クレジットカード会社と言っても
- いわゆる上場企業、もしくはそれに準ずる規模の会社
- 地方銀行の系列会社など、極めて小規模な会社
など、様々な会社があります。
このような会社のメリットとして
- たくさんの顧客を手掛けてきたのでノウハウが蓄積されている
- コールセンタースタッフの対応について定期的に研修を行っている
- 外部の企業と提携したサービスも受けられる
などが挙げられます。
2.大学が発行するクレジットカードも1つの選択肢
- 学生のうちは限度額をなるべく少なくしてほしい
- 何かトラブルがあったときに相談できる窓口が欲しい
という場合は、学校(特に大学)が外部のクレジットカード会社と提携して発行しているクレジットカードを選ぶのも1つの方法です。
学校によっては
- 卒業生組織の運営費
- 学校独自の奨学金制度の運営費
などに充てることを目的とし、クレジットカードを発行している場合があります。これらのクレジットカードは
- 卒業生、学生の父母向けのもの
- 在学生向けのもの
と分けて発行されますが、在学生向けのものには
- 低い限度額を設定
- キャッシング、リボルビング払いの利用不可
- トラブルがあった場合の相談室を設置
など、可能な限り安全にクレジットカードが使えるよう、工夫が凝らされているのです。
3.海外旅行傷害保険の内容を確認すること
これは特に、お子さんが在学中に
- 1人もしくは友人と海外旅行に行きたいといっている
- 夏休み、冬休みなどの長期休暇中に語学研修がある
- 在学中に海外キャンパスへの留学が義務付けられている
場合にとくに注意してほしいことです。
クレジットカードの中には、海外旅行傷害保険が付帯しているものがあります。海外旅行傷害保険の内容は
- 利用付帯か、自動付帯か
- 何をどこまで補償してくれるのか
を中心に、お子さんとかならず確認しましょう。なお、利用付帯および自動付帯には
- 利用付帯:そのクレジットカードを使って旅行代金の支払いをしたとき「のみ」補償が受けられる
- 自動付帯:そのクレジットカードの会員である限りは補償が受けられる
という違いがあります。
学生向けのカードと海外旅行傷害保険については、この記事でも詳しく書いています。
4.年会費は無料もしくは数千円程度まで
クレジットカードの年会費は、ステータス(会員ランク)と付帯サービスにほぼ比例します。当然、ゴールドやプラチナなど、ステータスが高いクレジットカードになれば、付帯サービスも充実しますが、年会費もかかるのです。
学生のお子さんが持つことを考えたら、クレジットカードの年会費は無料、かかっても数千円程度のもので十分でしょう。
年会費は無料、もしくは数千円程度のクレジットカードであっても、ポイントが貯まりやすかったり、海外旅行傷害保険が自動付帯していたりするカードはちゃんとあります。
【参考】どうしてもクレジットカードを使わせたくない場合の代替案2つ
学生のうちにクレジットカードがあった方がいい、とはいうものの、学生のうちはご家族に生活を支えてもらっている場合がほとんどである以上、ある程度は意向も伝えるほうがいいでしょう。
ここでは
- 家族カード
- デビットカード
を紹介します。
1.家族カードを作る
クレジットカードは、本来はカードの券面に記載されている名前の人しか利用できません。しかし、クレジットカード会員本人からの申し出があれば、家族に使わせるための追加カード(家族カード)を発行してもらうことができます。
2.デビットカードを作る
デビットカードは、銀行が発行している決済用のカードの1種類です。使えるお店=加盟店で支払いを行うと、その場で支払元に指定した銀行口座から利用額の引き落としが行われます。
なお、現在は国際ブランドデビットといって、クレジットカードが使えるお店であれば、同様に支払いに使えるものが主流です。