一般的に、クレジットカードと比較した場合、デビットカードなら持ちやすいといわれています。
しかし、近年、金融犯罪抑止の観点から、銀行口座開設にあたっての審査は厳しさを増しています。そのため、銀行口座自体を開設できず、デビットカードも作れない人は一定数いるのです。
今回の記事では
- デビットカードの審査とは
- 与信審査に通らないケース
- 銀行口座開設を断られるケース
に分けて、デビットカードの審査基準について解説します。
デビットカードの審査とは?
デビットカードの審査といった場合に考えられるのは
- 返済能力に関する審査
- 銀行口座開設にあたっての審査
の2つです。
返済能力に関する審査(与信審査)
前者の返済能力に関する審査について説明しましょう。
わかりやすく言うと「貸したお金を返済する力があるか」を判断するための審査です。
- 年齢
- 職業
- 年収
- 居住形態
など、様々な要素を用いて、申し込み手続きを行った人の返済能力をチェックします。返済能力が、カードの発行会社が求める水準に達していれば、審査に通過できる仕組みです。
立替制度があるタイプは要注意
デビットカードは「決済時に銀行口座の残高が不足していた場合、決済を通すことができない」のが基本です。
しかし、一部のデビットカードには、会員の利便性向上の観点から「決済時に銀行口座の残高が不足していた場合、一定の範囲内まで立替を行い、後日引き落としを行う」制度を導入しているものがあります。このタイプのデビットカードの場合、カードの発行会社は、立替えたお金を支払ってもらえるかどうか=返済能力が求める水準に達しているかを綿密に調査しなくてはいけません。
銀行口座開設にあたっての審査
銀行口座開設にあたっても、審査が行われます。
銀行口座開設にあたって審査が行われる理由
金融庁は、銀行の業務を適正化するための指針として「主要行等向けの総合的な監督指針」を発表しています。その中にある、銀行口座の開設についての指針を抜き出してみましょう。
(5)口座の不正利用等を防止するため、預金の支払や口座開設等に当たって、必要に応じ、取引時確認の実施や口座の利用目的等の確認を行うなど、適切な口座管理を実施するための内部管理態勢が整備されているか。また、口座の不正利用による被害防止のあり方について検討を行い、必要な措置を講じているか。
このような指針が設けられた経緯についても解説します。一言でまとめると「マネーロンダリングを防止するため」です。
そして、かつては規制が緩かったことから、暴力団などの反社会勢力や国際テロ組織が
- 目的を明確にせず銀行口座を開設する
- 他人が作った銀行口座を買い取る
などして、マネーロンダリングのために銀行口座を濫用していたのです。
これらの問題を打開すべく、2007年に犯罪収益移転防止法が制定され、翌年の2008年から全面施行されました。犯罪収益移転防止法の制定を受けて、銀行では預金口座の開設などの取引を行う際に
- 氏名
- 住所
- 生年月日
- 取引目的
- 職業
などを確認する手続きが行われています。
日本の金融機関のマネーロンダリング(資金洗浄)対策を審査する国際組織「金融活動作業部会」(FATF)の第4次審査が、10月末から始まる。日本にとって、「マネロン天国」の汚名返上のチャンスかと思いきや、不正送金の温床となる預金口座の闇売買が横行するなど、国際的な対策レベルとはいまだに温度差があるのが実情だ。金融機関は“先生”から厳しい指摘を受けるのでは、と戦々恐々としている。
出典:【経済インサイド】預金口座の闇売買に警戒感強まる マネロン国際組織が月末審査入り (1/2ページ) – 産経ニュース
与信審査に通らない5つのケース
デビットカードの中でも「一時的に銀行口座残高の不足額を立て替え、後日引き落としを行う」タイプのものに関しては、申し込みにあたって与信審査があります。
ここでは、与信審査に通らないケースとして
- クレジットカード利用額の延滞があった
- 奨学金や各種ローンの未払いがあった
- クレジットカードを強制解約された
- 債務整理をした
- 実は同姓同名の人がトラブルを起こしていた
の5つについて解説しましょう。
1.クレジットカード利用額の延滞があった
クレジットカードは、一定期間を区切って利用額を集計した上で会員に対して請求を行い、所定の引落日に実際の引き落としが行われます。そのため、引落日に銀行口座残高が足りないと、延滞になってしまうのです。
また、延滞を一定期間以上続けると、個人信用情報機関に異動情報として登録されてしまいます。なお、登録されるまでの期間は、個人信用情報によってまちまちです。
- CICの場合:61日以上または3カ月以上
- JiCCの場合:入金予定日から3カ月以上
- KSCの場合:返済日から一定期間
個人信用情報機関に登録されなかった場合でも、クレジットカード会社は顧客間とのトラブルをデータベース化し、自社およびグループ会社で共有しています。
2.奨学金や各種ローンの未払いがあった
- 貸与型奨学金の月々の返済分
- 住宅ローン、携帯電話端末の分割購入代
などを滞納した場合も、滞納が続いた期間次第では、個人信用情報機関に異動情報が登録されてしまいます。登録されてしまうと、クレジットカードや審査が必要なデビットカードも作れなくなるので、注意しましょう。
3.クレジットカードを強制解約された
- 利用規約に違反した
- 延滞、滞納が続いた
などの理由で、クレジットカードの更新を断られる場合があります。この場合も、個人信用情報機関に異動情報として登録されるので、クレジットカードや審査が必要なデビットカードは作れません。
4.債務整理をした
- 任意整理
- 個人再生
- 自己破産
などの債務整理をした場合も、個人信用情報機関に異動情報として登録されます。
5.実は同姓同名の人がトラブルを起こしていた
自分にまったく非がなかったとしても、同姓同名の人の個人信用情報機関に異動情報が登録されていた場合、かなり厄介です。
個人信用情報に関する説明は、この記事で詳しく行っています。
銀行口座開設を断られる7つのケース
一方、本人の支払能力に何ら問題がなくても、銀行口座の開設を断られるケースはあります。ここでは、代表的なケースとして
- すでに別に口座を持っていた
- 本人確認に応じられない
- 一定年齢に達していない
- 自宅から遠い店舗で開設しようとした
- なぜ口座を作りたいのか答えない
- 他人に使わせるために作ると判断された
- 海外で生活するのに使うと判断された
の7つについて解説しましょう。
1.すでに別に口座を持っていた
日本の銀行の場合、口座は1人につき1個まで開設できます。
銀行とのお取引きには、口座開設が必要です。原則として、お一人につき一口座を開設できます。普通預金と定期預金などが一緒になっている総合口座の場合、お一人一契約となります。
出典:銀行で口座開設をしよう! | F.銀行で手続き | 一般社団法人 全国銀行協会
そのため、同じ銀行で
- 両親や祖父母が自分の名義で銀行口座を作ってくれていた
- かなり昔に作った銀行口座の存在を忘れていた
場合、別に新しく銀行口座を作るのを断られてしまいます。
休眠口座だった場合の手続き
別に新しく銀行口座を作るのは断られてしまいますが、ずっと使っていなかった口座(休眠口座)をもう一度使えるように手続きをすること自体は可能です。
目安になるのは10年です。これは「休眠預金活用法」という法律に基づいています。
10年間取引がない銀行口座に預けられている残高を集めて、社会問題の解決のために用いられる制度です。
もちろん、10年以上取引がない状態だったとしても、所定の手続きを行えば、また使えるようになります。具体的な手続きや必要なものについては、それぞれの銀行に問い合わせてみましょう。
お預け入れいただいたまま、10年超出し入れがなく、お取引の動きのない状態になっている預金はございませんか。
当行では、このような預金も引き続きお預かりしています。預金通帳・証書とお取引印の確認など、所定の手続を経たうえで払い戻すことができますので、いま一度ご確認をお願いします。
また、「民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律」にもとづき休眠預金となった場合でも、当行を通じて、引き続き払い戻すことができます。
「民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律」についてくわしくはこちら
なお、預金通帳・証書・キャッシュカード・お取引印が見当たらない場合でも、ご本人さまの預金であることが確認できれば払戻しができますので、ご本人さまであることを確認できる資料(有効期限内のもの)のほか、口座の支店名や口座番号がわかるもの等をご用意のうえ、お近くの当行本支店の窓口までご照会・ご相談ください。
出典:長期間使用していない預金等のお取扱いについて | 三菱UFJ銀行
2.本人確認に応じられない
都市銀行、地方銀行などの店舗型銀行でも、ネット銀行でも、所定の本人確認書類の提出は必須となっています。これらが提出できない場合は「本人確認に応じていない」ことになり、銀行口座開設もできません。
なお、何が本人確認書類として認められるかは、銀行によって扱いに差があります。例えば、みずほ銀行の場合、以下の書類が店舗で口座開設をする際の本人確認書類として利用可能です。
自宅からパソコン、アプリで手続きをする場合よりも、はるかに広い範囲の書類が使えます。
また、口座開設申込書、オンラインで申し込む際のフォームには、もれなく必要事項を記入しましょう。記入漏れがあることも「本人確認をはじめとする情報の提供ができない」とみなされ、銀行口座を開設できない理由になりうるためです。
3.一定年齢に達していない
銀行によっては、銀行口座の開設にあたって年齢制限を設けている場合があります。そのような年齢制限がある場合は、本人でなく、代理人(両親、祖父母など)が本人名義で申し込むこともできないので注意しましょう。
Q.【口座開設】20歳未満でも口座開設はできますか?
A.満15歳以上のお客さまは口座開設いただけます。
満15歳未満のお客さまは、誠に申し訳ありませんが口座開設いただけません。
4.自宅・勤務先から遠い店舗で開設しようとした
都市銀行、地方銀行などの店舗型銀行の場合、自宅や勤務先から離れた店舗で銀行口座を開設しようとすると、断られることがあります。
Q ご質問
自宅の近隣店舗以外で口座を開設できますか。A ご回答
口座開設希望店舗は、原則として、ご自宅またはお勤め先近くにある店舗をお選びください。それ以外の店舗をご希望の際には、口座開設をお断りする場合があります。
出典:自宅の近隣店舗以外で口座を開設できますか。 | よくあるご質問 | 三菱UFJ銀行
ただし
- 地方の大学に進学する予定があるので、学校が始まる前にそこの地方銀行で銀行口座を開設したい
- 実家の家族の介護をする予定があるので、近くの地方銀行で銀行口座を開設したい
など、正当な理由がある場合は認められることも多いです。
5.なぜ口座を作りたいのか答えない
また、銀行口座を作りたい理由についても、必ず確認が行われます。あいまいない回答をしてしまうと、断られてしまう原因になるので注意しましょう。
確認が行われる際は
- 会社の給料を受け取るために使いたい
- 生活費用の口座として使いたい
など、はっきりと目的を伝えましょう。
6.他人に利用させるため作ると判断された
銀行口座を作る目的が、法に触れることに使うためと判断された場合も、断られてしまいます。特に気を付けるべきなのが「他人に利用させたり、譲り渡したりするために口座を開設する」ことです。犯罪抑止の観点から、銀行側も厳しくチェックを入れています。
預金規定により、他人による口座の利用や口座の譲渡は禁止されております。他人による口座の利用や口座の譲渡を目的とした口座開設はお断りさせていただきます。他人に利用させるために口座を開設することは、刑事罰の対象となる場合もございます。
また、口座開設後に預金規定に違反する場合には、口座のご利用を停止させていただいたり、解約させていただくこともございます。
出典:口座を開設されるお客さまへのお願い(個人) : 三井住友銀行
仮に、銀行口座自体は開設できたとしても、後々になって他人に利用させていたことが発覚した場合は、詐欺容疑で逮捕されることもあります。十分に注意しましょう。
出典:京都のアレフ信者を逮捕 銀行口座を不正開設疑い | 全国のニュース | 福井新聞ONLINE
7.海外で生活するのに使うと判断された
銀行の中には、非居住者による銀行口座の利用を認めていないところもあります。
Q.〔口座情報〕 海外に転勤することになったのですが、変更手続きはどうすればよいですか?
A.海外勤務などで非居住者となる場合は、当社の口座を解約していただく必要があります。
ご不明な点がある場合は、カスタマーセンター までお電話にてお問合せください。
出典:〔口座情報〕 海外に転勤することになったのですが、変更手続きはどうすればよいですか?
海外での生活費用口座として使うために、銀行口座を開設すると判断された場合、断られることもあるので注意しましょう。
まとめ
デビットカードの審査といった場合、厳密には、与信審査もしくは銀行口座開設の可否の判断の2つを指します。チェックされるポイントは違いますが、いずれにしても「不審な点がある」と判断された場合、デビットカードが作れないのは同じです。
- 必要な書類はすべて提出する
- 聞かれた質問は答えられるようにする
- 延滞、滞納はしない
など、至極当たり前のことをまずはやるようにしましょう。
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