ワーホリ・留学にクレジットカードの海外旅行傷害保険は使わないほうがいい5つの理由

woman
うちの親戚の子、どうも大学3年になると全員半年留学しないといけないみたいですよ。フランスに行きたい、と言っていましたけど、どうなることやら。
teacher
願いがかなうといいですね。
woman
でも、そういう時の保険って、どうするのがいいんでしょうね?さすがに半年も行くなら、クレジットカードの保険だけじゃダメだと思いますけど。
teacher
おっしゃる通りなんですよ。いい機会なんで、詳しく解説しますね。

大学、短期大学、専門学校のプログラムの一環として、在学生に留学を義務付けている学校は珍しくありません。また、社会人になった後でも、社会経験のためにワーキングホリデー(2国間の協定に基づいて、青年が異なった文化の中で休暇を楽しみながら、その間の滞在資金を補うために一定の就労をすることを認める制度、以下ワーホリ)に出かける人も増えてきました。

そこで問題になるのが「海外に滞在している間の保険をどうするか」ということです。イギリスなど、外国人であっても半年以上滞在する場合は現地の公的医療保険への加入を義務付けている国もありますが、そうでない国が大半です。そのため、自分で海外旅行傷害保険に加入し、現地での病気やケガに備えることになります。

結論から言うと、クレジットカードに付帯している海外旅行傷害保険だけで、留学やワーホリの間の病気やケガに備えるのは無理です。その理由として、次の5つを解説しましょう。

  1. 理由1.保険期間が短すぎる
  2. 理由2.途中から日本の海外旅行傷害保険には入れない
  3. 理由3.クレジットカードの海外旅行傷害保険ではカバーできない病気などがある
  4. 理由4.キャッシュレス医療が受けられるとは限らない
  5. 理由5.そもそもビザ(査証)が取れない

理由1.保険期間が短すぎる

理由1.保険期間が短すぎる

海外旅行傷害保険も含め、保険による保障が受けられる期間のことを「保険期間」といいます。クレジットカードに付帯している海外旅行傷害保険の場合、留学やワーホリの期間よりもはるかに保険期間が短いことがあり得るのです。

「日本出国時から90日」が一般的

多くのクレジットカード会社では、付帯している海外旅行傷害保険の保険期間を、日本を出国した日から90日間(3カ月)と定めています。

teacher
正確な理由はわかりませんが、日本国籍の人の場合、3カ月以内の観光目的の滞在であれば、ビザ(査証)の取得が免除されている国も多いです。「観光目的なら、どんなに長くても3カ月が限界」と考えられるため、クレジットカードに付帯している海外旅行傷害保険もあくまで「観光目的の旅行」を前提として設計されているのかもしれません。

「現地の公共交通機関を初めてクレジットカードで利用した時」が基準になるケースも

クレジットカードの中には、付帯している海外旅行傷害保険について、利用付帯の「利用」に、海外で利用した場合も含むとしているものがあります。例えば、三井住友カードの場合を見てみましょう。

三井住友カード

カード分類一般カード
国際ブランドVISA、Mastercard
申込方法-
発行スピード最短2営業日
年会費(税込)1,375円
年会費備考※初年度年会費無料はオンライン入会時に適用
※マイ・ペイすリボの登録+年1回以上のカード利用で年会費無料。
※VISA・MasterCard2枚お申し込みの場合は年会費275円
※カード利用代金WEB明細書サービス利用&過去1年間に6回以上の請求があると年会費550円割引
※年間利用合計額が100万円~300万円未満で年会費半額
※年300万円以上利用で翌年度無料
ショッピング限度額(上限)80万円
ポイント還元率(下限)0.50%
ポイント還元率(上限)2.50%
交換可能マイルANAマイル(1ポイント=3マイル、100ポイント以上100ポイント単位)
ETCカード年会費(税込)550円
電子マネーチャージiD利用、楽天Edy、WAON(オートチャージ可)、nanaco
海外旅行傷害保険/死亡後遺障害(最大)-
国内旅行傷害保険/死亡後遺障害(最大)-
ショッピング保険/国内利用(最大)100万円(リボ払い・分割払い(3回以上)の場合のみ)
「審査」「発行期間」口コミ平均DATA
審査通過率
審査通過/申込者数
ショッピング
限度額平均
キャッシング
限度額平均
カード発行
までの日数平均
対応
満足度
86%(36/42)36万円20万円9.1日4.1

※下記1~3のいずれかを満たした場合、補償適用となる保険金額です。

1.日本出国前に航空機、電車、船舶、タクシー、バスといった公共交通乗用具(※1)の利用代金を当該カードでクレジット決済した(※3)場合
2.日本出国前に宿泊を伴う募集型企画旅行(※2)の旅行代金を当該カードでクレジット決済した(※3)場合
3.日本出国後に公共交通乗用具(※1)の利用代金をはじめて当該カードでクレジット決済した(※3)場合

出典:海外旅行傷害保険|クレジットカードの三井住友VISAカード

これを読む限りは「日本を出国してから90日近く経って、初めて三井住友カードで海外の公共交通機関を使ったら、その時点から付帯している海外旅行傷害保険による保障が受けられる」ことになります。しかし、現実的には日本を出国してからすぐに三井住友カードを使って、海外の公共交通機関(バス、電車、タクシー、飛行機など)に乗ってしまうのも十分に考えられるはずです。

teacher
こうなってしまうと、留学やワーホリの途中で保険期間が切れてしまい、その後は無保険で過ごさないといけなくなりますよ。

理由2.途中から日本の海外旅行傷害保険には入れない

理由2.途中から日本の海外旅行傷害保険には入れない

クレジットカードに付帯している海外旅行傷害保険の保険期間が切れてしまった場合、海外から日本の海外旅行傷害保険に新たに入ることはできません。

この場合、日本に一時帰国し、再度出国してクレジットカードの海外旅行傷害保険を使えるようにすることもできますが、それだけのために一時帰国するのも、費用と時間がもったいないでしょう。

マネーロンダリング防止の観点から制限されている

woman
どうして途中から日本の海外旅行傷害保険には入れないんですか?

この点を読み解くためには「日本以外の国から、日本の金融サービスを利用する」ことがどれだけ難しいかについて知る必要があります。

実は、日本を含め、世界中の金融機関が、自国内に住所を有している住民以外による金融サービスの利用には制限をかけています。これは、犯罪・テロ組織による資金洗浄=マネーロンダリングを防止するためです。

犯罪・テロ組織の中には、違法薬物や武器・人身の売買により、巨額の資金を得ている組織も存在します。しかし、自国内の銀行などの金融機関に、その資金を預けていては、いずれ自国の司法当局により、訴追されるのは目に見えているはずです。そこで、海外の金融商品や不動産を購入したり、企業に投資したりして、国外に資金を移転させる必要が出てきます。

このような、非合法な手段により獲得した資金の移転先として用いられるのを防ぐ観点から、日本を含め、世界中の銀行、保険会社などの金融機関が、自国内に居住している自国民以外によるサービスの利用を厳しく制限しています。

日本では「犯罪収益移転防止法」という法律により、具体的な取り扱いが定められています。

仮に、日本国外に住んでいる人が、日本の損害保険会社が販売する海外旅行傷害保険を自由に契約できたとすると、いずれ犯罪・テロ組織の資金移転に用いられることになるでしょう。日本国内に連絡先がある人を手先として雇い、不正に保険金を請求させるのも、まったく不可能な話ではありません。このような実情があるため、日本国外に滞在している人が、日本の会社が提供する海外旅行傷害保険に加入することはできないのです。

teacher
日本国内に住んでいる人でも、自宅や職場の近くの支店でないと銀行口座が開設できないなど、規制は厳しくなっていますよ。デビットカードを作る予定がある場合は、特に注意してくださいね。ちなみに、ワーホリや留学でも、1年以内に日本に戻ってくるつもりなら、日本の銀行で発行されたデビットカードも使えますので、1枚持っていくのをおすすめします。

おすすめのデビットカードは、こちらの記事で紹介しています!

理由3.クレジットカードの海外旅行傷害保険ではカバーできない病気などがある

理由3.クレジットカードの海外旅行傷害保険ではカバーできない病気などがある

クレジットカードの海外旅行傷害保険では、病気やケガが原因で、現地で診察・治療を受けた場合、一定の範囲内でかかった費用が保険金として給付されます。しかし、中には保険金給付の対象とならない病気などもあることに、注意が必要です。ここでは代表例として

  1. 歯が痛くなった
  2. 子どもができた

の2つを紹介します。

具体例1.歯が痛くなった

クレジットカードに付帯している海外旅行傷害保険の場合、歯科疾病により診察・治療を受けた場合であっても、疾病治療費用として保険金を受け取ることはできません。約款で歯科疾病を免責事項にしているためです。

teacher
もっと簡単に言うと、虫歯や親知らずが痛くなって病院に行っても、費用は全部自腹ということですよ!

具体例2.子どもができた

妊娠、出産、流産など「子どもができた」ことに関連するイベント・トラブルも、同じく、免責事項にしている=保険金を支払わないケースとして指定されています。

ただし、クレジットカードに付帯した海外旅行傷害保険に限らず、ほとんどの海外旅行傷害保険は、妊娠および関連する疾病の治療費用については、保険金を支払わないとしているのが実情です。

理由4.キャッシュレス医療が受けられるとは限らない

理由4.キャッシュレス医療が受けられるとは限らない

クレジットカードに付帯した海外旅行傷害保険は、厳密にいうとクレジットカード会社と提携している損害保険会社(引受保険会社)が商品を設計し、サービスを提供しています。

近年、海外旅行傷害保険を提供している損害保険会社が力を入れているのが、キャッシュレス医療です。簡単に言うと、被保険者(クレジットカードを持っている人)が海外の所定の医療機関で診察・治療を受けた場合、その際の費用は損害保険会社が医療機関に直接支払うため、被保険者の窓口負担はないというサービスを指します。

提携病院は大都市に集中している

日本人がよく行く大都市に、観光目的で短期滞在する場合には、キャッシュレス医療は非常に便利です。しかし、大都市でもない場所に、長期滞在する場合はあまり使い勝手がよくないことが、欠点でもあります。その裏付けになるデータを紹介しましょう。

フランスでキャッシュレス診療が受けられるのは1か所だけ!

キャッシュレス医療が受けられる医療機関として指定が受けられる場所の特徴として

  • 日本人が観光で多く訪れる、もしくは駐在している都市に存在している
  • 日本人医師もしくは日本語が通じる外国人医師がいる
  • 医療通訳をすぐに手配できる

医療機関であることが挙げられます。このため、国や地域によっては、その国の首都など、大都市でないと、日本の損害保険会社が指定するキャッシュレス医療が受けられる施設がないのも事実です。例えば、三井住友海上の場合、フランスでキャッシュレス医療が受けられる施設として指定されているのは「アメリカン・ホスピタル・オブ・パリ」のみです。

もちろん、キャッシュレス医療が受けられる施設にが近くになかったとしても、損害保険会社のコールセンターに連絡し、キャッシュレス医療が受けられるよう、コーディネートしてもらうことは可能でしょう。

ただし、これはあくまで交渉してもらうのが前提なので、受け入れてもらえないことがある点にも注意してください。
teacher
キャッシュレスかどうかにかかわらず、いざというときのために、日本語が通じたり、医療通訳を呼べたりする医療機関があるかどうかは、調べておいたほうがいいです。外務省のホームページに詳しく書いてあるので、一度確認してみてくださいね。

理由5.そもそもビザ(査証)が取れない

理由5.そもそもビザ(査証)が取れない

そして、クレジットカードの海外旅行傷害保険では、留学やワーホリに備えられない最大の理由として挙げられるのが「クレジットカードの海外旅行傷害保険だけでは、そもそもビザ(査証)を取得できず、入国できない場合がある」ことです。

滞在中有効な海外旅行傷害保険があることが条件

詳しくは後述しますが、留学、ワーホリで長期滞在する外国人に対し、滞在期間中有効な医療保険への加入を義務付けている国は多いのも事実です。留学、ワーホリでは各国が定めるビザ(査証)の取得が必要になります。ビザの申請書類に海外旅行保険加入証明書を含め、提出を義務付けることで、加入の有無をチェックしているのです。

外国人の医療費未払いがもたらすもの

woman
そうなんですね。でも、なぜこういうことをしている国があるんですか?

自国に長期滞在する外国人に対し、なぜ海外旅行傷害保険など「自国の医療機関で診察・治療を受けた場合の費用を補償する」保険への加入を義務付けているのか、理由を考えてみましょう。

理由を一言で説明すると「医療費の未払いを防ぐため」です。仮に、自国に滞在していた外国人が病気・ケガをして医療機関で治療・診察を受けたとしましょう。イギリスのように、半年以上滞在する予定であれば、自国の公的医療保険に加入できる国もありますが、ほとんどの国は、留学・ワーキングホリデーなど「期限が終了後、自国を離れる前提である一時的な滞在」の場合、自国の公的医療保険への加入を認めていません。

ちなみに、日本の場合は、外国人に対し、留学・ワーホリ目的で来日した場合であっても、3カ月以上滞在する場合は国民健康保険への加入が義務付けられています。

そのため、外国人は民間の損害保険会社が提供する海外旅行傷害保険などを利用し、ケガや病気で診察・治療を受けた場合の費用を賄うのが一般的です。

しかし、保険期間が切れていたり、そもそもこのような保険に入っていなかったりした場合、生じた費用は全額自分で払うことになります。

もちろん、全額自分で払うことになっても、払えれば全く問題はありません。しかし、あまりに高額で返済が終わらないケースも考えられます。そして、返済が終わらないうちに帰国したり、第三国に出国したりされた場合、最終的にはその費用を医療機関が負担せざるを得ない可能性も出てくるのです。

このような事態が積み重なると、その国の医療行政に大きな影響を及ぼすため、自国に入国する外国人に対し、医療費の負担を賄えるだけの保険への加入を義務付けている国が増えてきました。
teacher
実は、日本でも同じようなことは起きています。訪日外国人観光客の人が、日本で病気やケガをして治療を受けたときの医療費が未払いになっていて、医療機関の経営を圧迫する原因になっているというのは、珍しくないですよ。

クレジットカードの付帯保険ではNGのこともある

もちろん、一概に留学やワーホリといっても、日本を出国してから90日以内に帰国する予定であれば、クレジットカードに付帯した海外旅行傷害保険で保障を受けること自体は可能でしょう。しかし、国によっては、留学やワーホリで入国する外国人に対してビザを発給する場合、クレジットカードに付帯した海外旅行傷害保険では不可、としていることもあります。

teacher
ちなみに、2020年4月現在、日本とワーホリの協定を結んでいる国は、次の22カ国です。国によっても、ワーホリ目的でビザを取得する場合の医療保険については、扱いに差があるので、ビザを取得する前に渡航先の在日大使館・領事館などに確認してください。
アジア韓国、台湾、香港
太平洋オーストラリア、ニュージーランド
ヨーロッパフランス、ドイツ、イギリス、アイルランド、デンマーク、ノルウェー、ポルトガル、ポーランド、スロバキア、オーストリア、ハンガリー、スペイン、アイスランド、チェコ
北米・南米カナダ、アルゼンチン、チリ

ここでは例として、フランスとドイツの場合を見てみましょう。

フランスの場合

在日フランス大使館のホームページによれば、ワーホリを目的としてビザを申請する場合の必要書類として、以下のものを提出するよう義務付けられています。

  • 長期ビザ申請書
  • 証明写真
  • パスポート
  • 申請動機作文
  • 滞在中の計画書および履歴書
  • 日本もしくはフランスの銀行の残高証明書(3,100ユーロ=日本円で約36万円以上の残高が必要)
  • ワーキングホリデービザ申請書
  • 健康診断書
  • 海外旅行保険加入証明書

そして、海外旅行保険の要件は、以下のように定められています。

病気、けが、入院に対応し、航空券に記載される到着日(フランス入国日)から 1 年間有効なもの。クレジットカードに付帯される保険は不可。

出典:ワーキングホリデービザ – La France au Japon

ドイツの場合

在日ドイツ大使館のホームページによれば、ワーホリを目的としてビザを申請する場合の必要書類として、以下のものを提出するよう義務付けられています。

  • Web版長期ビザ申請書
  • 誓約書
  • パスポート用写真
  • 日本国パスポート(ビザの有効期限が終了してもなお3カ月以上有効期限があるもの)およびそのコピー
  • 往復航空券予約の証明書
  • 旅行者医療保険および旅行賠償責任保険の加入証明書
  • 生活費用支払い能力の証明(通帳、ネットバンキングの利用履歴、残高は最低2,000ユーロ必要)

そして、旅行者医療保険が満たすべき条件として、次のように記載されています。

ドイツでの全滞在期間有効な旅行者用医療保険(歯科の治療にも適用され、女性の場合は妊娠時にも適用される保険に加入していることを証明するものを提示してください。)および旅行賠償責任保険

出典:ワーキングホリデー・ビザ – ドイツ外務省