デビットカードは「支払いを行ったその場で、利用額を全額、支払元である銀行口座から引き落とす」カードです。やり取りにもある通り、支払い元である銀行口座の残高が不足していた場合は使えないのですが、それ以外にも注意すべき点が多々あります。
そこで今回の記事では、デビットカードの支払元の銀行口座残高が不足する場合に起こりうる問題に関連して
- 基本的に残高以上は使えない
- 現金と併用して支払うことはできない
- 遅延損害金が請求されることもある
- 強制解約になる恐れもある
の4つのポイントを解説しましょう。
1.基本的には残高以上は使えない
デビットカードは原則として「銀行口座の残高を超えた支払いができない」決済用のカードです。これを理解するためには、まず、デビットカードによる支払いの一連の流れを見てみましょう。
- 国際ブランドの加盟店=使えるお店で買い物をし、デビットカードで支払いをする
- 即座にカード会社に連絡がいき、デビットカードの支払い元となっている銀行口座から引き落としが実行される
こちらの図のほうがわかりやすいかもしれませんね!
出典:引き落としの仕組み|Visaデビット|PayPay銀行
決済時にエラーが出る
ここで、支払いを行った際の銀行口座の残高が、利用額を下回っていた場合は、銀行口座からの引き落としが実行できないことになります。その場合、加盟店にも決済できなかった旨の通知がエラーメッセージとして届くのです。
入金後に使えるようになる
もちろん、デビットカードの支払元となっている銀行口座に入金すれば、また使えるようになります。
不足額を立て替えてくれることもある
デビットカードは原則として「支払いに使ったその場で最終的な利用額が確定し、引き落としが実行される」カードです。しかし、一部「支払いを行った時点からかなり後に最終的な利用額が確定し、差額の調整を行う必要がある」取引の支払いにも使われます。
- ガソリンスタンド
- ホテル、レンタカーのデポジット
- 海外利用時の為替差益・為替差損
での利用は、これに当てはまると考えましょう。
また、デビットカードでの支払いを行ったときに銀行のシステムが休止していた場合、システム休止中は銀行口座の残高が足りていたものの、システム再開後に足りなくなってしまうことも十分に起こりえます。この場合も、差額の調整が必要になるのです。
速やかに入金が必要
これらの差額の調整を行う必要がある取引の支払手段としてデビットカードを使った場合、差額を一時的に銀行が立て替えることがあります。その場合、後日差額の支払いに関する通知が届くので、速やかに対応しましょう。
第10条(銀行口座の残高不足等によるデビット取引の決済不能等)
1.カードシステムの休止時間中に到達した利用情報の売買取引等債務額が、カードシステム稼働後に保留手続きを行う際の銀行口座の残高を上回っていた場合、当行は、当該利用情報に基づく保留手続きを行わず、売買代金に相当する額の全額を加盟店等に支払ったうえでこの旨を会員に連絡し、会員に対し、当該支払代金の弁済を請求するものとし、会員は当該支払代金の全額を速やかに弁済しなければならないものとします。
2.加盟店等の売上処理手続き等の理由から、到達した売上確定情報に基づく売買取引等債務相当額が利用情報に基づく保留額を上回っていた場合、当行は、すでに保留額分として会員の銀行口座から引き落とした金額とは別に、当該売買取引等債務相当額と当該保留額との差額を会員の銀行口座から引き落とします。この際に、会員の銀行口座の残高が、当該差額金を下回っていた場合、当行は、売上確定情報に基づく売買取引等債務相当額の全額を加盟店等に支払ったうえで(保留 額はその支払の一部に充てるものとする)この旨を会員に連絡し、会員に対し、当該差額金の全額の弁済を請求するものとし、会員は当該差額金の全額を速やかに弁済しなければならないものとします。
出典:楽天銀行デビットカード規定 | ご利用規定 | 楽天銀行
なお、支払いの方法ですが
- 自分の銀行口座に不足額を入金しておけば引き落としの処理をしてくれる
- 指定された銀行口座に振り込む
など、銀行によって多少違いがあります。通知が来たら、どの方法で支払うのかを確認しておきましょう。
2.現金と併用して払うことはできない
デビットカードと現金を併用して支払うことは
というのが答えです。詳しく解説しましょう。
システム上銀行口座の残高は調べられない
大前提として覚えておいてほしいことがあります。国際ブランドの加盟店=使えるお店であっても、デビットカードの支払元として使っている銀行口座の残高は調べられません。
一部を現金で支払うこと自体は可能
もし、銀行口座にいくら入っているかを把握していれば、その残高を下回る金額でデビットカードによる支払いを行い、差額を現金で支払うことも、理論上は可能です。しかし、この方法は店舗側に処理上の負担をかけてしまうことになるため、断られる場合も多々あります。
3.遅延損害金が請求されることもある
差額の調整が必要な取引の支払元としてデビットカードを使った場合、一度銀行が不足額を立て替えることになります。このような取引があった場合は、注意が必要です。
不足額の立替分を支払っていない場合は注意
不足額の立替分の支払い通知が来た時点ですぐに支払っていれば、何も問題ありません。
遅延損害金に関する取り決めは、デビットカードの利用規約の中に必ず書いてあるので、一読するのをおすすめします。
第12条(遅延損害金)
会員は、当行に対する債務を履行しなかった場合には、支払うべき金額に対し年14.6%の損害金を支払うものとします。この場合の計算方法は年365日の日割計算とします。
出典:楽天銀行デビットカード規定 | ご利用規定 | 楽天銀行
以下の条件で不足分が発生した場合の遅延損害金を計算してみましょう。
- 不足額の立替分は10,000円だった
- 不足額の納期限は2020年1月31日だった
- 実際に納めたのは2020年2月15日だった
納期限の翌日=2020年2月1日から延滞金が発生するので、遅延損害金の計算式は以下のようになります。
個人信用情報機関には登録されない
デビットカードでの支払いについて、差額調整が行われ、不足分の追加支払いを求められたにも関わらず、支払っていなかった場合でも、個人信用情報機関には異動情報として登録されません。デビットカードはあくまで「個人が保有する銀行口座の残高の範囲内で支払いを行うカード」であるため、お金の貸し借りに関する契約=信用契約は原則として結ばないためです。
銀行内部では情報を共有されるので注意
デビットカードでの支払いについて、不足分の延滞・滞納があったとしても、個人信用情報機関への異動情報として登録される=ブラックリストに載ることはありません。
詳しくはあとで解説しますが
- デビットカードを強制解約させられる
- 銀行の銀行口座自体を解約させられる
- 同じ銀行との取引を一切断られる
など、重大なトラブルに発展する恐れもあるので、甘く見ないほうが身のためです。
審査が行われるタイプのカードでは登録される恐れも
また、デビットカードの中には「支払い時点で利用額が確定し、変動することがない取引であっても、銀行口座の残高が不足している場合は、一定の条件内で立て替え、後日請求する」システムを取り入れているものがあります。
このようなカードは、実質的にはお金の貸し借りの契約=信用契約に基づくものであるとの見地から、申し込み時の審査や途上与信が行われます。
4.強制解約になる恐れもある
デビットカードはクレジットカードと違って、申込時・発行後のいずれも審査は行われません。そのため、支払能力が足りないことが原因で強制解約になることは、一部の例外を除きないのです。
ただし、ガソリンスタンド、海外での利用のように、商品・サービスの提供後に最終的な利用額が確定するタイプの取引をしていた場合、不足額を銀行側が一度立て替え、後日会員に対し不足額の返還を求めることはあります。
利用規約の確認が必要
問題になるのは
- 不足額の返還=立て替えた分を払ってほしいという通知が来た
- 支払う方法についても指定があった
にもかかわらず、放置していた場合です。
これは、デビットカードの強制解約の原因にもなるので、注意しましょう。デビットカードの利用規約にも、必ず書いてあることなので、事前に確認するようにしてください。
第10条(銀行口座の残高不足等によるデビット取引の決済不能等)
1.カードシステムの休止時間中に到達した利用情報の売買取引等債務額が、カードシステム稼働後に保留手続きを行う際の銀行口座の残高を上回っていた場合、当行は、当該利用情報に基づく保留手続きを行わず、売買代金に相当する額の全額を加盟店等に支払ったうえでこの旨を会員に連絡し、会員に対し、当該支払代金の弁済を請求するものとし、会員は当該支払代金の全額を速やかに弁済しなければならないものとします。
2.加盟店等の売上処理手続き等の理由から、到達した売上確定情報に基づく売買取引等債務相当額が利用情報に基づく保留額を上回っていた場合、当行は、すでに保留額分として会員の銀行口座から引き落とした金額とは別に、当該売買取引等債務相当額と当該保留額との差額を会員の銀行口座から引き落とします。この際に、会員の銀行口座の残高が、当該差額金を下回っていた場合、当行は、売上確定情報に基づく売買取引等債務相当額の全額を加盟店等に支払ったうえで(保留 額はその支払の一部に充てるものとする)この旨を会員に連絡し、会員に対し、当該差額金の全額の弁済を請求するものとし、会員は当該差額金の全額を速やかに弁済しなければならないものとします。
出典:楽天銀行デビットカード規定 | ご利用規定 | 楽天銀行
第11条(カードの利用・貸与の停止、会員資格の取消しによる退会)
1.当行は、第10条の規定により会員に対する立替金が発生した場合、会員が第10条に定める立替金の弁済を怠る等本規定に違反した場合、違反するおそれがある場合、その他当行が必要と判断した場合には、次の各号の全部、または一部の措置をとることができます。これに伴い、会員に損害等が生じた場合であっても、当行は一切責任を負わないものとします。
(1)カード利用の停止。
(2)カード貸与の停止およびカードの返却請求。
(3)加盟店等に対する当該カードの無効通知。
(4)銀行口座からの出金の停止。
(5)前4号各号の措置後のカードシステムへの再入会の申込の拒否。
出典:楽天銀行デビットカード規定 | ご利用規定 | 楽天銀行
こちらの楽天銀行デビットカードの規約にある通り「何らの通知、催告を要せずして=事前に一切知らせがない状態で」解約されてしまうこともあるので、注意してください。
第11条(カードの利用・貸与の停止、会員資格の取消しによる退会)
(中略)
3.会員が次の各号のいずれかに該当する場合、その他当行が会員として不適当と認めた場合には、当行は、何らの通知、催告を要せずして、会員資格を取り消すことができ、かつ、銀行口座を解約することができるものとします。この場合、会員は、当行の指示に従って直ちにカードを当行へ返却、またはカードに切り込みを入れて破棄するものとします。これに伴い、会員に損害等が生じた場合であっても、当行は一切責任を負わないものとします。
(1)当行への届出事項に関して届出を怠った場合。
(2)当行への届出事項に関して虚偽の申告をした場合。
(3)本規定の各条項のいずれかに違反した場合。
(4)第10条に定める立替払代金、その他の当行に対する債務の弁済を怠った場合。
(5)カードの決済状況またはカードの管理が適当でないと当行が判断した場合。
出典:楽天銀行デビットカード規定 | ご利用規定 | 楽天銀行
使っていないデビットカードの扱いには注意
強制解約に関しては、もう1つ注意してほしいことがあります。使っていないデビットカードの扱いです。
デビットカードの年会費は
- 永年無料
- 年間の利用回数、金額などの条件を満たせば無料
- 条件にかかわらず一定額がかかる
など、銀行によって扱いが様々です。年会費がかかる場合、支払元に指定されている銀行口座からの引き落としで支払いますが、残高がないと実行できません。
特に、普段の生活でほとんど使っていない銀行口座があり、その口座を支払元にしたデビットカードがある場合は、注意が必要です。自分が気づかないところで年会費が支払えず、結果として銀行口座の強制解約にまで至ってしまったら、目も当てられません。
- 使っていない銀行口座の状況
- その銀行口座を支払元にしたデビットカードの有無
は定期的にチェックするようにしましょう。
不要なデビットカードを残高300円で放置していたので本日強制解約されます
— サーバルの鼻にはつむじがあります (@plus7) January 31, 2015
楽天カードではないが、楽天銀行のVISAデビットカードの年会費が払えなくて強制解約になったことはあるので、楽天カードは収入以前の問題で落とされている可能性はある。その割に楽天銀行のJCBデビットカードが作れた理由は分からないが。
— みながわ あおい (@Minagawa_Aoi) October 7, 2019
いつもと違うことがあったら要注意
デビットカードは「支払いに使った時点で、最終的な利用額が決定し、銀行口座からの引き落としが実行される」カードです。そのため、クレジットカードに比べると、トラブルは起こりにくいといわれています。しかし、一部、後日の差額調整が必要な場合もあるので、請求があったらすぐに支払えるよう、注意を払いましょう。